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【南無高、娑婆威罵留:白鴉】
ネオサイタマ、ミリオン・ナムコ・ハイスクール。ここは地域唯一の教育機関であるにも関わらず、その出で立ちは神聖な学び舎とは程遠い。校門のカンバンには赤いスプレーで『南無高』と上書きされ、校舎のいたるところに『夜露死苦』『魅裏怨』『回転寿司』などの落書きがされている。そして校庭では。
「ザッケンナコラー!」
「スッゾ!」
「トカチツクスゾッコラー!」
【ゲームセンター『万南無』:シホ】
ピーコロロロロ。キャバーン。ザムザムザム。パワリオワー! 騒がしいゲームセンター店内に二人の少女が足を踏み入れた。どちらもパーカーのフード、あるいはネコミミニット帽を目深に被り、その表情は窺い知れない。やがて二人はあるゲーム筐体の前で立ち止まった。看板には『タイコのタツジン』。
2人は勢いよく上着を脱ぎ捨てた。ナムサン! 私服少女
【孤島、夜の森:アカネ】
「イヤーッ!」
(((ああ、私はきっと、死ぬんだ)))アカネは胸に突き立ったナイフを見た。地に伏し腕から血を流すエレナが、涙で汚れた顔を歪めて叫んでいる。あの太陽めいて陽気なクラスメイトが悲痛に泣き叫ぶ姿。アカネにはフィルター越しの映像めいて現実感が乏しかった。これが今際の際のソーマト・リコール現象だろうか。メイドは投擲を終えた姿勢で停止している。そのエプロンは返り血
【レッスンルーム:カオリ】
「…………」
オペラの台本をめくるフリをしつつ、カオリは冊子の奥からレッスンルームの一角を覗き見た。休憩時間。ハードな稽古の合間に疲れを癒すべく、アイドル達は飲食物を持ち寄って差し出し合っていた。だが今は、壁を背にしてシホが2人のアイドルに挟まれていた。マツリからはマシュマロ、コトハからはシジミ・スープを供されてい
【キャンプ・フライヤー、野外ステージ:シホ】
モニター・オブ・アイドル(アイドルの観測装置)は、たまに映し出される、ミリオンライブ世界のありふれた日常風景、番組宣伝、監視カメラなどの次元を超えた幻視映像です。劇場のアイドル達の活動は千変万化。何が映し出されているか、気が向いたときに見てみましょう。
太陽はとうに山陰に落ち、花火の名残も儚くステージは深い闇に沈んでいた。キタザワ・シホはニンジャ視力で暗い路を見定めて渡り、センターの端に辿り
【ニャンニャトリガー・カツブシ】
日本首都の中心部たるネコサイタマ公園には、野放図なライブビューイングと現地主義がはびこり、花壇や噴水、ベンチ等には所狭しとライブ看板が配置され、極彩蛍光色で地方公演を宣伝する。公園を根城とする無数の猫達は、空を横切るサンマツェッペリンを見上げては、ガシャの広告に夢を見ていた。
しかし中心から外れたここ、ナムコ地区側では、派手な色彩はやや抑えられている。この区画は園でも有数のお花見スポットであ
【ミリオンスター・サンダーボルト】#2
ツキジの港から伸びる長い街道、エンガワストリート。今宵ハカバめいて静まり返る通りをしめやかに渡る十数台のヤクザベンツの行列。どれも欠けたリンゴの紋章を宿し、中央を走行する大型トラックを守るように囲い込む。トラックの上には二人のアイドルが佇んでいた。「それじゃあ、おさらいだ」
グラップラーがストレッチしながら言った。「このトラックを死守してやることはない。精々向こうの戦力の半分を潰してやる
【ミリオンスター・サンダーボルト】#1
草木も眠るウシミツ・アワー。重金属酸性雨降りしきるツキジ・ディストリクトの港では胡乱な影が蠢く。黒いバラクラ帽を被った男達が密やかに停泊した漁船から木箱を下ろす。彼らは木箱の数を確認すると船に合図を送り、港から離れさせた。これが非合法な取引の現場であることは明らかである。
