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山口戦レビュー~至高の10分と続く失速癖~

待ちに待った連勝&ホーム勝利

ようやく……!ようやく今季初の連勝&柴田体制ホーム初勝利を達成。何度「連勝」というワードをここで出してきたか分からないが30節にしてその呪縛からも解放された。

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だが、ここで満足していても進歩はない。ここから残り12戦、勝ちを積み重ねていかなければ、今日の勝利も勝ち点3以上の価値を見いだせない。まずはこの試合でのイケイケだった立ち上がりやその後のレノファの変化、開始7分で2点先行したにも関わらず、イエローカード3枚にインアウトと、とにかくばたついた山雅の落ち着かないゲーム運びなど良い点、悪い点振り返っていきたい。

<今節個人的MOM>

個人的MOMは前貴之。2点目のアシストになった縦への絶妙なロングボールや気の利いた守備でのポジショニングなど古巣相手に持ち味を存分に発揮。「(山口は)去年までいたチームなので、ある程度人に食い付いてくることは予測してい」というコメントも納得の出来だった。

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次節は阪野・佐藤。前者は2点目を取ったことでチームに心理的余裕を与え、結果的にも勝利を決定づける得点となった。後者はチーム最多パス数を記録。こうした苦しい展開でも怖がらずにパスを受けることができるのは前半戦のビルドアップの閉塞感を考えると大変ありがたい。

<戦評>

■ハマった狙いと既視感すら感じた山口

・縦の意識と完璧すぎた前のアシスト

開始7分までに2点と今季最高と誰もが認めそうなほど良かった立ち上がり。先制点はCKからだったがその流れを引き寄せることができたのはセットプレーで効果的な攻撃ができていたのは立て続けのチャンスに繋がる。

そして、今日の狙いがはっきりと見えたのは2点目の阪野の裏抜け。柴田体制後、多かったボールを大切にしながら足元で繋いで優位性が生まれるのを伺いつつ攻めるスタイルとは違い、CBから最短距離(縦に早い攻撃)で前線の優位性を生かすような、狙いとしては愛媛戦の1点目のような形で追加点をあげた。

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この得点に関してはチームとしての狙いももちろん素晴らしかったが、今シーズンこの形が狙いとしてなかったわけではない。それを再現した前の視野、お膳立てのパスの優秀さがピカイチだった。

なぜそう言えるかというと軌道の良さはもちろんのこと、阪野があのシーンでトラップ→シュートの2タッチで得点を決めれたところにある。あそこでもしもボールのコース・回転が少しでもズレていると1発のトラップでゴール方向に向かえないし、相手のDFにあそこまで集中することはできない。阪野がほぼ身体を入れるだけでゴールまでいけるという形を生み出した前のパスに1点ものの価値があった。

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・まるで前半戦の山雅のような……

そして、山口側に立ってみると開始3分で失点し、前がかりになったところをひっくり返されるという何もうまくいかないという立ち上がりにほとんどの敗因があるだろう。これがなければ勝負はどうなっていたか分からなかった。

試合にいまいち入れずに前半で交代になってしまった楠本に対しては霜田監督も怒りに近いコメントをしていたが、あそこまでお粗末なプレーをして早々に2点も決められるとゲームプランもないに等しい。前半戦の山雅のような「ハマらないプレス」「耐えられない後ろ」という図に既視感すらあったが、逆に山雅はそこを見逃さないチームになったということはポジティブに思いたい。

■引かせないというベターな選択と当然の失速

その後は山雅側は時間が経つにつれて停滞。逆に山口側も握れるようになったが、イウリはそれほど活発に動くタイプではなく、橋内が中央の対人で負けることもほとんどなかったので決定打は生まれなかった。もし小松のように崩しのアイディア、周りとの連携がうまい選手がいればまた違ったかもしれない。

再び山雅の話に戻るとこの試合では2点取った後に、引くことなく、奪う選択をさせた。山口は後ろを3枚にしてこちらのプレスをいなすようになってきたので前から積極的にプレスに行くとなるとIHが出ていくしかない。個人的にはこの選択自体は間違っていないと考える。実際、シュートまで行けたシーンは多く、3点目を取れればさすがに試合は決まっていただろう。

ただミラーゲームというわけでないので移動距離も多く、ハイペースで試合を進めていくと運動量が落ちてくるのは当たり前に予想できる。途中から3421にシステム変更したが、勢いが先に落ちたのはこちら側。もしも追いつかれるようなことがあっても交代選手の誰かがアルヴァロになったくらいでそれほどパワーは使えなかったはず。

また(Twitterにも書いたが)殴り合い上等で何年もやってきた山口と早い時間に2点先行してさらに畳みかけるようなことをやってきていない山雅なので、次の1点が山口側に入る展開になればメンタル的には後手を踏む。そこから脱却するためのチャレンジという面ではプラスに捉えたいが、前半の戦いぶりから失速は妥当と言わざるをえない。

