羽鳥湊

羽鳥湊と申します。 小説、エッセイを書いています。 よろしくお願いします。

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  • 【一部始終】

    小説【一部始終】まとめです。

  • 小話

    ショートショートまとめです。 基本超短編。 すぐ読めます。 週三回 月、水、土曜日更新予定です。

  • 羽鳥の戯言エッセイ

    羽鳥のエッセイまとめです。 羽鳥のどうでもいい日常や過去のことなどを書き散らしています。 教訓も謎解きも全くありません。 頭を使う要素は一切ありませんし、堅苦しい作法や事前知識も不要です。 どうぞ肩の力を抜いてベッドやソファーに寝転んでお気軽にお立ち寄り下さい。

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ご挨拶

羽鳥湊と申します。 小説投稿サイトエブリスタ、カクヨムで小説を投稿しています。 こちらではエッセイを書かせていただこうと思っております。 とはいえ全く立派なものではございません。 羽鳥のどうでもいい日常や過去のことなどを書き散らしていく予定です。 教訓も謎解きも全くありません。 頭を使う要素は一切ありませんし、堅苦しい作法や事前知識も不要です。 どうぞ肩の力を抜いてベッドやソファーに寝転んでお気軽にお立ち寄り下さい。 読んでいただける方の時間が少しでもいい感じに潰れたら幸いで

    • 【一部始終】第十三話 ~決~

       どれくらい時間が経ったのか、分からなかった。  僕はのっそりと起き出し、まずトイレに行った。身体が空腹を訴えていることにも気付いていた。  こんなときにも生きようとしている自分の身体が憎かった。  いっそ死んでしまいたいと何度も思ったのに、それだけでは消えられない厄介さを呪った。  水道水をコップに注いで、飲んだ。  僕の身体が自然と机に向かい、ノートパソコンの電源を入れた。  カーテンを閉め切り、電気も付けていない。そんな暗い部屋で、パソコンのディスプレイがひときわ明るく

      • 【一部始終】第十二話 ~失~

         美華子は口を挟むことなく、僕の話を聞いていた。  まどかの名前が出たとき、少し寂しそうな顔をして、自分の名前が出たとき、大きく目を見開いた。坂本直の名前が出たとき、下唇を噛んだ。  今更隠し事をするつもりはなく、起こったことをありのままに話した。占い師のことも、水晶に映る映像のことも、すべてだ。  僕はずっと誰かに話をしたかったのかもしれない、と思った。  それまで僕の中にだけ存在していた占い師が、黒猫が、ハーブティーが、現実の存在として質量を得た気がした。あれは夢ではない

        • 【一部始終】第十一話 ~落~

           その騒ぎは、『この君』の映画が公開され、タイミングを合わせて『真実』の書籍が発売されたときに起こった。  SNSに疎い僕はすぐさまその騒動を知ることはなく、多少の間を置いて、美華子からのメッセージで知った。 『あなたの作品が盗作だって騒がれてる』  心臓がきゅっと握り潰されたような感覚だった。息も出来なくなり、背中からわっと汗が流れた。手足が震え、その場にへたり込んだ。  頭に浮かんだのは占い師の笑顔だった。  呼吸を整え、震える手でスマートフォンを握り、ようやく『野々村太

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        記事

          【一部始終】第十話 ~浮~

           翌日、昼近くなってようやく、新しいスマートフォンを購入するためショップへ向かった。  本当は執筆を中断したくはなかったが、唯一の連絡手段であるスマートフォンを失うのはさすがに困る。徹夜明けの目に日差しが刺さる。思わず目を細め、俯いて歩いた。  鈍く痛む頭で店員の話を聞き、勧められるがまま新しい機種に機種変更の手続きを済ませた。ショップを出るころにはもう夕方になっていた。  家に帰ってデータの引継ぎをしたのだが、これに思いのほか苦戦した。  元の機種はもう手元になく、バックア