男が中身を確認した木箱の蓋を閉める。その合間に覗いたのは、満載された赤い球体。ナムサン! 暗黒非合法薬物バトルキャンディ
【クロウ・アンド・キャット】
「ガンドー=サンァアアアア!」「きゃっ!」「アアア!」「ちょっと! 志保がまた発作起こしたわよ!」「なんだかしほ、しずかになったりうるさくなったり、死にかけのセミみたいだぞ」「環、本当のこと言わないの!ほらプロデューサー呼んできて!百合子、いつもの鎖!」「なんでぇええええ」「うるさい!」
「うんうん、分かるよ志保。物語で好きな人物が死んじゃったりするとすごいショックだよね。ガンドー=サンはすごく
アイドル・ホラー・ホテル
ウシミツ・アワーを告げる鐘が、遠くから深い森に響く。痩せた月が屍めいた廃墟を照らす。ここはネオサイタマ郊外に存在するカネモチ・ホテル。かつては政財界の要人が足繁く通い、栄華の限りを尽くした絢爛豪華な建物も、ある事件を機に廃屋となり、今や見る影もない。取り壊されることもなく人々から忘れ去られたのだ。
訪れる者は誰一人としていないはずであった。それがさほど歳も行かない少女であるなら、尚更だ。だがし
アイドル・ポリス26 #2
ネオサイタマ警視庁ビル。「平和」「秩序を愛する」「叩いて棒で練る」などのショドーが飾られた優雅な部屋。その最上階は元が誰のものだったかは誰も覚えていない。今ではハイデッカー長官の専用室となっている。物憂げな顔で壁一面の窓ガラスから世界を見下ろす彼女の名は、シズカ・モガミ。
彼女の黒いマッポコートの下は、紺色のアイドル装束。シズカもまたアイドルであった。彼女はネオサイタマで最も高いこの部
アイドル・ポリス26 #1
ファンファンファンファン……ウシミツ・アワーのネオサイタマ市街を、一台のパトカーがけたたましく駆け抜けていく。前方の強盗と思しきボロ車を追っているのだろうか。パトカーの軌道は右に左に蛇行し、危うく接触しかけた乗用車が道を逸れ、街路の謎めいたオブジェにぶつかって爆発炎上した。
賑やかな一般道に比べ、その上のハイウェイは実際静かだ。異常なほどに。……音もなく黒い車両が道を滑り来る。それはハ
【トワイライト・オブ・ザ・シークレット・リリー・ガーデン】 #2
庭園に一歩踏み込んだ瞬間、少女達はそこが勝手知ったる劇場の一部であるという先入観を捨てざるを得なかった。生垣は高く伸び上がり、ツキジ・ダンジョンめいた巨大迷路となっている。出現するイマジナリー・モンスターも徐々に凶悪さを増し、恐ろしい外見のものが増えてきた。「イヤーッ!」
シホのトビゲリが大型黒犬の鼻面に突き刺さり雲散霧消! 「ハァーッ…」片手を着いて着地したシホの息が僅かに上がってい
【トワイライト・オブ・ザ・シークレット・リリー・ガーデン】 #1
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
静謐なアトモスフィアを湛えるドージョーに、2つのシャウトが響く。シズカが放った突きをシホが絡め捕り膝を押さえて引き倒しかける。シズカは流れに逆らわず、むしろ勢いをつけて回転し危険な肘打ちを相手の側頭部に仕掛けた! 「イヤーッ!」シホはこれをガード!
更にシズカの無防備背中に突きを打ち込む! 「イヤーッ!」「ンアーッ!」吹き飛び倒れたシズカを追い、シホのストン
【アイドル・アンド・ハリセン・ライブ】
どんよりと澱んだ曇り空は、ここネオサイタマにおいてはもはや常識と化した風景である。むしろ、人体に悪影響を及ぼす重金属酸性雨が止んでいる今日のような日こそ珍しいだろう。それ以外は普段通り、街頭スクリーンの中では流行のアイドル達が最新曲を披露し、スパークドリンク売りが通行人に声をかけている。
天を衝く一等地高級ビル群の中に一際高く聳える建物あり。広大な敷地に巨大ビルだけではなく、レッスンスタジオ