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ハーブティーの思い出

小学校のとき中の良かった友人の家で、ハーブティーを飲ませてもらったことがある。

友人のお母さんの趣味がガーデニングで、その子の家の庭にはいつも花が咲いていた。
庭にベンチとかテーブルとかあって、日本じゃないみたいだった。
「お洒落だなー」って行く度にちょっと腰が引けていた私。
自分の家には植木鉢の一つもなかったからね。
花が咲いている家とかもう、世界が違ったのよね。うん。

庭で栽培しているハーブを使ったハーブティー。
レモングラスとアップルミントだけは名前覚えてる。
他のは初耳すぎて耳から脳に到達する前に反対の耳から出て行ってしまわれた。

ガラスの容器で、目の前で淹れてくれてね。
もうそんなの少女漫画の世界じゃん。
自宅では緑茶も紅茶も茶葉から淹れるなんてことなかったもん。
午後の紅茶飲んでるだけで自分はお洒落だと思えたあの日の私、気分はすっかり漫画の登場人物よ。

どきどきわくわくしながら口にカップを運んだわけ。

……全然、美味しいと思えなかったんだよね。

いや、何かね、味が分からなかったのよ。
今口に運んだ液体が何味なのか。
「温かい何か」でしかなかったの。
後味で少し香りが残った気がするけど、それも気のせいかもしれないと思って。
アップルとかレモンとかいうから、もっと分かりやすくそういう味がするかと思ってたしね。
ジュースの感覚で飲んだから「薄い」って感じたの。
ジュースなわけないんだけどね。

もちろん「美味しい」って言ったよ。
その場は。
友人も美味しいって言ってるし。

でも本心は落胆ですよ。
私はその美味しさが分かる境地に達していないんだなって。
家に帰って大人しくさらっとしぼったオレンジ飲んで、心を落ち着けたよ。

その後、私は長らくハーブティーと言うものを避けて生きてきた。
あのときの悲しい気持ちを再び思い出したくないからね。

だけど最近、いただいたんですハーブティー。
「温かいお湯でどうぞ」の、色が付いたやつ。

……美味しかったんだよね。
ちゃんと香りがして、飲み物として美味しかった。
しみじみいただいて、気分もちょっとほっこりしたんだよ。

私はようやく、ハーブティーの味が分かるようになりました。
大人の階段一歩上った感あるよねえ。

今このとき再度友人宅のハーブティー再挑戦したい。
多分私が悪かった。
今なら美味しくいただける気がする。

ずっと苦い思い出だったんだけど、「私にはまだ早かったんだな」で綺麗な思い出に昇格しましたハーブティー。
ハーブティーを嗜むなんて、これで私もとうとう少女漫画の主人公だぜげへへ。
というこれをスウェットにパーカー姿で書いています。

人間は心持次第で主人公になれるというポジティブな感じで終わらせたいと思う。
今日から私の背後には花弁が待っている。
少なくともそう思って生きて行く所存です。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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