"リズム感"について④

 これらのこと―前述した内容―を踏まえて、今改めて「リズム感」についての考えへと立ち戻ってみたい。たとえば椅子に座って、一定のテンポで、RLRLRLRLという手順で、右手で右脚、左手で左脚を叩くという動作を想定してみる。前述したとおり、これは比較的容易い動作であると言える。

 では、同じRLRLRLRLという手順で、今度はドラムスティックを用いて、一定の間隔でスネアを叩くという動作を想定してみたい。すると先ほどの動作が可能な人も、ここで「壁」にぶつかってしまうのだ。

 この二つの動作の間にある違いとはすなわちただ一つであって、それはそれまでは主体・客体間に介在していなかった「ドラムスティック」という道具の有無である。道具の登場によって、その人の「身体」の範囲は拡張される。いや厳密には、拡張の余地が生まれると言っていい。いま、ドラムスティックを初めて持ったその人は、その道具を自分の身体の一部として―テニスプレイヤーやドライバーがラケット、車を扱うかのように―扱うことに慣れていないのである。そのためぎこちない演奏になってしまう。それが鍛錬を繰り返すことで解消され、一定のテンポで演奏をすることができるようになる。

 これは、算数が全て基本的な四則計算の応用であるのと同様、上述のようなシンプルな手順に限らず、そこから発展させた複雑な手順に置き換えても通用する話ではないか。その成長スピードの速い・遅いがすなわち、俗に言う「リズム感が良い・悪い」ということに繋がるのではないだろうか。

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