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息子のこと②

カチャ 玄関の扉が開く音がした。

ゆっくりお風呂に寝そべっていた私は、飛び上がった。そうだったのだ。今日は夫が学会で息子を迎えに行けないのだ。そういう時は瞬時に行動に移っている。気が付いたら濡れた髪を束ねて眼鏡のまま、車を猛スピードで走らせていた。

ただでさえ怖いものの多い息子。サッカーの終わる時刻はもうすでに真っ暗だった。どうかコーチが息子の迎えが来ていないことに気が付いてくれないだろうか、、、、。息子は気軽にコーチに話しかけたりはしない。友達のママが一緒に待っていてくれないだろうか、、、、、。息子には友達と呼べる友達がいない。

枠内に綺麗に停めることもなく焦って車を停め、人影のないしんとした駐車場を駆け回って息子の姿を探した。誰もいない。泣きそうになりながら目を凝らした。

物陰に猫のような塊があった。息子がいた。私の顔を見たとたん、涙が後から後から流れてきた。

どんなに抱きしめようと、言葉を尽くそうと、暗闇にただ一人待っていた記憶は消せない。細胞の奥深く、、、、、、木々のむっとした匂いと共に刻まれてしまったのだった。


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