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1日13時間勉強しても”アイツ”には届かない。一夏を勉強に捧げた高二のすやき

これはもう最近じゃない、高校二年生の夏の話。



一人の男の手により、”熱狂できる人格”を手に入れた。というより、授けられた。



そいつは、同じ部活のキャプテンK。それから現役で東大へ。そして今は、東京のどこかにいいるらしい。



おそらく彼とはもう二度と会うことはないし、このnoteを見ることもない。



だから今日は、お前がいなかったら今俺もいないっていう話を、思う存分に書き散らそう。



東大を目指す」ことにしてバスケ部を逃れた高一

中高一貫の進学校に入学、そしてバスケ部にすぐに入部。


そこで僕はKと初めて出会った。


天然パーマがまあまあ似合う、前澤友作に似たサル顔のイケメン。

ひねくれ者で我が強いという圧倒的な性格の悪さを兼ね備える童貞は、モテるはずもないのに、中三の時の文化祭でナンパに成功し、隣の女子校のカワイイ彼女を連れていた。



彼は部活があっても、時間タスクを巧みにこなし、クラスで圧倒的な成績を修めていた。

僕の学校は、地方の中でも圧倒的な東大進学率と医学部合格者を輩出していたので、彼は、校内で将来を期待されるような、ちょっとしたスターだった。



僕らは15人ほどの部活同期がいたのだが、不祥事を起こすなりして、中三の終わりには5人になった。ちなみに不祥事の渦中にいたのは間違いなく僕だったが、うまく言いくるめて逃げていた。



高校一年になった5月のある日のこと。

今思えば、一時の思いつきだった。


まあなんか当時、Mixiとか流行ってたし、思春期で、女の子見るだけで勃起するような童貞だったから誘惑には抗えなかったのだろう。





体力と時間と精神負担を奪う今の部活を辞めて、存分に遊んでやろう




熱しやすい僕は、ここまで思いついた時には退部届を書き終えていた。そして顧問に、「東大文Ⅲにいって教養学部に行きたいんです」その他美辞麗句を並べて部活を辞めた。



僕は男子校監禁生活の中で単調に勉強だけを強要させられてきたため、このままだと部活と勉強だけのつまらん人間になると思った。だから辞めたんだ。


中高6年間、体育会部活を続けることで得るらしい自信や根性と引き換えに、3年間の自由な意思決定期間を得たわけだ。



僕は部員に、「バスケを辞める」と言わずに辞めたことで、大変な反感を買った。一時期は口も聞いてもらえなかったし、三日間くらいはそりゃあ凹んだ。




その後の高校一年生の生活は最高に最高で最高だった。

勉強するという表面的な理由で入学した駿台予備校で、今でも一番仲良い親友と出会ったし、都会に出るようになって、いろんな女性と知り合う機会に恵まれた。



空中にある噴水で泳いで、学校に通報されそうなところを全力でチャリで逃げたし、河合塾の螺旋階段からトイレットペーパーを流すいたずらをしまくって、出入り禁止になりかけたけど、駿台生だったから免れた。



今の僕のふざけた遊び心や軽い対人関係、思い切りの良さなんかは、こんな日々が原点だ。




髪の毛にワックスとかつけて色気付いてたころ、秋口のある日。


誰もいない、少し西日が差し込んできた校舎で、キャプテンKとすれ違った。


その時、すれ違いざま、半年ぶりに口を開いた彼の言葉を、今後一生忘れないだろう。


「俺、お前には絶対に負けないからね。」




歯車が狂い出した僕の高校生活


その言葉を言われてからの数日間のことは、あまり覚えていない。



ただその瞬間、僕が今まで失ってた何かを思い出した気がした。彼の言った”負けない”は、学校の勉強の成績のことだった。



僕らはその時、”学歴至上主義”という狭い進学校の檻の中にいて、勝負と言ったら”そのこと”を当然に指すものと思って育った。



いつしか僕は、一回も成績で届きもしなかったKを超えるという無謀な挑戦ために、受験勉強にどっぷりと浸かってゆく。



僕の生活は180度変わった。


朝は5時に起きて早朝の校舎へ、リスニングを聴きながらチャリをぶっ飛ばす。

ギャンブル性格の強い文系数学を武器に、得点戦略を入念に考え、授業と授業の休憩時間も勉強し続けた。

学校が終われば予備校へ行き、22時まで勉強した後はスタバで24時まで数学を解いた。

極度の睡眠不足で2度ぶっ倒れた。しかし、ぶっ倒れてた間の無駄な時間を後悔して、またペンを握る。



僕の成績は下から数えたほうが早かった分、3ヶ月で存分に伸びた。



しかしKは、部活をやりつつこれまでの高成績を維持し、付け入る隙はいまだ無さそうだった。



僕の勉強はそれからも続き、高二の一夏は勉強に捧げる形となった。



だから僕の高校二年生は勉強しかしていないという記憶しかない。



迎えた高校二年生の秋の実力試験。



僕の順位は校内で400人中21位。

Kの順位は、400人中18位だった。



あと少しだった。僕は、職員室の前に貼られたその順位表を見て、膝から崩れ落ちた。



僕の、しょうもないけど、たった一人だけの、一夏の熱狂と青春。



自分の高校生の記憶はここまで。僕は、Kに勝つためだけの”受験勉強”を諦め、ただただ趣味として、数学を解くことに勤しんだ。



浪人してなんとか慶應義塾が僕を引き取ってくれた格好となるのだが、思い出す限り、目の覚めるような強烈な経験は、あの日以来していない。



23歳の今、新たな熱狂の予感


あれからなんとなく、公認会計士試験を始め、この前合格し、わりかし裕福な生活を手に入れた。


相変わらず大学生の間は、これといってハマったものはなく、冷めた目で物事を俯瞰していた気がする。


飲み会が好きだ、競馬が好きだ、風俗が好きだ、チャリが好きだ、

僕は大学や予備校にいるときですら、部活を辞めたときの言い訳と同じように美辞麗句を並べて、なんとかおもろいやつというパッケージを手に入れようと強がった。




何かのきっかけを見つけてどっぷり浸かれそうなものは、結局見つからなかった。


しかし今、”小さな監査法人”という、どうにも特異な環境に飛び込んだ。


ここは異世界だ。業務がどうこうではない。見たことのないものを次々と見せつけてくれる人がいるユートピア。


最近、同じ会計士試験合格者と飲んだ。


やっぱり変わっているんだ。僕の狭い思考観念のなかに、どこからともなく土足で上がってきて、既存の概念をぶっ壊したと思ったら、置き土産だけを残していつの間にかいなくなっている。



それまで塞ぎ込んでいた狭い世界観が広がっていく気がする。



なんとか彼らにあやかって、間も無くして、あの”熱狂”を取り戻せるかもしれない。



何かにハマれることは、しあわせなこと。


その時間や日々の進行中のことは忘れているというのに、振り返ったとき、くっきりと、確かな道筋を残している。


寝る間も惜しむくらいに熱狂する日々が、また始まろうとしている。



その熱狂する日々を、進行中に振り返ることができる日があるとすれば、大きくなったこのブログとこの記事を、Kが覗いてくれるときであると期待している。


♪Salley「赤い靴」


大したこと書いていないないけど、よく読まれている記事です⇩


ほなまた!

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