          【一部始終】第十話 ~浮~

          【一部始終】第九話 ~圧~

           それでも書けなかった。  美華子と会い、金井さんからもアドバイスをもらい、いい刺激になったはずなのに、短編も長編も、一向にまとまらない。  ノートパソコンの真っ白なディスプレイを前に浮かぶのは、次回作の話をする美華子の姿だった。  僕に奪われたご当地ミステリーに関しては、「本当は私も狙ってたジャンルだったの」と悪戯っぽく笑いながら言っただけで、特に僕をとがめることはなかった。既に次作の構想に入っているから、美華子の中ではもう過去の話として終わっているようだった。  美華子だ

          【一部始終】第九話 ~圧~

          【小話】勇者のレベル上げⅦ 勇者:息子

          これはまずい、とゆうしゃはおもった きょうはいちがっきのしゅうぎょうしき せんせいからくだされたむじひなひょうていのならぶつうちひょう これをおかあさんにみせればもしかしたらばんごはんぬきぐらいではすまないかもしれない こっそりときたくし、つくえのまえであたまをかかえる どうする? ▷ひきだしをあけてみらいのろぼっとがでてこないかためしてみる ▷いえでをする ▷はんせいぶんをかく ▶︎ひきだしをあけてみらいのろぼっとがでてこないかためしてみる …… …… …… 出て

          【小話】勇者のレベル上げⅦ 勇者:息子

          【一部始終】第八話 ~転~

          『福岡シリーズ』の連載が始まった。評判は上々らしい。  僕の評価も金井さんの評価も高かった作品ではあったが、実際掲載し、読者の目に触れるまでは緊張していた。僕と金井さんの評価が正しかったことが証明され、僕はほっと胸をなでおろした。 『この君』の実写化の話も公になり、野々村太陽の名は以前より知られるようになった。作家人生のスタートは、順調な滑り出しを見せていた。  しかし、中の人である野々村悠希の人生は非常に地味で、暗かった。  まどかと別れ、大学に行く理由を全て失った僕は、丁

          【一部始終】第八話 ~転~

          【小話】勇者のレベル上げⅥ 勇者:適齢期の娘

          ゆうしゃはじっかでおいっことめいっこにおとしだまをたかられていた 「ゆうしゃちゃんありがとー」 「ありがとー」 むかいでははがしんぱいそうにゆうしゃをみつめている どうする? ▷おいっことめいっことそとにあそびにいく ▷てれびをみる ▷おまえもれいをいえよとぎりのあねにしせんをおくる ▶︎てれびをみる しょうがつとくばんがだらだらとながれている ははが「ゆうしゃはことしこそいいひとつれてきてね」といった どうする? ▷きこえないふりをする ▷いるよとうそをつく ▷

          【小話】勇者のレベル上げⅥ 勇者:適齢期の娘

          【一部始終】第七話 ~狂~

           家に帰った僕は、急いでノートパソコンを開き、新規の文章ファイルを立ち上げた。タイトルは『ご当地、人が死なないミステリー』。保存して、身体をベッドの上に横たえた。  あの占い師と会うと、やたらと疲れる。体力を吸われているのかもしれないな、と思い、笑った。それならそれで仕方がない。僕が選んだ道なのだ。  うとうとしながらふと左手の薬指を触った。指輪がない。  そうか、僕はまどかとの大切な思い出と引き換えに未来を買ったのだったと思い出し、それ以上考えるのをやめた。  代わりに新し

          【一部始終】第七話 ~狂~

          【小話】勇者のレベル上げⅤ 勇者:部下②

          ゆうしゃはせくはらじょうしにこまっていた 「かれしはいるの?」 どうする? ▷それってせくはらですよという ▷きこえないふりをする ▷わらってごまかす ▶︎わらってごまかす 「ごそうぞうに、おまかせします」 「なにそのいみしんなはつげん! おじさん、ねらっちゃおうかなー」 どうする? ▷かがみをみてでなおしてこいという ▷しねといってがんめんをなぐる ▷それってせくはらですよという ▶︎「それって、せくはらですよー」 「うそうそじょうだんだって!ゆうしゃちゃ

