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「後回し」は厳禁!スタートアップこそ労務管理の整備が必要な理由

創業初期のスタートアップは、プロダクトの開発や資金調達を優先するため、社内の人事制度や採用に関する取り決めなど、労務周りの整備を後回しにしてしまいがちです。しかし、意図せぬ残業代の未払いや保険料の滞納といったリスクを抱えると、その影響は後々の係争や業務停止命令などのトラブルに発展し、上場の足かせになる可能性があります。

労務トラブルのダメージは時間が経つと大きくなる

創業間もないスタートアップでは、「明日から来てもらっていい?」といった軽い口約束で働き始めるような場面をよく目にします。しかし、こうした曖昧な状態で始まった雇用関係だとしても、たとえば残業代の支払いがなされていなかった場合など、労務トラブルが発生した際には法律に基づいた厳密な対処が会社に求められます。

むしろ、会社が成長した段階で未払いの残業代を請求され、係争にまで至ってしまえば、社会的評価への悪影響は避けられません。違法状態での労働が存在する(した)ことは、資金調達でもネガティブな影響を与えます。さらには罰金を課されたり、業務停止命令が下されたりするリスクにもつながります。

こうした理由から、労務トラブルで生じる被害の規模は、企業が成長するにつれて大きくなっていくと考えた方が良いでしょう。また、いくら時間が経過しても、こうしたリスクが自動的に消えていくことはありません。会社が大きなダメージを負わないためにも、早い段階からしっかり対策していくことが何より大切です。

Coral Capitalが公開している「創業期チェックリスト【労務編】」には、法人を設立してから社員が10人になる前までにすべきことが非常に的確にまとめられています。スタートアップを立ち上げた時点でチェックすることをおすすめします。「従業員は労働法の保護対象。労務関連のリスクに注意!」「社会保険料の滞納があると、健保組合の変更や融資の審査に影響も!」といった注意書きは、特に心に留めておきたい項目です。

平時は労務士と、有事には弁護士との相談を

労働関連の契約が発生する場合は、必ず社労士(社会保険労務士)にまず内容を見てもらい、その上で弁護士にもWチェックしてもらいましょう。就業規則の詳細なども、社労士にチェックをお願いしてください。そして、もしトラブルを抱えた際には、すぐに弁護士に相談してください。初動対応を間違えると、必要以上に被害が大きくなることもありますから、自分だけの判断で動かないことが大事です。

適法環境で会社が動いているかどうか、法律に基づいて日々のルーティンワークをしっかり行い、労務のリスクを減らしていくことが社労士の仕事です。事業規模が小さく、人数も少ないスタートアップの初期段階では、あまり踏み込んだ議論をする機会は多くないかもしれません。しかし、将来的な人事制度にしっかりと会社のカルチャーを反映させたいのなら、いつかは社労士とも腰を据えた議論が必要になるという認識は、どこかで持っておきましょう。

最近ではHRBP(Human Resource Business Partner)と呼ばれる、事業の内容も理解して人事戦略を考えるプロフェッショナルも現れています。自治体や創業支援組織の窓口、あるいは労務問題に強い弁護士などを通じてこうした人材にアプローチできれば、より盤石な労務環境や、会社にフィットした人事制度が構築できるのではないでしょうか。

外部サービスも用いて社内のリスクを可視化する

会社の成長に合わせて、トラブルの種類や対策も変化していきます。たとえば労働安全衛生法では、従業員が50人以上の事業場ではストレスチェックが実施義務化されており、そこでハラスメントのリスクが可視化されることもあるでしょう。そこまで規模が大きくなかったとしても、社内に相談窓口を作る、あるいは民間のサービスを使うなどの方法を用いて、従業員の意見を吸い上げる機会は意識的に作るようにしてください。

労務関連でトラブルが起こると、採用を始めとして事業のあらゆる場面に悪い影響が出ます。資金調達もペースが落ち、場合によっては上場が数期遠のくかもしれません。社会的には大ごとにならなかったとしても、当事者の精神的な負担は大きく、チームの空気が悪化してからのリカバリーにはとても時間がかかります。繰り返しになりますが、契約周りをはじめとしたチェックは早めに、先回りして行い、基本的な対策を重ねていきましょう。

まとめ

・労務のリスクは企業が成長するほど大きくなるので、早い段階から先を見越して対策する。
・自分だけで解決しようとするのはNG。契約やトラブルが発生するたび、プロフェッショナルである社労士と弁護士に相談を。
・社員が増えたら、意見を吸い上げる機会を積極的に設ける。社内窓口だけでなく、外部サービスの利用も有効。

(取材・文:淺野義弘 / 編集:シンツウシン)

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