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読書感想文「新・地政学入門」

地政学の本は過去にも何度が読んだが、YouTubeで話題(?)の高橋洋一さんの著書なので興味を持ち、近所の書店で購入。

地政学というと、各国の地理的条件が政治にも影響してるのかな~くらいにしか思っていなかったのだが、この本で少し考え方が変わった。

高橋さんによれば
”地政学とは戦争の歴史を学ぶこと”
ということだ。

また
”歴史の背景には例外なく「国家の思惑」、「目論見」、もっと言えば「野心」が存在している”
とも書かれている。

例えば、ロシアが東アジアや東欧(ウクライナ含む)を欲しがるのはなぜか。これはソ連以前から変わっていない。ロシアの国土の大半では、冬には港が凍ってしまうという。そのため、不凍港は昔から喉から手が出るほど欲しいのだ。温かい地域を獲得するための南下政策を取る。
旧ソ連は社会主義国の連合でもあった。ソ連崩壊後は東欧地域がどんどん独立し、EUやNATOへの加盟及び民主主義へ転じて行った。
ロシアはこれ以上民主国家が増えてほしくなく、ウクライナは民主国家のEU諸国と自国防衛の緩衝国でもあるのだという。
自国(社会主義)を守るためにも、東欧地域のNATO加盟・資本主義/民主主義化を抑圧したい。それがロシアの正義であるとのこと。

※ロシアは、経済的な観点では資本主義という説もあるが、政治体制などを含めて民主主義とは言えず、社会主義・非民主主義として認識されているのが現状の模様。

これはなんだか納得してしまう。

また今も紛争がある中東やクリミア地域についても、植民地時代(ロシア・オスマン帝国・英・仏・独など)の領土拡大が正義の時代背景、それに伴う大国都合による国の分断(大国同士の条約により管轄地域の割り当てや独立国の承認)が根本にあるという。

歴史を追っていくと、なぜ今もそこで紛争が起きるのか、ロシアが戦争を始めたのか、今までとは違う考察ができるようになった。

あとは忘れてはならないこととして、アジアは実は社会主義国が多いということ。中国をはじめ、北朝鮮、ベトナム、ラオス。
また第二次世界大戦後、今までに戦争は世界で39件起きており、そのうち15件がアジア圏であることも忘れてはならない。

世界各国の政治の民主度(民主主義指数)を見ると、アジアで完全民主主義である国はかなり少ない。日本、台湾、韓国の3か国。
国際政治論では、民主主義国家同士では戦争が起こりにくいという理論があるが、アジアで戦争が多いのは民主主義が少ないから、ともいえるのだという。

#参考として、Wikiの民主主義指数を載せておく。世界銀行等の有料データベースでエビデンスは入手可能。


個人としては戦争はもちろん反対だが、このような世界情勢を踏まえたうえで、日本として自国の防衛をどうするのか、真剣に考えねばならないと感じた。国家の戦略は政治家にゆだねるしかないが、ビジネスを行う上でも、海外進出や取引等、国内で教わってきた教育や常識ではなく、自分できちんと調べ、判断して実行する必要がある。

その意味では、地政学も含め、もっと世の中の動きを自分の目で見たり調べたりして、行動していきたいと思った。

そんな一冊。

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