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子供に対するリスペクト

先週日曜日は息子のサッカーチームが
試合であった。

息子は以前からサッカーをしていたが
諸事情により先月より所属するチームを
移っており、
今回はこのチームに移籍して初めての試合であった。

以前所属していたチームの観戦スタイルは
親は基本的に何も言わないというもの。

拍手ぐらいはするが、プレーに関わるアドバイス的な
掛け声は一切しない。

私はその観戦スタンスが結構好きだったのだが、
今回移籍したチームは
どうやら親が結構声をかけるスタイルらしい。

とは言え、私自身はそんなチームであろうと
一切プレーに関しては何も言うつもりはない。

ただ静かに試合の動きを観客席で眺めていた。

今回の対戦相手は実力的に拮抗しているものの、
相手チームは殆ど6年生、
こちらは大半が5年生ということもあり
経験値の差が試合内容に反映されているような
感じの展開となっていた。

しばらく見ていると、息子のチームが
1点奪われるシーンがあった。

ゴールキックを奪われてカウンターを
食らってしまったような展開である。

このあたりはチームの経験の足りなさなのだろう。

そう思いながら観ていると、
私の後ろの方から穏やかではない
掛け声が聞こえてきた。

「おい、何ヘラヘラしてんねん。〇すぞ」

こんなサッカー会場で喧嘩が始まったのか?

そう思わせるような声だったので
ふと後ろを見てみるが、
別に喧嘩をしているような様子はない。

一体あの穏やかではない掛け声は
誰のものだったのか。

そう思いながら引き続き観戦していると、
再び同じ声で穏やかではない言葉が
聞こえてきた。

「お前、そんなプレーするぐらいやったら
サッカーなんかやめてまえ」

驚いたことに明らかに特定の選手に向かって
向けられている言葉である。

一体誰に向かってかけられている言葉なのか
わからず戸惑ったものの、
私にはどうすることもできない。

結局、そのまま試合は相手に押される形で
終了してしまい、
結果は3-1で敗戦してしまった。

試合が終わり、監督やコーチが
試合の反省を子供たちに伝えているのを
眺めていると、
とても的確に今回の課題点が説明されており、
次までにどうするべきなのか
具体的なTo Doまで落とし込まれていた。

このチームは以前所属していたチームよりも
練習自体は明らかに少ないが、
どういうわけか実力はそれほど以前のチームと
変わらないのはなぜだろうと思っていたが、
この適切なフィードバックと、結果を練習に
活かしていくことで効率的に成長させることが
できるのであろう。

そんな風に思っていると
ほどなくしてそのミーティングも終了し、
会場の後片付けをして帰る折になった。

残念ながら今回の試合では
息子の出場機会は少なかったが、
次に向けてどのような自主練をするかを
息子と話しながら
片付けを手伝っていると
再びあの声の持ち主が発する怒号が聞こえてきた。

一体誰だと思い見てみると
ゴールキーパーをしていた子の
親の声らしい。

片付けをしながらうなだれるその子に
その親は厳しい怒号を浴びせていた。

「お前、帰ったらタブレット真っ二つや」
「やる気ないねやったらやめてまえ」
「今すぐお前が今からやるべきこと書き起こせ」

見るとその子は涙を流しながら
その言葉を聞いている。

他人の家庭にどうこう口出しするわけにはいかないが、
私はいたたまれない気持ちになった。

私はサッカー経験者ではないし
詳しいことはよくわからないが、
キーパーの子がそれほど悪い動きをしていたようには
私の目には見えなかった。

コーチの方々が試合中に何度か
「キーパー、ちゃんと指示を出してやれよ」と
声をかけていたので、
6年生としてチームに指示を出して
引っ張っていく姿勢は弱かったのかもしれない。

だが、そんなに悪い試合内容でもないし、
私の目から見ても課題点はキーパーではなく
明らかにチームメンバーの経験の不足であった。

にもかかわらず、キーパーの子の親は
自分の息子を酷く罵っていたのだ。

これには私達親だけでなく子供たちも
ドン引きしながら見ていたのだが、
会場が間もなく閉められてしまうので
私達は車に乗りこんで帰宅することにした。

車の中で息子と先ほど見た光景について
話をしていると、
驚いたことが判明した。

なんと、あのキーパーの子の親は
時々パパコーチとして教えているというのだ。

息子曰く、他の子にはとても優しいらしい。

つまり、この人は自分の息子には
モラルハラスメントに当たるような
指導の仕方をしながら、
他の子供にはそうならないように配慮して
指導をしているということである。

確かに今どきは子供たちに何かを教える際にも
厳しく言いにくい時代になった。

それ故に、肝心な事は親がちゃんと
指摘してやらなくてはならない機会は
間違いなくあるだろう。

私とて子供たちには時に厳しく
指摘をすることはあるが、
その際にも子供がどのように感じるか
どのように受け止めるかを気にしながら
細心の注意を払って言葉を選んでいる。

だが、今回見た事例は全く違っていた。

指導の域を超えているように私の目には
見えたし、
あのような言葉をかけずとも
あのキーパーの子は自分の反省点を考え
成長できるように思える。

試合中も含めてあの親が発した言葉は
単に自分の不満を述べただけなのだ。

先日の試合の際には彼はコーチとしてではなく
私服で保護者として観戦していたので
他の子供のプレーには何も言わなかったが、
きっと他の子供のプレーにはあのような言葉は
かけないであろう。

何だか考えれば考えるほどモヤモヤして
私は帰路に就いた。

親は時々子供を自分の所有物のように
扱ってしまうことがある。

そして、それゆえに自分の子供に対して
他の子供に取らないような態度を
示してしまうことはあることは否めない。

だが、自分の子供も間違いなく一個人。

親子の関係でも明確にリスペクトを
持つ必要はあるだろう。

息子がこのチームに参加してまだ日が浅いが、
この様子がいつまでも続くようならば
どこかで声を出さなくてはならないときが
来るだろう。

私があのような言葉は使うことは
間違いなくありえないが、
親として子供に対するリスペクトを
欠くような言動はしないように
気を付けていきたいと改めて思わされる
日曜日の午後であった。

ちなみにその親の私服や髪型は明らかに
ガラが悪そうな雰囲気である。

学校の保護者でもしばしばこのような方を見るが、
美容室などでどのように指示すれば
あのような髪色や髪型に仕上がるのか
私には全く想像ができない。

そう思うと美容師とは多種多様な顧客ニーズを
満たさねばならないスゴイ仕事である。


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