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テセレーション(平面充填)で考えるSTEAM教育

Makeblock社の提供するXTOOL(レーザー加工機)P2を使ったワークショップを開催した。

テセレーション(平面充填)ワークショップ

レーザー加工機は、頭で思い描いたデザインを、デジタルで設計しアナログとして出力する優れもの。アクリル板や木板などを簡単に加工できるので、想像の幅が広がる。ハツメイカー研究所では2020年製のLaserboxを使ってきたが、今回4年ぶりに最新型のXTOOL P2を新たに導入した。パワーが55Wと高出力で、アクリル板を切った時の汚臭も断然少ない。クリエイターの心を擽る。

アナログな身体、デジタルな頭

今回はMakeblock Steam On Board Projectの一環で、STEAM教育に関わる教育者向けのワークショップ。
テセレーション(平面充填)をテーマに教材開発を考えた。

テセレーションとは

タイル張りのこと。今回は1つの形を設計(クラス化)し、それをレーザー加工機で複製(インスタンス化)し、パズルを作る。タイル張りといえばエッシャーが有名である。エッシャーの研究は見ているだけで面白い。

スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡

デザインされたオブジェクトを複製して充填させるのは、私がプログラム教育の中でイメージしづらい「オブジェクト指向」を、ものづくりを通して理解を深める事ができるのでは?と長く考えている取り組みである。

平面充填は、1種類の正多角形の場合「正三角形」「正方形」「正六角形」の3種類のみに限定される。

隙間なく敷き詰められる正多角形は3つだけ。
五角形(凸五角形)は、現在見つかっているタイプは15種類。

テセレーションできる形をデザインする方法

テセレーションの3タイプ

①トランスレーション(移動)

上下の辺の形の移動、左右の辺の形の移動によって形を変形しても平面充填できる。

②ローテーション(回転)

頂点を軸に上と左(上と右)の辺を回転。下と右(下と左)の辺を回転させた形の変形も平面充填できる。※六角形の場合は隣の辺ずつ回転させること

③リフレクション(反転)

①移動、②回転のどちらかに加えて、さらに反転させた形の変形も平面充填できる。※反転させる場合、全ての辺の対に適応させること

まずは鉛筆で描いてみる
はじめはアナログで。ハサミで切ってイメージを設計

手を使って考えることの重要性

デジタル機器が進化しても、頭で考えるだけではうまくいかない。モノの認知は身体を通してやってくる。ペンフィールド(Wilder Penfield)のホムンクルス(homunculus)のように、手からの感覚神経は脳の広い領域に至っている。

Penfield Wilder

デザインを考えること。これはオブジェクト指向によるクラスの定義だ。この設計にしっかりと時間をかけ、複製(インスタンス化)しないと、辻褄の合わないものとなる。ここは重点的に先生方とディスカッションを行った。

この設計の段階で考えることは、私たちは普段、具体的な物を視覚から情報を得て、手を動かしている。デジタルの世界では普段意識していない領域(超具体)を設定しなければならない。例えばX座標の値、Y座標の値、幅や高さなど。直感的には意識していない超具体を意識する。

私が生徒におすすめする著書「具体と抽象」。
デザインやプログラム、会社の経営、チームスポーツなど他者と関わる物事には、具体と抽象の行き来がどれだけ上手くできるかが重要になってくる。これはまさに「オブジェクト指向」と「情報デザイン」だ。情報をカテゴライズして抽象化する(例:りんごやバナナを果物と分類するなど)ことによって視野を広げる。欲しい物がある時、具体的な属性が気になる。(例:スマホが欲しい→Android or iPhone→OSは?機種は?)オブジェクト指向の様に、プロパティ(属性)とファンクション(機能)を意識する。

アイデアが固まったら、ソフトウェアで設計。ここからデジタルを使い量産する。

XTOOLのソフトウェアで設計
パソコンの基本操作は時間をたっぷり取って

「ものづくり」という言葉についてディスカッション。最近だと「デジタル ファブリケーション(DIGITAL FABRICATION)」が通じやすいか。造語の「ファブ(Fab)」の方が浸透しやすいか。などなど•••。

ディスカッション多めのワークショップ

基礎造形による形の話、バウハウスによるデザインの話などを交えながら、レーザー加工機のデータを作成。形と形の足し算と引き算で、新しい形は作る事ができる。

xtool creative space
自分のアイデアをソフトウェアで設計したら書き出し
出力したタイルを並べてみる
出力したタイルを並べてみる2
先生方の作品

隣り合わせの辺とトランスレーション、ローテーション、リフレクションを行わなかったため充填できない。1対だけリフレクションしたため充填できない。偶然生まれたミスも面白い。
あまり説明しすぎないで、トライ&エラーからこの法則を見つける授業も楽しいかもしれない。

XTOOLXTOOL P2

今回の加工機 P2は、スピードが早いので、トライ&エラーを繰り返すにはちょうど良い。手を動かして、試行錯誤と工夫をし、しっかりとした設計を行う。複製したインスタンスでパズルを組み立て、向きや表裏の配置を考えながら手を使う。「デジタル」と「アナログ」、「アート」と「サイエンス」、「具体」と「抽象」、「頭」と「身体」からオブジェクト指向の「クラス」と「インスタンス」のイメージを養う最前線STEAM教育講座。
これからも定期的にこのようなシラバス研究を行う予定である。

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