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Jun Yamamoto 音楽を語る(2)

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クラシック音楽のいいとこどりをして語ります。
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#Mozart

Mozart Requiem To be written Amen Fugue, completed by 5 Successors

モーツァルトがおそらくは計画していた、レクイエムのラクリモサにつづくアーメンコーラス。残されたスケッチ14小節から、5人の補作を集めている動画があったので聞いてみた。

いずれ劣らぬ力作だとは思うが、個人的にはDruce版の終わり方がかっこいいと思う。

1. Duncan Druce 1981

2. Robert Levin 1987

3. Richard Maunder 1993

4.

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Mozart Piano Sonata K280 F dur Movt. 1

モーツァルトにケチつけ、その2。

ヘ長調のピアノソナタK280の第一楽章だが、これもモーツァルトの耳がよすぎるせいなのではないかと思うのだが…17小節目から(音はこちら)。

19小節目、21小節目の赤で囲んだ部分が気になる。とりあえず4声体にして、適当な和声付けを検討する。音はこちら。

最適解かどうかはともかく、これならそれほど気にならないと思うので、オリジナルにはめ込んでみた。音はこちら。

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Mozart Piano Sonatas K333 and K533

吉田秀和さんの「モーツァルト」の中で、モーツァルトにおける「バッハ前」「バッハ後」という話があって、K333とK533を比較している。どちらも第2楽章に出てくる対位法的な部分なのだが、まずK333の方。

吉田さんも書いているが、ここではモーツァルトが自分の「よすぎる耳」をもてあましているように感じられる。譜例冒頭の前はBb7(変ホ長調の属和音)なのだが、E F# Aという冒頭の和音はいかにも唐突

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Mozart Piano Concerto No. 26 1st Movement

モーツァルトの26番のピアノコンチェルトの第一楽章の178小節目に、ちょっと変わった響きの処理がある。赤で囲んだ部分の、DとCの長二度でのぶつかりが面白いのだが、これはどう考えたらいいのか。

結論としては、ここは本来イ長調で、3拍目はB7で、これはイ長調のドッペルドミナントだが、これがdis が d に滑り込んで普通の2度の和音(Bm)になり、Cの音は並行短調のイ短調から借用してきた倚音ってこと

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Mozart String Quartet No.15 d moll KV421 Movt. 4

モーツァルトは奇跡のような曲をたくさん遺しているので、奇跡的だと騒いでも仕方ないのだが、この曲もひとつの奇跡のように思う。なかんずく、終楽章はかわいらしい奇跡である。そうとは書いていないが、8分の6のシチリアーナによる変奏曲。譜例に示したのは第2変奏にあたるが、第二バイオリンが大活躍し、細かなダイナミクスの指定とともにリズミカルな大変面白い効果を上げている。因みに、譜例の7小節目冒頭はEb on

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Mozart String Quintet No.5 KV593 Movt. 4

ハイメラン=アウリッヒ(中野吉郎・訳)クヮルテットのたのしみ(アカデミア・ミュージック)に付録2として訳者の中野さんの文章がついている。

ヨハン・トストという1755年生まれの音楽愛好家が、WAモーツァルトの弦楽五重奏に勝手な変更を加え、170年間バレなかったという話だ。

詳しくはもちろん上記の本に書いてあるのだが、うかつにもまったく知りませんでした。

だいたいBreitkopfの譜面が今で

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Mozart Piano Concerto No. 24 c moll KV.491 Movt. 1

この曲の冒頭は絃楽器とファゴットのユニゾンなのだが、転調が多く、これをソルフェージュで初見視唱の課題に出されたらつらい。音はこちら。

単旋律で聴いていると40番交響曲の第4楽章にもそういうところがあるが、ほとんど12音音楽である。番号を振ってみたが、11小節目までで12音すべてが登場している。

このメロディーの肝は丸でかこったAsの音で、ハ短調と思わせて、Asの音を出すことで、VIの第二展開(

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