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心のチカラ

キクエが生きて居た頃は「カエデ、おはよう」と挨拶をして、笑顔で迎えてくれた。
カエデが「お母さん、お腹大きいね?ここには誰が居るの?」と尋ねた。
キクエが「それはね、カエデの妹のモミジよ?」と嬉しそうに、キクエがカエデの手をお腹に当てた。
入院の日、ピッピッピっと言う心電図の音、点滴をして居たキクエ。
キクエは、出産をして子供ができたと同時に容態が悪くなり、血を吐いて居た。
出血多量で亡くなる前の日にキクエが「カエデ、カエデはお姉ちゃんだから、お願いしたいことがあるの?もし私が亡くなったら、モミジの事をお世話してあげて欲しいの」と恐る恐る尋ねた。
カエデは「良いよ。私はお姉ちゃんだから、もしお母さんに何かあっても私が居るから大丈夫だよ」と頼もしく話をして居た。
キクエは「ぶぇぶぇ」と血を吐き、出産した母胎は生き返る事が無く、45歳と言う若さで亡くなった。
カエデは「お母さん。ね?目を開けてよ」と泣きながら叫んでいた。
モミジは、少し身体が小さくて、家に帰るまでに哺乳器に入れられて、静かに眠っていた。
ツカサが「モミジなら、大丈夫。すぐに退院できるさ」と心配するカエデの肩を軽く叩いた。
カエデが「あのね?お母さんはどこに行っちゃったの?」と尋ねると、ツカサは「お母さんは、いつもカエデの心の中で生きて居る。今だって、きっと空から見守ってくれている」と話をした。
カエデが「うん、そうだよね?お母さん優しいからな」と穏やかな気持ちで返事をした。
モミジは、ミルクの哺乳瓶で飲んでいた。
ごくごくとミルクを飲むモミジの姿は、愛おしくて可愛らしかった。
それからは、だんだんスクスク成長をして来たモミジと、夏には海へ行って、スイカ割りをした。
ツカサが「あ、こっちこっち。」とスイカの方に指を挿して、スイカ割りをみんなでやって食べた。
夏の風鈴がチリンチリンとなる頃、涼しい風が吹く中で、モミジとカエデは眠って居た。
昔のキクエを思い出すかのように懐かしい母の温もりが父のツカサの温もりに似ていた。
そしてモミジとカエデは大きくなり、母のキクエと面影が少し似て居た。
モミジは、「お父さん、お母さん今日までありがとうございました」と言って、家を出て行った。
カエデはある日のキクエのように、一児の母として家庭を持ち、幸せに暮らした。

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