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2022年1月の歌


嬉しきは息子達にもコウノトリ初夏に来るらしわが孫連れて      
うっすらとピンクの肌を覗かせて我を誘うは茗荷の天麩羅     
伊藤美枝子

楽しきは娘と孫とのハイキング二歳児かかえ大地踏みしむ     
「恵まれています」と声に出したれば悩める事の小さく見えたり  
鵜川登旨

楽しみは水平線に湧く雲を君と眺めて泳ぎゆく時          
部屋に住む息子は悲鳴を聞き分けて本気の時だけキッチンに来る        
大室やよい

一週は「土日」だけで良いものか曜日を跳び越え又も週末       
冬の日差し程よく受けた寝室で陽の香に抱かれ眠る幸せ        
大森久光

昔ほどに仕事のできぬ歯痒さをどうにもできずに年は暮れたり 
新しき年に虎から威を借りて前だけ向いて進んで行きたし        
岡まなみ

嬉しきは煮しめが旨く煮えること佳き年願い手間ひまをかける    
初春に雨戸のすき間より光さし部屋内に映す菱形ふたつ       
小野貴子

目覚めた子飛んでる女と呼ばれしがただ眠りたい八十路もなかば  
三度目のワクチンうちて少しだけ安心をして迎える新年      
小島夢子

コロナ禍の人影もなき梅園に蝋梅の花たわわに咲けり        
大空の青を凝縮したごときただ一輪の犬ふぐり咲く         
近藤秀子

楽しみは家族でつつく鍋の味濃くも薄くもみんなの笑顔        
孫たちは我より高く背が伸びて腕にすがりて歩むは幸さちか    
柴田和子

雷雨去り青空広がるその先に午後の日差しに光る海原        
楽しげに雪遊びする子供らの声を聞きいるビデオ通話よ       
関本なつ

毎日のたわいないこと特別に感じられるの幸せな人         
幸せになれるか否は簡単で大好きな人作ればいいの         
田中えり

嬉しきは古き友より久々に年賀はがきの届きたること       
コロナ禍に翼たたみて下町の「イスタンブール」にフムス味わう  
筒井みさ子

新年の庭木ひそひそ囁きて未来の声に吉報を聴く         
積ん読を崩して日日をこもりおり小さき活字に戸惑いながら     
原 葉

楽しみはメジロ文鳥カーディナル野鳥に餌やり愛でるひと時     
水面に映る青空に子メダカは泳いでいるよ雲といっしょに     
藤代敏江

(次の2首は連作)
人間の月着陸は半世紀前遂に始まった月旅行ビズ          
クルーズはブルーオリジン四人乗り民間初の月旅行へと       
三浦アンナ

ふるさとの雑煮の話で盛り上がるシニアが集う小さなカフェで    
山肌と白き街並みがオレンジに染まりゆく冬の夕暮れの時      
森田郁代

楽しみは散歩を終へてコーヒーとトースト横に朝刊読むこと    
久々に宇治を訪れ穏やかな川の流れに古思ほゆ              
山下ふみ子

家篭りに夫と並びてテレビっ子世界の遺跡に身を乗り出せり      
嬉しきは孫の言いくれる「ありがとう」夫に使いて照れるを見ること
楽満眞美

(次の2首は連作)
感染せりクリスマス前の木曜日完璧防護と自負していたが      
年越しの瞬間全てをリセットし健康体に戻れるならば        
六甲茂子

3.20.2022

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