          【小話】勇者のレベル上げⅤ 勇者:部下②

          【一部始終】第六話 ~詰~

           大賞を受賞した作品の書籍化作業を終え、僕の担当となった丸谷文庫の編集、金井さんと連絡を取り合い、次作の執筆にとりかかった。  大賞をとった『この先も君と』に登場した主人公の友人に焦点をあてた作品で、略して『この君』の続編と銘打っている。  大学へ行く時間を犠牲にし、アルバイトのシフトを元通り週三回に戻し、空いた時間を執筆に充てた。  時間はあるのに、筆が進まなかった。それでも書かねばならなかった。  丸谷文庫新人賞受賞者は、月刊誌『丸谷』にて短期集中連載をすることが定例とな

          【一部始終】第六話 ~詰~

          【一部始終】第五話 ~熱~

           僕はとにかく小説が書きたくなった。  今取り組んでいる完成間近の異世界転生ミステリー小説を中断することに決めた。  ジャンルは全く変わるけれど、五十嵐先生の望む青春小説をなんとしても仕上げたい。  そうだ。ヒロインの名前はまどかにしよう。  新しい小説の案が次から次へと頭の中で弾けて繋がり、ぶつかりあってまた新しい塊になる。  頭の中が新しい物語に支配されている。一刻も早く文字にしたい。  立ち上がった僕に、占い師は「頑張ってくださいね」と言った。僕は挨拶もそこそこに占い師

          【一部始終】第五話 ~熱~

          【小話】勇者のレベル上げⅣ 勇者:義理の息子

          ゆうしゃはつまのじっかにきている めのまえにはつまのおとうさんがふんぞりかえっている どうする? ▷てんきのはなしをする ▷やきゅうのはなしをする ▷このまえつまがたまごやきをこがしたはなしをする ▶︎やきゅうのはなしをする 「こんしーずんは、どうですかねえ……」 「もちろんゆうしょうだろう。まいとしいってるけどな」 かいわがおわってしまった つまがつまのおかあさんとりょうりをもってあらわれた どうする? ▷つまにめでたすけをもとめる ▷りょうりをおおげさにほめる

          【小話】勇者のレベル上げⅣ 勇者:義理の息子

          【一部始終】第四話 ~再~

           アルバイトを終えた僕は、駅までの道を歩いていた。  まどかの誕生日以降、僕らの関係は良好過ぎるほど良好だった。  まどかの友人たちにも褒められた。「意外とやるじゃん」の言葉に込められた自然な侮りには少し引っかかったけれど、まどかがそれを咎めることもなく、僕もことを荒立てたくなかったので、気付かなかったふりをした。とにかく、まどかが喜んでくれればそれでいい。  あのとき水晶に映った映像は、実際の出来事だったらしい。  まどかはあの指輪を「欲しい」とは思っていたけれど、自分への

          【一部始終】第四話 ~再~

          【小話】勇者のレベル上げⅢ 勇者:女友達

          ゆうしゃはおんなともだちとらんちをたのしんでいる きゅうにともだちがまうんとをとってきた いしゃとでーとにいったらしい どうする? ▷うらやましがる ▷ききながす ▷わたしそのいしゃがほかのおんなとあるいてるのみかけたよという ▶︎うらやましがる 「いいなー」 「でしょ?」 ともだちはいしゃがどれだけじぶんにぞっこんかをかたりだした どうする? ▷ちがうわだいをふる ▷じぶんのかれしのはなしをする ▷そのいしゃにはわたしもくどかれたことあるよという ▶︎じぶんの

          【小話】勇者のレベル上げⅢ 勇者:女友達