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映画 関心領域[感想,要約,ネタバレ注意]


ネタバレ注意
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ナチス高官 ルドルフ・ヘスの出世劇

 関心領域の主人公はアウシュビッツの管理していたルドルフ・ヘス(演 クリスティアン・フリーデル)である。この映画ではルドルフ・ヘスがアウシュビッツの隣にある屋敷で、家族と過ごした時間と、ホロコーストを実行するための施設である強制収容所の責任者に選ばれて、アウシュビッツの隣から住居を移し、仕事に精を出す期間が描かれている
 ルドルフ・ヘスは親衛隊員としてアウシュビッツ強制収容所を管理して、上官に高い評価を受けた。つまり、アウシュビッツ強制収容所で効率的にユダヤ人を虐殺する仕組みをつくったということである。ルドルフ・ヘスの官僚精神は多くのユダヤ人の人生を奪ったということだ


SS親衛隊員であるルドルフ・ヘスはナチスドイツの公務員としての役割を果たしたのみ

 映画のテーマにされているのが、歴史の大悪党と描かれるSS親衛隊の高官も、実際は普通の人間であるという主張だ。ルドルフ・ヘスは所属する組織のSS親衛隊として職務を全うする必要がある。仮に現代日本に置き換えてみれば、大きい組織に所属する公務員が、上司の言うとおりに仕事をしたということである。ルドルフ・ヘスはSS親衛隊員として仕事をしたのみだと、この映画は強調しているようにも感じられる。ルドルフ・ヘスはナチスドイツの主張を作ったヒトラーや、ドイツ国の利益の為にユダヤ人の民族浄化に勤しんだということだ

大きい住居、プール、庭、ユダヤ人のメイドやユダヤ人の庭師。すべてルドルフ・ヘスが出世して手に居れた

 ルドルフ・ヘスの妻であるヘートヴィヒ・ヘス(演 ザンドラ・ヒュラー)はアウシュビッツ強制収容所での生活を気に入っている。大きすぎる家、プール、ユダヤ人のメイド、庭なんて普通に暮らしていて手に入れられるわけでがない。ルドルフ・ヘスが考えられないほどの努力の結果として手に入れたものである。それをヘートヴィヒ・ヘスは誇りに思っている面があるわけだ

ルドルフ・ヘスの心理 ユダヤ人に対する感情、各地の強制収容所をとりまとめる重圧がかかる

 ルドルフ・ヘスはパーティーに出席する。建物の高い場所から、パーティーに出席した人々を見たとき、ルドルフ・ヘスは効率的に仕事をこなす、つまりユダヤ人を虐殺すること考えていたと、電話で妻に話した。ユダヤ人を動物とも思っていない。その割に収容所の隣に住んでいる時、ユダヤ人を部屋に呼び性処理に利用していた
 パーティーのシーンで、ルドルフ・ヘスが嘔吐する場面がある。収容所を束ねる大役のストレスからだろう。ユダヤ人を虐殺したストレスでは心身に異常はないが、役割のストレスは感じているということになるだろう


ユダヤ人に救いを差し伸べたルドルフ・ヘスの娘

 救いを感じるシーンはルドルフ・ヘスの娘が、アウシュビッツ強制収容所のユダヤ人に、あの手この手でりんごを与えるシーンだ。映画では白黒で描かれている。一度目にスクリーンが白黒になったときは意味が分からなかったが、何度か白黒のシーンがあり意味が理解できた。しかし、彼女の与えたりんごを奪い合い、強制収容所内のユダヤ人が罰として、川に沈められてしまう。ユダヤ人を助けたはずの娘は、間接的にユダヤ人を殺してしまう
 ルドルフ・ヘスの娘は、ユダヤ人が作詞作曲した曲の書いた紙を見つけ、ピアノで弾く。悲しい詩、悲しい旋律は、SS親衛隊やナチスが、ユダヤ人から奪い取った金銭、労働力で、いい生活を与えられたたルドルフ・ヘスの娘に響いたのか、響かないのか



恐ろしいエンドロール

 エンドロールを流れるのを見るのがつらかった。虐殺されたユダヤ人の悲鳴が表現されたようなBGMが流れ、私はこの点を好意的に捉えられず、恐怖映画を観に来たのではなく、ナチス映画を観に来た人間にとっては、映画館を立ち去りたくなってしまうだろう
 余談であるが、ルドルフ・ヘス役の見た目はハインリヒ・ヒムラーに似ていると思う。私は予告編を見て、ハインリヒ・ヒムラーを主役にした映画だと解釈していた





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