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「汝、星のごとく」 と 「星を編む」 を全国民が読めば、日本はもっと平和になるんじゃないかな。

最近寒くて雨も多く、外出するのが億劫になる南アフリカ、ケープタウン。
つい先日まで(7月くらい)は15日間でおそらく12,3日は雨が続いていて、さすがに気も晴れなくうずうずしていました。

8月から、ゴルフができるほどの大きな公園と、海と、でっかいスタジアムが隣接するグリーンポイントというエリアに宿を移動してきました。
なので、この辺りでのんびり散歩や読書をしたいと思っていました。

その想いが届いたのか、ここ数日は少し風は冷たいものの、青々とした海が空にも浮かんでいるような快晴となり気持ちがいい日々です。

という理由から、おうち時間が増えたのを機に、本来の英語勉強もソッと脇に置いて、小説を読み漁る日々を過ごしていました。

そこで、猛烈にハマった作品が二つあります。

凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」と続編の「星を編む」です。
本は、紙で読みたい派ではあるものの、勿論南アフリカには、現物は売っていないのでKindleで読むしかありません。
Kindleで読もうとすると、読了まで○時間、この章を終わるまで○分という記載が出せます。本を開くと、読了まで12時間と書いており、中々に読み応えがありそうな本だなと意を決して、この本と向き合うことを決めました。

汝、星のごとくは主人公の男女二人の視点を順々に繰り返されるストーリー。
年齢を追うごとに、彼女たちの視点の交錯がうまれ、胸が裂ける想いをしながらも貪り読みしてしまい、この忙しい時代に1日に4時間以上も読み続け、3日で読み終えてしまいました。
星を編むでは、汝、星のごとくで描かれきれなかった登場人物の背景を中心に描かれており、こちらも3日で読み終えてしまいました。

物理的な本では、読みながらざっくり残りこのくらいだ、だからこういうオチになっていくのではないかということを気にしながら読んでしまう。
Kindleでは、先述した読了までの時間を非表示にすることで、自分が本の何割を読んでいるかをわからない状態にすることができます。
それもあり、どうなるのよ、どうなるのよ。をさらに高揚しながら読めました。


で、話はここからです。


この小説は、凪良さんの生い立ちや、彼女から見た今の世の中の悪し慣習や考え方が、とても冷たいようで、熱量が込もり、大胆な切り口ではあるが、言葉は繊細で、物事の本質をサバイバルナイフのような鋭さで、我々に訴えかけてきています。それがもう非常に最高で。

そんな一部分を切り取って、紹介していきます。
紹介というか、備忘録です。自分への。
※割と多くなりました。ネタバレになるので、気をつけてください。
でも、これを機に一人でも多くの人が読んでくれたらとっても嬉しいです。

良い教師と良い大人はイコールではなく、良い大人と正しい大人もイコールでは結べない

汝、星のごとく|青埜櫂 17歳 夏

今度も無理そうだ。俺は幸せになれそうかと訊いたのだ。幸せにしてくれそうかなどと訊いていない。誰かに幸せにしてもらおうなんて思うから駄目になる。自分で勝手に幸せになれ。自分は自分を裏切らない。母親を通して、俺自身に言い聞かせた。

汝、星のごとく|青埜櫂 17歳 夏

---わたしって変わってるし、取材したらおもしろいと思う。

自分は普通ではない、と思いたがる普通の人たちの多さに櫂はうんざりしていた。

汝、星のごとく|井上暁海 25歳 夏

あのお母さんとの関係性によって育まれ、いろんなことを我慢して、あきらめなければいけなかった子供時代に根ざした、深情けのような過剰な櫂の優しさ。それは切るべきものを切れない弱さとよく似ている。

汝、星のごとく|井上暁海 25歳 夏

「自分がかわいそうと思わなければ、誰にそう思われてもいいじゃないですか」
いつものように淡々とした答え。強い人だ。こんなに強ければ他人を必要としないだろう。わたしとは正反対で、だからこそ北原先生の言葉は正しく響いた。
櫂に答えを求めるから苦しいのだ。
自分がどうありたいかの選択権は、いつでも自分の手の中に在る。

汝、星のごとく|井上暁海 25歳 夏

いわば逃避だ。
自分たちの弱さを他人に背負わせている。

汝、星のごとく|青埜櫂 25歳 秋

自ら選んだ時点で、人はなんらかの責を負う。他人から押し付けられる自己責任論とは別物の、それを全うしていく決意。それを枷と捉えるか、自分を奮い立たせる原動力と捉えるか。なんにせよ、人はなにも背負わずに生きていくことはできない。