■山雅史上最も悲劇的なインアウト

そして、戦前課題にあげていた「交代の使い方」だが、今節はどちらかというとその課題がさらに顕著に出たのは残念な点であった。

一番残念だったインアウトまでの流れを振り返ると
61分:中美、セルジーニョ→山本龍、塚川
81分:杉本、阪野→浦田、韓(龍平がシャドーに)
89分:山本龍→米原

それぞれ交代の意図は分かりやすい。それほど効果的な動きをできていなかった中美・セルジを変えてそのまま龍平塚川を投入。阪野に変えて期待して戻した韓。杉本が痛めた際は守備固めも考えて浦田を左に。最後はシャドーで動きに迷いの見えた山本龍を引っ込める。

確かに勝ちにこだわるのであれば不適切という感じの采配ではないが、杉本が痛めたのは55分あたり。61分に中美を本来の中央に入れるという選択肢もあったし、81分の時点でアルヴァロや米原を中央に入れることもできた。浦田を左に入れて押し出す形で龍平をシャドーにいれたのは不自然な采配に思えたし、力を発揮できないのも無理はない。そうするのであれば残り10分山本龍使い切るほどの信頼は欲しかった。米原も残り数分の守備固めで使う選手ではないので場当たり感はある。

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これまで「試合の流れやシステムが変わる」「追うところを追わない」でのインアウトはあったが、采配ミスや我慢できなかったことによるインアウトはネガティブな要素が大きい。記憶に新しい高木彰はインアウトの次の試合で先発起用されるなど監督の信頼が形として出されたが今回はどうなるか。今後に注目したい。

そしてベンチ選手では、アルヴァロも8試合メンバー入りを果たしているものの、与えられた時間は合わせて65分間(内琉球戦が45分)のみ。交代がハマっている状況ならまだしもここ数試合後半の閉塞感が続いている中でこの状況が続いているのは何より他の先発外のメンバーからしても難しさがあり、不満につながってもおかしくない。

固定するに値する成績ではないため、その弊害も無視できない。次節メンバーの入れ替えの可能性も示唆されているため、もしかすると今の流れも変わってくるかもしれないが琉球戦とその後のような起用を続けても底上げは難しい。まずは次節の選手起用の変化を待ちたい。

■支配率から見る柴田山雅

こうして終わってみれば2-1で見事勝利。支配率は38%ー62%だった。もっと握れれば……というのは監督コメントからも滲み出ており、自分もそう感じるが結果から言うとこのくらいの支配率を記録した試合のほうが勝率という点では高い。柴田体制後の支配率と勝敗の関係を振り返ってみると

徳島戦  △1-1 37%
金沢戦  ✖0-1  53%
山形戦  〇3-1 37%
磐田戦    △0-0  31%
水戸戦    △2-2  48%
琉球戦    ✖0-2   45%
大宮戦    △1-1  56%
北九戦    〇1-0  35%
山口戦    〇2-1  38%
Yahoo Sports naviより)

相手もあることなので一概にこのデータから保持率が低いのが良い、高いと勝てないとは言えないが勝利した3試合はいずれも35~40%に収まっている。これは恐らく偶然ではない。山雅の「最も勝ちに直結するスタイル」だとこれくらいの平均支配率になるという可能性は十分あり、それは去年までの反町監督、そこからの布監督のやり方や選手編成からそうなっているというのも根拠になってくるのだろう。

ここから保持率を高めていくのか?38%前後の支配率のサッカーを極めるのか?どちらが正解というわけではないが残り12試合で一度区切りが来て、選手・スタッフに何かしらの動きがあるのは避けられない。勝利を目指すのは当然として、そこ以外の部分では良い終わり方ができるようなサッカーを期待したい。

■次は非保持のスペシャリスト集団

そして、次節はJ2最低支配率39.2%(football labより)ながら今季躍動、現在は10位につける栃木SCとの対戦になるのは支配率という点では興味深い。

前回対戦では開始3分で先制されるも1-1の引き分けに持ち込んだが、その時の支配率は50%ー50%の五分五分。スタイルが確立している栃木相手に山雅側が40%前後になることはないと思うが、ポゼッションを高めて60%近くを狙う展開はそれなりに考えられる。

また新加入・ハンヨンテはさっそく古巣戦となる。栃木では先発2試合でほぼ構想外という終わり方になってしまったが、その悔しさを晴らす最大のチャンス。メンタルを前面に押し出していくタイプなので泥臭く、山雅での初ゴールを目指してほしい。

どん底から生まれ変わったところを示す3連勝にむけて!Onesoul!

END

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