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BOOK REVIEW「バンクシー アート・テロリスト」

(毛利嘉孝 著/2019年/光文社新書)

アートに詳しくない人でもその名を知っているだろう、時代の象徴とも言える現代アーティスト、バンクシー。知名度こそ高いものの、正体は不明。その神出鬼没さと反体制的な作品の方向性から、彼はしばしば「アート・テロリスト」と呼ばれる。

同著には、そんなバンクシーの原点であるグラフィティの世界観や、彼が作品に込めているもの、彼が作品を生み出す背景などについて書かれている。

オークションビジネスに対する皮肉、反戦、反エリート主義など、彼の作品には確固たるメッセージがある。マイノリティに寄り添うスタンスも、彼らしさの一つだ。

そんな反主流の立場をとりながらも、現代アートのアイコンとなっている。その矛盾が、バンクシーの唯一無二性を高めているように思う。

さまざまな街の片隅に小さなネズミを描いたシリーズは、彼の代表的な作品だが、バンクシーいわく「もし君が、誰からも愛されず、汚くてとるに足らない人間だとしたら、ネズミは究極のお手本だ」。

あらゆるマイノリティの象徴としてネズミを描いたバンクシー。バンクシー自身もまたネズミのようにひっそりと隠れて絵を描き、誰にも気付かれず消えていく。

著者のこの一文が気に入った。

「バンクシーは、ネズミを増殖されることを通じて、都市の秩序を少しだけ変容させようとしているのかもしれません。それは、ネズミを主人公とする都市のありかた_誰からも許可を得ることなく、自由に都市を作ることができるユートピアを相続することでもあるのです」

絵も音楽も映像も舞踊も演劇も、芸術とはときに言葉よりも力を持って、言葉にはできない広がりを生むものだと思う。

そしてまた、グラフィティ・アートはヒップホップがルーツだし、時代のアイコンである点や、反主流、マイノリティに寄り添うスタンスなど、バンクシーとBTSは相通じる物がある気がしている(この件、深掘りできるかも?)。


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