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【映画レビュー】赤い薔薇ソースの伝説

赤いバラ画像がなかったので、チューリップで一つよろしくお願いします。
奥の赤いのです。

赤い薔薇ソースの伝説(1992)
スペイン語: Como agua para chocolate
英語: Like Water for Chocolate

主人公ティタが古いしきたりから自由になれる場所は台所だけでした。ティタは、いつしかペドロという青年に思いを寄せますが、ペドロは伝統に従いティタの姉と結婚することになります。悲嘆にくれるティタの支えになったのも台所でした。

そんなある日、ティタは自分の感情が料理を通して食べた者に伝わることを知ります。ティタの作った料理で次々と不思議なことが起こるんですが、良いことばかりでもありません。料理でそこまで伝わってしまうなんて、お薗さんのおにぎり(注1)もびっくりなわけですが、邦題にもなっているうずら料理に添えられた赤い薔薇バラソースも、その不思議なシーンの一つで、作中ではマジック・リアリズム(注2)なる技法で表現しているとのことです。

途中色々ありつつも、ティタはようやくペドロと結ばれます。結ばれるんですがね、なんとペドロ、呆気あっけなく命を落としてしまいます。複数の要因が重なったんだと思いますが、たぶん主因はCO²だったと思います。キャンドルはムード作りにはいいのでしょうが、沢山灯すのは危険なのです。文字通り、目も当てられない状況を見るはめになります。ペドロのペドロというか、目も当てられない部分についてはモザイクが入っているかもしません。こうしてまた一つ、映画から教訓(注3)を得ることになるわけですが、このシーンに対する反応は、笑ってしまう人とやるせなくなってしまう人に分かれると思います。最後の最後になんでそうなるの? と、ブックレビューで紹介した『塩狩峠(三浦綾子著)』のラストシーンを読んだ時に感じた絶望感に近いものを味わうことになります。
やはり今回も印象的なのはラストシーンでしたが、それはなぜか? これも『塩狩峠』と同じ理由かもしれません。長く長く温めた末だからです。どれほど長かったかは、ティタが編み続けたショールの長さが物語ります。このシーンはコミカルに描かれるんですが、笑っていいものかどうか複雑です。ティタの長い冬を知っているだけに切ないわけです。

革命の嵐吹き荒れたメキシコで、美しく、そして可愛らしいティタが見据える先には何があったのか? 希望なのか絶望なのか。それは最後にティタが選んだ道が物語ります。

メキシコの古き良き調理方法(注4)が紹介されますので、料理好きな方は好きな映画かもしれません。ただ、R指定があるかもしれませんので、その点はお気をつけて。指定がないようであれば、ばっさりうまいことカットしたか、モザイク対応をしたんだと思います。

というわけで、今回はですます調でお届けしました。

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注1 詳しくは、鳩子の短編小説デビュー作『丘の上に吹く風』の『14 お薗さんのおにぎり』を参照のこと。

注2 マジック・リアリズム(Magic Realism)とは
マジックリアリズム - Wikipedia

注3 酔拳の師匠から得た教訓については、自己紹介記事『Q&Qという自問自答』をご参照下さい。

注4 書籍(Like Water for Chocolate)では各章のタイトルが料理名で、料理シーンがもっと書かれていたと思います。ご参考まで。


潜っても 潜っても 青い海(種田山頭火風)