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ケーキを描くためにケーキを焼く?

私の担当業務は説明しにくいけれど、少なくとも組織内には家電のUIデザインをやっている人がいる。ケーキのイラスト制作やアイコン制作をする案件があったらしく、「ケーキを描くならケーキを焼くところから?」が話題になった。実際のところ著作権に当たる可能性は低そうだけど、ケーキを作るのは楽しいので余裕があれば作ってみるのがよかろう。

ケーキのイラストを描くにはケーキ作りからやる?

業としてケーキのイラストやアイコンを作る必要に駆られると、「まずは自分でケーキを作るところから始めねば」なんて話になる。

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理想のカレーを作るために「まずは土を耕すところから...」というTOKIO的なノリだろうか。

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そうではなく、買ってきたケーキの写真を撮ってトレースすると、ケーキを作った人の著作権等を侵害するかもしれないという話であった。

実際のところどうなんだろうか、検索して調べた範囲で書き残す。

トレパクは著作権侵害になりうる

業としてイラストを描く際に、別のイラストからポーズだけをトレースする例、いわゆる「トレパク」について弁護士さんが以下の記事を書いておられた。

イラストではなくケーキ写真であっても該当するのか。1つ目の論点として、買ってきたケーキの写真は著作権上保護される著作物なのか?をまず判断する。

今回は、トレパクの元になったコンテンツが著作権法上保護される著作物(著作権法2条1 項1号)に該当することを前提に、著作権等の侵害となるかどうかという観点で、話を進め ます。

著作物に該当するとなれば、2つ目の論点としてトレースが元コンテンツの本質的特徴を備えているか?という判断が続く。記事を読み進めると、何を持って「本質的特徴」にするのかは哲学問題のようでもあり、けっこう主観的な余地がありそうに感じた。

著作物をトレパクして利用する行為が著作権侵害に該当するかどうかを判断する場合、トレパクコンテンツが、元のコンテンツの総合的な表現全体における表現上の本質的特徴(創作的要素)を備えているかどうか、という観点が一番問題になります。

そして3つ目の論点として、著作権侵害を構成する利用行為に該当するのか?が続く。私用であればトレパクしても問題ないが、記事の例であるイラストを描いて1500円を貰う場合も、業としてケーキのイラストを描く場合も、「みんなのフォトギャラリー」にUPする場合も該当しそうだ。

著作権侵害を構成する利用行為には、(1)SNSにアップする(公衆送信権等。著作 権法23条1項)、(2)有料無料を問わず公衆に譲渡する(譲渡権。著作権法26条の2第1項 )などの行為が含まれます。

理論上、料理の見た目には著作物がある

まずは1つ目の論点である、「買ってきたケーキの写真は著作権上保護される著作物なのか?」について。イラストではなくグルメ関連について、弁護士さんが書かれた記事を探した。この先生、めっちゃ料理するやん。

一言で「著作権」と言っても、ケーキ自体の著作権もあれば、写真の著作権もあり、画像検索してトレパクする場合は両方を踏むことになる。買ってきたケーキを自分で撮る場合は、前者だけを考えれば良さそうである。

料理写真についても「被写体である料理に関する著作権」と「写真撮影者の著作権」の問題があることになります。

以下のバースデーケーキは私に所有権があるケーキを、私が写真に撮った。記事を読み進めると、所有権を手に入れても無形の著作権までは手に入らないことも分かった。

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ただ、著作権で保護される範囲はレシピでなく、盛りつけの見た目だけの問題のようだ。

料理写真における著作権ですから、あくまで「盛りつけという見た目」しか問題になりません。

そして、盛りつけに著作権があると判断することは「相当ハードルが高い」と言われている。

ただ、この盛りつけが著作物ということになると、単にこの盛りつけの写真の投稿が権利侵害になるにとどまらず、今後50年間、著作権が切れるまで、この盛りつけは誰も使えないということになります。
著作権はそういう強力な権利ですので、料理の盛りつけに著作物性が認められるためには、実際には相当高いハードルをクリアする必要があるのではないかと思います。

別の方の記事でも、「判断が難し」いことや、「現実的には認められる範囲が狭いもの」になると言われている。

その盛り付けが、料理の作成者の「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえ、著作権法2条1項1号に該当する場合には、著作権が認められる可能性は理論上あります。ただ、現実的に、どのような盛り付けであれば著作権が認められるかの判断は難しく、現実的に認められる範囲は極めて狭いものと考えられます。

お皿の盛りつけでなく、ケーキだったら再現性高いから認められやすいのかもしれない。そうだとしても、著作権を認める所以となる「創作性」をトレパクで再現しない限り、2つ目の論点「元コンテンツの本質的特徴」には当たらないように思える。どこにでもあるステレオタイプなケーキを描く限りは著作権侵害にならないのだろうか。

↑このパラグラフは、料理・法律ともに素人な私の憶測に過ぎないので、ちゃんとした答えは弁護士に相談するのが良いのだろう。

完全潔白を目指すならケーキからつくるのが無難

上の内容を踏まえて、責任の範囲が自分の範疇におさまるnoteアカウントであれば「この画像の著作権は私自身に帰属します」に臆することなくチェック入れて、買ってきたケーキの写真をアップする。

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でも、会社の信頼を背負い「本当に著作権は大丈夫なんだろうな?」を厳重にチェックする場合、トレパクは避けた方が無難なんだろうなと考えている。著作権もあれば、世間の通念としてという視点もある。

完全潔白を目指す場合は、ケーキから自作するのがカタい。レシピに著作権がないようだから、ホットクックで「ブラウニー」を作って写真を撮る際に、シャープに許可を求める必要は無い。先週発売の新モデルは、生クリームも泡立てられるようになり、ケーキの幅も広がりそうだ。

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お店で撮る場合は撮影許可も忘れずに

今回の内容はテイクアウトの想定で著作権について調べてみた。お店で撮る場合であれば、「店内のルールとして撮影禁止」というケースもある。

著作権的には問題がなかったとしても、お店の側が店内のルールとして撮影禁止を掲げている場合は、そのルールに従いましょう。

カメラマンが立つ場所の撮影許可については、ひとつ前のnoteに書いた内容とも重なる。

下の写真は水道筋「カフェあんご」自慢の水出しコーヒーを撮った写真である。「水道筋グラム」の張り紙があるお店は、撮影・SNS投稿OKというルールに従っている。

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杓子定規にルールとして云々ではなく、一声断ってお互いに気持ちよく過ごせることが大事なんだろうと捉えている。

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