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彼らは何に対して集中すればいいのか

昨日は息子の所属するサッカーチームの試合。

午前に1試合、その後午後に1試合の2試合が
開催される予定であるが、試合と試合の間が3時間。

普通ならその間は家に帰ってお任せしておくのだが、
昨日は雨が降ったりやんだりの天気で
風も強かったので、
待ち時間の間に寒さをしのげる車があるほうがいい。

息子は5月からこのチームに移籍したので
まだ全員と親しく話すような感じでもないのに
誰かの車に乗せてもらうというのもしにくいだろう。

そう思うと、結局この3時間も含めて
ずっと試合会場にいることになってしまった。

ずっといなくてはならないことは
あまり想定していなかったので、
本を持ってきているわけでもなければ
時間をつぶす術がない。

歩いて行ける場所にコンビニがあったので
そこで本を買いに行ってみると
置かれていたのはマガジン誌とアダルト雑誌のみ。

あまり興味はないが他のチームの試合を
見るしか暇をつぶす方法はないらしい。

昨日出場していた他のチームは息子のチームと
実力的には拮抗しているチームばかり。

私はサッカーのことはよくわからないが、
それぞれのチームには色のようなものがあり、
得意とするプレーのスタイルが異なることは
何となく私でもわかる。

そんな違いが一体なになのか。
そして、指導者の声のかけ方はどう違うのか。

そんなことを意識しながら試合を
観戦していると、
とあるチームのコーチの方がしきりに
「おい、集中していこ」
と声に出していることに気が付いた。

この「集中していこ」という言葉は
スポーツの世界ではよく使われる言葉である。

恐らくこの言葉の前には「大事な局面だから」が
隠れているのであろう。

だが、この言葉を今回耳にしたとき
私の中で一つの疑問が浮かんできた。

「この言葉を聞いて選手たちは集中力を
コントロールすることができるのだろうか」

試合で相手と競り合っている時点で
否応なく集中している状況のように私の目には見えるが、
この状態よりもさらに一段階高い集中レベルが
あるのだろうか。

そして、それが仮にあったとして
彼らはそこに自由自在にギアを上げることが
できるのだろうか。

こうして文字にしてみると
「そんなに簡単にできないでしょ」
と思われる方が多いのではないだろうか。

しかし、指導者の方が「集中していこ」と言う裏には
1段階上の集中があり、そこにギアを上げられる状況か
もしくは現状試合に全然集中できていない状態かの
2つの理由があるはずなのだ。

少なくとも私の目には彼らが試合に
集中していないようには全く見えないので
恐らく1段階上があるのであろうが、
指導者の方が「集中していこ」を言ったところで
何か変わったようにも見えない。

ではなぜ彼らは選手に「集中していこ」と
いうのであろうか。

そんなことを思いながら試合を見続けていることに
一つの仮説が浮かんできた。

それは、試合に対して集中するのではなく
自分の指導に対して集中しろということでは
ないだろうか。

サッカーの試合では指導者の方は
驚くほど選手にいろんな指示やダメ出しをする。

どこに行け、誰をマークしろ、横に展開しろ、
そこはキャッチしろ、助けてやれ

試合では選手は自分で考えてピッチの中を動き回るが、
その考え方の指導は練習では決してできない。

なので、試合を通してその修正をするのであろうが
正直私には指導しすぎのようにも見えてしまう。

決して指導することは悪いことではないが
常に動き続ける試合の中でなされる指示では
なぜそうするのかを理解せずに流される指示も
少なくない。

それを避けるため、試合後には必ず
ミーティングをして子供たちに説明しているようであるが、
恐らくその中でも納得できていない子供も
多いであろう。

それ故にコーチからすれば同じことを
何度も言わされるケースが多くなる。

そこで出てくる言葉が「集中していこ」である。

試合に集中するのはもちろんのことであるが
この言葉は自分の指示に対して
集中しろという意味でもあるのだ。

同じようにサッカーをしていても
試合で活き活きと動ける子供と
そうでない子供がいる。

後者の子供が思い切って動けない理由は
私の目には
指導されることを恐れているように見えるのだ。

彼ら自身も自信がないながら自ら考えて
ベストなチョイスをしているはずだが、
それを否定されて言われた通りに行動するのが
とても苦痛なのであろう。

数年前に副業がとても盛り上がった時期に
「素直に指導を聞いて実行できる人だけが
成果を出すことができる」という趣旨の言葉が
当時のTwitter上でも沢山踊っていた。

これは自己流の考えを捨てて、
指導されるとおりに動くことで着実に
成果を出すことができるということを
説くための言葉だと私は解釈していたが、
素直にやるだけで当人が何も考えていなければ
一時的には成果は出たとしても
継続的に成果を出し続けることは難しいであろう。

なぜなら、状況は常に変わり続けるからである。

その変化に対して言われたとおりのことだけを
していては決してついていけなくなる時が
来てしまう。

やはり、素直にしたがいつつも
自らがどうすべきだと考えていたのか、
指示されたことに納得できたのかを
考えることはとても重要だと思うのだ。

そういう意味ではピッチで活き活きと動けない子供には
ちゃんと指示の意味を後で教えてやる機会を作ったり、
指示の仕方を変えるなどの工夫が必要なのだろう。

うちの息子は比較的飄々としながらも
納得できないことには苛立ちを覚えるタイプなので
コーチがしていた指導内容を理解できていないならば
私がその咀嚼を手伝ってやろうと思う。

偶然見た試合で聞いた「集中していこ」という言葉から
まさかこんなことを思い出すとは思わなかったが、
子供のサッカーを見ていると会社の縮図のようだと
思うことがしばしばある。

息子がするサッカーからは
これからも色んな学びを得られそうであるし、
noteの記事ネタには事欠かなさそうで
密かに「いっしっし」と笑っているのは
ここだけの話である。

ちなみに「集中していこ」と発したコーチは
「ビルドアップしていこ」という言葉を
何度も発していたが、
私にはこの”ビルドアップ”という意味が全く
わからなかった。

Build-upならば作り上げる、構築するのような
意味合いで使われる言葉であるが、
一体サッカーとどうつながるのだろうか。

果たしてこのインストラクションを
チルドレンはちゃんと
アンダスタンドしているのか
クエスチョンではある。
トゥギャザーしようぜ。

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