汝、星のごとく|青埜櫂 25歳 秋

炎上は収まるどころか、翌日も大きくなっていった。正論を武器に他者を叩くことが楽しい連中、尚人というよりも男全体を標的にしている連中、LGBTQに絡めて物申したい連中、流行りの話題にとりあえず一言触れておきたい連中が四方八方から薪をくべる。

汝、星のごとく|青埜櫂 25歳 秋

島に帰るバスを待ちながら、今後一切、誰にも甘えるなと自分に言い聞かせた。自分のことは自分で支えろ。お母さんもその他のこともすべて支えろ。泣き言は二度というな。そんな暇があれば金を稼げ。涙を拭く時間があれば一歩でも進め。強くなれ。
(中略)
どんな仕事でもやる。仕事をくれるなら土下座だってしてみせる。そんなことで傷つく程度のプライドなら邪魔なだけだ。お金はいくらあっても足りない。
(中略)
わたしは島から出られない。だったらここで立つしかない。夢なんて甘っちょろいもんじゃない。死に物狂いでしがみつくしかない。人の目など、もうどうでもいい。
わたしはここで生きていく。

汝、星のごとく|井上暁海 26歳 冬

人は自分というフィルターを通してしか物事を見られない。
だから最後は『自分がなにを信じるか』の問題なんだろう。

汝、星のごとく|井上暁海 28歳 夏

悩みのすべてを切り捨てられる最後の砦としての正論が必要なんです。

汝、星のごとく|井上暁海 28歳 夏

わたしにとって、愛は優しい形をしていない。どうか元気でいて、幸せでいて、わたし以外を愛さないで、わたしを忘れないで。愛と呪いと祈りは似ている。

汝、星のごとく|井上暁海 30歳 夏

誰がなんと言おうと、ぼくたちは自らを生きる権利があるんです。ぼくの言うことはおかしいですか。身勝手ですか。でもそれは誰と比べておかしいんでしょう。その誰かが正しいという証明は誰がしてくれるんでしょう
(中略)
正しさなど誰にもわからないんです。だから、きみももう捨ててしまいなさい。

汝、星のごとく|井上暁海 32歳 夏

余分なものはなにもなく、必要なものはすべてあった。

汝、星のごとく|井上暁海 32歳 夏

結局1番のがんばれる理由は『ここはわたしが選んだ場所』という単純な事実

汝、星のごとく|井上暁海 32歳 夏

わたしと櫂の物語は、わたしと櫂だけが知っていればいい。
(中略)
わたしの大事な人たちが知っている。それ以上望むことはなにもない。

汝、星のごとく|エピローグ

ここからは、星を編むです。
星を編むでは、星のごとくで名言連発の北原先生や、編集者の二人の物語があるので、彼らの言葉にはこうべが垂れてもぎ取られるほど、うなずきました。

誰もが理解と尊重の上で垣根のない人間関係を紡げればいいが、それは容易ではない。
だから世界は争いが絶えない。わかり合えない苦しみが憎悪に転じるくらいなら、見ないふりで距離を取ったほうが互いに楽だし平和だろう。そうして世界は美しくひんやりとしたモザイク状に分かれていく。

星を編む|春に翔ぶ

己の未熟さというものは、いつも他者との対峙から教えられる。

星を編む|春に翔ぶ

自分のためだけでは息切れするし、周りの人たちのためだけでも満足できない。両輪を回すことで人は強く、高く、翔べる。

星を編む|春に翔ぶ

率直で、公平で、他者に自然と寄り添える才谷さんは人望があった。苦労が人を成長させるなどという話は、苦労した人を慰めるため、もしくはなっとくさせるための方便だと才谷さんを見ているとわかる。苦労は経験値を上げるが、その圧の分、心を歪ませる。

星を編む|春に翔ぶ

誰もが誰かを想い、悪気なく身勝手で、なにかが決定的にすれちがってしまう。このどうしようもない構図はなんだろう。これもまた愛の形だと言うのなら、どう愛そうと完璧にはなれないのなら、もうみな開き直って好きに生きればいいのだ。そうして犯した失敗なら納得できるだろう。

