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地図のない道

第3話  突然の訪問者

保が、家の前で立って居た。
そこへ、「バイバイ」と笑顔で手を振って弥生がこちらに向かって歩いて来た。
保が「やぁ、弥生。元気だったか?」と弥生に声を掛けた。
弥生は「何?あんたが、どうしてこんな所に?」と驚いて後退りをした。
保が「あぁ、それがな?俺、母さんが亡くなったろう?俺、あれから他に女つくって第2の母さんと暮らす事になったんだ」と指輪の薬指に新しい指輪が光って居た。
弥生が「そんなの、あんたが普通にナンパをして引っ掛けた女なんだろう?そんな人と私達がうまく行くわけが無いじゃない」と怒って居た。
保が「そんな訳が無いだろう?会えばきっと、弥生達の事を分かってくれるよ」と弥生に返事を返した。
翔大が、「あ、父ちゃん。お帰り」と健気に笑顔を見せて、保に駆け寄って来たのだ。
保が「翔大?元気でやって居たか?」と翔大の身体を抱きしめた。
翔大が「姉ちゃんは、父ちゃんの事を信じてないのか?」と弥生に聞いた。
弥生が「それは、信じたいけど、もし母親が優しくなかったら、私達、また1人になるのよ」と声を掛けた。
保が「そんな訳ない。母親は優しいから心配するな」と翔大達に優しい笑顔を見せた。
弥生は「じゃ、母親になった人に会ってみるよ」と保に声を掛けた。
保は「なぁ?車から降りて来てくれないか?お前に会いたいと言ってくれているんだ」と今度、母親になる、舞雪(まい)が車から降りて来た。
舞雪(まい)が「こんにちは。弥生さんでしたよね?私は、舞雪と言います。保さんから話は聞いて居ましたが、私は、一緒に暮らすのはどうかなとは思ったんですが」と弥生に話をした。
弥生が「良いですよ。私達が邪魔なら、一緒に暮らす事は無かった事にして下さい」と舞雪に話を付けた。
翔大が「姉ちゃんがそう言うなら、俺も、そうします」と弥生の手を強く握った。
それから、弥生は舞雪から「これが、あなた達のご飯ね?」と痛んだようなおかずに、味噌汁は、煮詰まったようなしょっぱい味で、ご飯は他の人より黄ばんでいた。
保が「ご飯くわねぇのか?だったら、俺が食うけど」とご飯を弥生達から貰って普通に笑顔で美味しそうに食べている。
舞雪は「ね?私の作ったご飯がお口に合わないのかしら?」と保に口々に声を掛けて居た。
翔大が「不味い。何でこんなもんを俺達だけに食わせんだ?」と腹を下してトイレに向かう。
舞雪は「しょうがないわね?そんなに食べたくなかったら、ゴミ箱に捨てるわよ」と何も悪気も無く、普通におかずやご飯をゴミ箱に捨てた。
保が「翔大、どうしたんだ?」と尋ねられて、翔大が「俺、申し訳ないけど、これから一緒に生活は出来ない」と保に話し掛けた。
保が「何を言ってんだよ?そんなに、舞雪の事を悪く責めるのか?」と翔大を睨んだ。
弥生が「私もこんな生活は耐えられない。申し訳ないけど一緒に暮らすことは無かった事にして」と保に気持ちを伝えた。
保が「そうか?それは、残念だな?俺も、翔大や、弥生に心配をかけたくないからそれ以上何も言えないけどね」と弥生達の話を聞いて居た。
弥生が「じゃ、私達はこれで」と手を振って、お辞儀をして去って行った。
舞雪が「あら?あの子達行っちゃったの?」と保に声を掛けた。
保が「あぁ。お前と仲良くするのが嫌なんだとさ」とそれとなく舞雪に伝えた。
舞雪が「そう?そんなに嫌なら、一緒に暮らさなくても良いと思うわ。帰って貰って逆に清々した」と口からポロッと愚痴が溢れた。
保が「何だって?」と逆に舞雪に聞き返すと、舞雪が「あら?私さっき何か言っちゃったかな?ごめんなさい」と平謝りした。

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