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2021/06/10 ヒタヒタが分からなかった

塩「少々」と「ひとつまみ」の違いとは? レシピ本に書かれた独特の言い回しに戸惑う人が多いことが、朝の情報番組で取り上げられていた。料理ビギナーは、レシピの用語でまずつまづいてしまう。以前、料理が全くできなかった私は、昔の失敗談を思い出した。

私は社会人になって親元を離れるまで、上げ膳据え膳だった。「料理を手伝え」と言われても、任される仕事といえば皿出しなどが主で、やる気がさっぱり湧かなかった。料理は学校の調理実習で習ったくらい。20歳すぎまで本当に何もできなかった。

確か高校生ぐらいのとき、母親が親戚の看護のため、数日間自宅を離れたことがあった。スーパーの惣菜に飽きて、大好物のじゃがいもの煮っころがしを作ろうと思いつき、作り方を電話で聞いた。

「雪平鍋に皮をむいて乱切りしたじゃがいもを入れ、ヒタヒタの水で煮て、塩こしょうすればいいだけだよ」

ヒタヒタ…?)

聞き慣れない言葉に困惑した。

(聞き間違いかな? ヒタヒタではなく、下下かな?)

聞き返そうにも、電話は切れてしまった。その当時、スマホはなかったから、確認できなかった。そこで、じゃがいもの下ぐらいの水で煮ることにした。…10数分後、真っ黒に焦げ付いた雪平鍋と、鍋底にへばりついたじゃがいもが発見されたのだった。鍋に入れた材料が、水面から顔を出しているくらいの量を意味するのが「ヒタヒタ」だと知らなかった。

じゃがいもの煮っころがしさえ作れない…。この失敗談で、私の料理下手へのコンプレックスはさらに深まることになった。

独り暮らしを始めてから、見よう見まねでたまにテキトーに時々自炊をしてきた。30代に入って体調を崩し、生活の基本は食にあると思い知らされた。

仕事の余裕ができた頃、恥をしのんで料理教室へ通い始めた。塩「少々」は親指と人差し指の2本指で、塩「ひとつまみ」は親指、人差し指、中指の3本指でつまんだ量だと、入門コースで最初に学んだ。

「大さじ2分の1」は、大さじの計量スプーンだと、7~8分目ぐらいの感覚でちょうどいい。おしょうゆなどの液体の「大さじ1」は、スプーンを動かしてもこぼれないぐらい、表面張力込みで量る。こういう基本中の基本から教えてもらって、私の料理アレルギーは少しずつ薄らいでいった。

料理下手を自覚している人こそ、料理教室に通うことをオススメしたい。全く調理経験がないほど、教わったことが一から身につく。小さなことを積み上げていくと、料理は段取りが大事なのだと分かってくる。

今はほぼ毎日、料理をしている。昼食と夕食の7~8品目を、一気に作る。慣れてくると、手順と台所の動線が自然と浮かんでくる。野菜をゆでた後に煮物を作れば、鍋を洗わなくて済むとか。料理ができるようになると、そのほかのことにも自信がついたような気がする。

冒頭の情報番組に話を戻すと、「初心者でも分かりやすい表現で書かれたレシピ本がもっとあればいいのに」という意見が紹介されていた。全く同感だ。最初の一歩を後押ししてくれるようなレシピ本が広まってほしいと思う。

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