スタートアップと特許事務所の良い付き合い方とは?
前回の記事では、ライトハウス国際特許事務所所長を務める田村良介氏にスタートアップ向けの知財戦略についてインタビューしました。それらを実行に移す際に必要なTipsについて伺っていきます。本記事では特許事務所についてスタートアップが気になることをQ&A形式でまとめました。
Q. 特許を取るために必要な金額はどれくらいでしょうか。
相場としては、特許庁へ出願をするのに、1件につき30万円から50万円程度。そこから特許になるまでの総額で100万円程度かかりますが、拒絶理由通知書への対応などが重なると100万円台後半に至るケースもあります。
Q. 特許調査にはどれくらいの費用がかかりますか。
A. 10数万円~が相場ですが、その目的、技術分野や、どの国について調査をするのか等、抑えたい範囲によって変動します。たとえば医薬やバイオ分野であれば、ひとつの特許が何百億・何千億円という利益を生む可能性があるため、数百万円の調査費用をかけることもあるようです。国内だけの特許か国際特許なのかも含め、予算に応じて調べる範囲を相談するのが良いでしょう。特許事務所ではなく、特許調査に特化した会社に依頼する方が良い場合もあります。
Q. スタートアップにとって良い弁理士の条件とは。また、それを見分ける方法はありますか?
A. ビジネス視点を持っていることと、事業領域に対する理解があること。また、チャレンジ精神があることも重要なポイントです。例えば特許庁での審査の結果、拒絶理由通知が返ってきたときに、安易に権利範囲を狭めようとするのではなく、スタートアップのビジネスのことを踏まえ、一緒に勝ち筋を考えてくれる人が理想です。
大きな事務所であれば良いというものでもないので、規模や価格で弁理士を選ぶのは失敗の元になります。最初に直接相談する段階で、技術的な内容に関する質問の鋭さや理解度を見定めたり、特許にするのが難しいシンプルな発明を提案した際に、あっさりと特許にできませんと断るのか、なんとか提案につなげてくれるのかといった反応を見たりして判断すると良いと思います。
Q. 具体的な内容が固まっていない段階でも、特許出願の相談をしても良いでしょうか。
A. 問題ありません。実際にものがなくても、コンセプトとその実現方法、結果の予測が立つものであれば、特許出願のための書類を書くことができます。
Q. 弁理士との契約期間や範囲にモデルケースはありますか?
A. 基本的には特許出願や特許調査に対して費用が発生するため、契約に期間や範囲というものはありません。他方、顧問契約を結べば、月に5〜10万円程度の費用で定期的な相談を受けたり、会社への訪問を行うことができます。
Q. 弁理士との良い付き合い方を教えてください
A. 弁理士としては、日頃からスタートアップの状況を知っておきたいと考えています。たとえば顧問契約を結んで、会社の方向性や、開発の進捗状況が分かっていれば、開発者や経営者がそのアイデアや発明の価値に気づいていなかったとしても、早い段階で特許として出すべきものを掬い上げることができます。
シードやアーリーステージのスタートアップでは顧問契約が難しいかもしれませんが、スポットでの相談を繰り返してもらうのも良い方法です。製品やサービスが完成した段階でいきなり相談に来られるのと、それまでの状況を知っているのでは出せる答えも変わってきます。
Q. 投資家目線で特許はどう評価されるのでしょうか。
A. 特許の価値を測るのは難しいので、まずはその特許がなくてもビジネスモデルに事業性があるかが判断されます。特許を取得していれば、それでOKということではありません。特許の権利範囲に注意することが必要です。権利範囲が狭すぎると、簡単に回避が可能で、実質的に意味をなさない特許になってしまいます。実際にそのような特許も多いです。特許が鍵になるビジネスモデルである場合は、特に権利範囲をしっかりと評価していくことが重要になります。
取材・文:淺野義弘
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