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あなたの顧客は誰なのか

私の本業は商品開発。

新しい商品を作り、市場に出し続けることは
企業が売り上げを継続的に出すためには
絶対に必要なことである。

私が働く会社は中小企業なので
様々な開発プロジェクトはだいたい
関わっているのだが、
最近とある疑問が浮かんできた。

”このプロジェクトは誰のためのものなのか”

そりゃお客様のためでしょ。
そう思われるかもしれない。

もちろんそれは大正解である。

お客様が求めるものを的確に
市場に出すことは絶対に必要なことである。

しかし、必ずしも良く売れるものが
お客様の求めるものばかりというわけでも
ない事例がよくあるのも事実なのだ。

昨年リリースした商品は
私たち技術サイドとしては
もう一歩詰めてから発売したいと
考えていた商品であったが、
その売り上げは私たちの想定を
大きく超えるものであった。

ではなぜその商品が売れたのかと言うと
営業マンが求めるものだったからである。

いくら商品がいいものであったとしても
売る人がその良さをわからなければ
当然お客様にも伝わらない。

その逆も然りで、商品の特徴は
それほどであったとしても、
営業マンがそれをしっかりとアピールできれば
その商品の魅力はお客様に確実に
伝わるのだ。

私たちもお客様のニーズに合う商品を
開発するために、
営業、企画と話をすることがあるが
顧客のニーズをくみ取ろうとすると
どうしても顕在化している顧客の声に
偏ってしまい、明確なものがつかめない。

例えば特定のお客様が細かな要求をされたとしても
それは市場の中の一つの声なので
お客様のニーズを形にしようとすると
どうしてもピンボケしたコンセプトになる。

そうしてピンボケしたコンセプトで
商品を開発したとしても
お客様にとってその商品の魅力は
ピンボケしたものになるし、
何より営業マン自身がその商品の
セールスポイントをうたいにくいのだ。

そしてその結果、売り上げにつながりにくい。

ところが、これとは逆のケースが
先ほど例に出した昨年リリースした商品である。

この商品の場合は、開発初期の時点から
そのマーケットの営業担当が
「こんな商品がほしい」と明確に
打ち出していたものであった。

しかしその要求に合わせて商品を設計し、
試作品を出してみると
どうも従来の顧客が求める性能が
少し不足していることが分かったのだ。

そのデータをもとに営業マンに
改良のための期間が必要なことを
説明すると、
その性能は気にせず、
この仕様で十分であるとの結論に至り、
とんとん拍子に開発が完了したのだ。

新商品は一定の期間売り上げの推移を
トレースしているのだが、
通常新商品は最初売り上げは伸びずに
徐々に売り上げが上がっていくものである。

しかし、この商品は明らかに
初速から売り上げが伸びていた。

もちろんこれは営業マンが
気に入った商品というだけではなく
顧客に受け入れられる要素があるが故の
結果であるが、私には最初不思議に感じられた。

製造業ではよく”次工程はお客様”という言葉が
使われる。

モノづくりは色々なプロセスがチェーン式に
つながって成り立つものなので、
次工程をお客様と捉えて確かな品質と
確実な納期で渡すことは
製造プロセス全体をスムースに回すために
大切な事である。

私たち開発マンにとって次工程は
お客様であるとずっと私は思っていたが、
実はそれは半分正解で半分間違いだったのだ。

私たちにとって次工程は
営業でもあるのだ。

この話を読んでみて、自分には関係ないと
感じる方も多いと思うが、
私たちはしばしば自分にとっての
顧客が誰なのかを勘違いすることがある。

こうしてnoteで発信をして
読んでくださる方は私にとって
お客様である。
しかし、すでにフォローして
私の発信を待っている方もいれば
タイムラインに流れてきてなんとなく
読んでくださる方もいる。

このように私個人にとってみても
お客様には色んな方がいるのだ。

にもかかわらず、私が既存の顧客だけに
向けて発信をしていれば当然ながら
新しいお客様にとっての魅力は下がる。

まさに一見お断りの店のようである。

この逆も然りで、新規の顧客に向けて
発信ばかりをすれば既存顧客にとっては
退屈なものになってしまうだろう。

よく発信においては”誰に””何を”届けたいのか
明確にしろと言われるが、
それを意識していないと、
いくら質のいい発信をしたとしても
見向きもされなくなってしまう。

あなたがもしも発信をする中で
思ったように伝わらないと感じているならば
それは特定の顧客だけを見すぎなのかもしれない。

あなたにとってのお客様は
色んな人がいるはずなのである。



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