星を編む|春に翔ぶ

ぼくはどんな人間なのか。なにを欲しているのか。どう生きたいのか。正答はなく、年を重ねるほどに選択肢は増え、ぼくの海は拡大し続け、混迷と共に豊穣をも謳いだす。

星を編む|春に翔ぶ

この情報は本当に正しいのだろうか。クリックひとつで情報がたやすく手に入る時代、インターネットの波間に沈んでしまった真実をわざわざ手間暇かけて掬い上げようという人は少ない。簡易なまとめ記事などですべてを見切った気分になり、真偽不明の情報が『自分なりの真実』として積み上がっていく。自分もそうなってはいないか、常に自戒することを癖づけている。

星を編む|植木渋柿

自分ができないことをパートナーに強要するのは暴力だよ

星を編む|裕一

主語を大きくした議論はやめようよ

星を編む|植木渋柿

「自分もやりたいのに、"みっともない"って殻で自分で自分を覆ってできない僻んでるの。わたしだってみっともないって思われるのはいやよ。でもそれ以上に、その作家さんと仕事がしたい気持ちが勝つんだから仕方ないの」

星を編む|二階堂絵理

「そうか、ぼくが何年も時間かけて訴えてきたことを、えりちゃんはずっといいかげんに扱ってきたんだね。ぼくはその程度の存在だったんだ」
(中略)
「ぼくのためにやりたいことを我慢して自分の道を歪めたら、将来きみは後悔する。」
裕一は優しく微笑んだ。ぞっとするほど体温を感じない完璧な笑顔。
「ぼくは、じぶんの都合で誰かの人生を変えることは暴力だと思っている。ぼくはだれにもそんなことはしたくないし、だれかにそんなことをされるのいやだ」

星を編む|裕一

現代的な男ってのは、現代的な女にとって都合のいい男ってことだろう。それは社会性を前提とした『こうあるべき』って表向きの姿な。社会を構成する一員として、俺たちはそうでなくちゃいけないよ。けど家に帰ってまでそんなやついるかよ。いたら我慢しているか頭がイかれてるかのどっちかだ。
(中略)
極論になるのが当たり前なんだよ。男と女は対極にあるのが自然だからだ。
(中略)
相手の立場を尊重して認め合うことはできても、同化することは本能としてできない。
(中略)
完璧ってのはそもそもが間違ってるってことなんだ。
『美しく理想どおりに整った愛などない。歪みこそが愛の本質なのである』

星を編む|白尾先生

きみの理想を殺せるのはきみだけだ。

星を編む|植木渋柿

つぎの言葉は、特にSNSを使う全てのひとが一生ピン留めするべき言葉です。

矢を射るほうに自覚はないだろうが、小さな矢⁣でも千本射れば相手は血塗れになる。下手したら人生ごとねじ曲がる。なのにそのころには相手は自分が矢を射かけたことすら忘れている。もしくは自分は正義を行ったと信じている。
ーーーー物事の一面しか見ずに、なにが正義だ。

星を編む|植木渋柿

この人はいつもにこやかで人当たりもやわらかいけれど、自分の中に譲れないなにかを明確に、いやもっと強く、祈りや願いのような形で持っているように感じる。

星を編む|二階堂絵理

自由に生きるとは、そのことで生じたマイナスも受け止めることだ。

波を渡る|北原暁海 38歳 夏

いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ(瞳子さん)

波を渡る|北原暁海 38歳 夏

誰かがぼくたちを歪と指差そうと、今この瞬間、ぼくたちは間違いなく幸せだ。ささやかで、けれど世界を充分に満たしているこの食卓で

波を渡る|北原草介 52歳 夏

ぼくたちはいつもどう表現するかに重きを置くけど、逆に絶対見せないぞと閉じても防ぎきれずに洩れてくるものが本質っていうか真髄だと思う。

波を渡る|北原暁海 43歳 梅雨

自分の価値観の中で整合性の取れる物語を作る、それが1番簡単で気持ちのいい他者への理解の方法だからだ。

波を渡る|北原暁海 43歳 梅雨

自由になる覚悟を決めろ

波を渡る|北原草介 57歳 夏 

ちょっと、疲れました。5,000字にもなりました。
もう少しありそうでしたが、あとは自分の中に留めておきます。

この本は、あらゆる環境の人を拾い上げ、それらに蔓延る、ネガティヴな感情を上手に物語にいれこみ、こんな考え方やめようね。って訴えかける。

ぼくは、物語のひとたちのような、ハードロックな人生、価値観のなかで育ってこなかったが、こういう物差しで生きている人たちもいるということを小説の中から学ぶのだ。

想像しなきゃね。
創造するために。

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