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秋とタルトと蛾

昨日から家族で私の実家に帰省している。

先日記事に書いたが私の実家は
2週間ほど前に引っ越しをしており、
新居に家族でお邪魔する形となった。

息子のサッカーが終わってから出発し
昼過ぎな到着。

子供たちは新しい部屋にテンションアップし
はしゃぎ回っていた。

遅めのお昼を食べ、
近所を散歩したりしてゆっくりしようと
私は思っていてのだが、
妻が街に出たいと言い出した。

私の実家は京都。
時期は11月の中旬。

この二つが重なれば何が起こるか
22年間京都に住んだことのある経験上、
痛いほど身に染みている。

観光客が尋常ではないのだ。

正直私は紅葉を見るなら
近所の公園などに植わっているもみじの木を
一本眺めるだけで十分だと思っている。

もちろん緑や黄色とのハーモニーが
美しいと感じることは否定しないが、
人混みの中に分入ってまで
それをみたいと思わない。

だが妻からしてみれば久々の京都で
せっかく紅葉しているならば
見にいきたいと思うものなのだろう。

私にNoと言う権利はない。

昼ごはんを食べたあと、
街に繰り出すことになった。

街の少しはずれに車を停め
そこから電車に乗って街を散策する。

ガッチリ紅葉散策にはならなかったものの
街の雰囲気を楽しむだけでも
妻は満足だろうと思い、
出来るだけ人の少ない場所を選んで
歩いていると妻が行きたいところがあると言う。

聞いてみると有名なタルト屋らしい。
以前から京都に行くたびにこの店に行きたいと
ずっと思っていたらしいが
なかなか機会がなく、今に至っていたらしい。

この店は私も名前を聞いたことがあるぐらいなので
相当な有名店なのだろう。

幸い場所は私たちがいた場所から遠くない。

そこでその店に皆で向かうことにした。
お洒落な外観の店舗に入ると中には
色とりどりのタルトが並んでいた。

歓声を上げる妻。

正直なところ私はその値段に驚いていたのだが
そんなこと言えるはずもない。

遅い時間だったのであまり多くの選択肢はないものの
念願だったタルトを手にして満足そうな妻。

会計をするというタイミングで
私達は先に店の外に出ていたのだが、
その時にあることが起こった。

店の中に蛾が入ってきたのである。

秋も深まってきてスカシバガの仲間がどこからか
迷い込んできたのだろう。

こんなところにも秋があるなと眺めていると
店先に立っていた店員さんが
非常に困った顔をしていることに気がついた。

衛生管理上、この蛾を外に出すのが
彼女のミッションになったのであろう。

だが、どうしたらいいのかわからないらしい。

私は昔から疑問なのだが
どういうわけか蛾を嫌う人が多い。

特に女性は蝶のマークのアクセサリーや
衣服を身につけている人がいながら、
こと蛾に遭遇すると驚くほど避けてしまう。

生物的には蝶も蛾もほとんど差はなく
フォルムの違いだけなのだが
どうにも受け入れられないらしい。

この店員さんもまさにそうなのであろう。

どこからか持ってきた虫網を片手に
固まっていた。

今回遭遇したスカシバガは一見大型の蜂に見えるので
怖がる人が多いが、
全く毒も何も持たない穏やかな蛾である。

そのまま手で掴んで逃してやろうかと動きかけた時、
ふと私の頭の中にある考えがよぎった。
「これでは彼女の成長にならないのではないか」

別に私は彼女の教育担当ではないので
そんなことを気にする必要はないのだが、
この店に働き続ける限り
このようなシチュエーションには何度となく
出会うことがあるだろう。

幸今回出てきたのは毒のない昆虫だったが、
時には毒のあるものが乱入するケースも
出てくるかもしれない。

ここで偶然居合わせた虫好きの私が
それを取り除いてしまうと、
次に彼女が毒虫に出会った時に
適正な対処ができずに問題になってしまうかもしれない。

そう思うと今私が助けるのは
よくないことのように思えてきたのだ。

ちょうどそのタイミングで妻が会計を終わらせて
出てきたので
私はそのまま彼女らに任せることにした。

念願のタルトを持ってホクホクな妻と
歩き疲れた子供達。
そして偶然街中で出会った蛾に
いろんなことを考えさせられた私。

同じ行動をしていても人はこうも感じることも
感じ方も違うのだと改めて感じさせられる
1日であった。

ちなみに今日は昼過ぎまで京都にいる予定だが
昨日の出来事がキッカケで
秋の昆虫を探しに行きたい衝動でウズウズしてきる。

家族には却下されるのは言うまでもない。


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