事務所勤務_昼イベントぶっ倒れ編

事務所で勤務している時の、イベント業務の話の続き。事務所が主催している昼イベントについての特記編を書こうと思う。


それまでに2回社内の昼イベントを経験してきて、3回目に幕張メッセでイベントした時。この時の思い出が一番強烈だ。

ステージがいくつかあり、サーキット式のフェスイベントになっていた。私はアイドルステージの当日取材を回す係になった。それまでは別の仕事をしていたが、イベントの3日前くらいに急に決定した。

さすがに私に渡ってきた時には取材内容も時間も、各事務所への確認も済んでいるものだ、と思っていた。そのつもりで前日までの打ち合わせもした。打ち合わせでは何となくあやふやな部分が多かったけど、外部の広報も入っていたから、さすがにね、と思いながら当日を迎えた。

当日、幕張メッセに入って、外部の広報とスケジュールを確認すると、まさかの真っ白だった。

何時にどのメディアがどのアイドルの取材希望なのかも分からない、各事務所との事前確認もしてない、取材場所も確保できてなかった。それを、当日何とかなるだろうと思っていたらしい。

しかも、任せたからという理由で、何でそんなに慌ててるの?みたいな対応を、同じチームや社内からされた。

もしかして、、アイドルなんて当日言って当日取材受けてもらえるだろう、と思ってたの、、?という疑念が湧いてきて、周りの様子を見てすぐに確信に変わった。そして、アイドルをバカにした態度を知って、怒りへ変わった。アイドルがいかに集客をしてくれているか、もっと敬意を持って相対するべきなのでは、と。

勝手に信じた自分がバカだった、、もっと詰めて確認するべきだった。

目の前で謝る外部の広報を無視して、とりあえず会った事もない各マネージャーの連絡先を控え、挨拶に向かった。その間に外部の広報に「お金もらってんだよね?どのメディアが取材したいかとりあえず早くまとめて。てか、事前に吸い上げるでしょ普通。」と言って、ちょっと泣かせた。社内のスタッフが、その可愛い女の子を慰めていた。泣きたいのはこっちだ。

「誰か人寄越せねえのか」と、スタッフ待機場所に怒鳴りこみにも行った。

その後は、私は慌てている様が通じたのか人を寄越してもらったりしたが、その場で取材内容を確認して、取材場所を確保して、知らないマネージャーに電話して説明する私を見て怯んでしまったようで、チームとしてというより、完全に私の手足という動きしかしてもらえなかった。とにかく指示して動いてもらった。周りにハタノさんの業務がヤバい、とアピールしてくれた事については、とても感謝した。

メディアからは怒鳴られ、マネージャーさんからは困惑された。ただどのマネージャーさんも優しくて、それだけが救いだった。社内の対応との差に、悲しくなった。

必死に回している私を横目に別ステージの取材担当が、社長と取材場所に座って談笑している時には殺意が湧いた。「取材の準備するんで、どいてください」とだけ言って、捌けさせた。「怒ってるー!笑」と言われたが、当然だろと思って無視した。

終了間際に疲れすぎて、幕張メッセの外で20分くらい夕日を見ていた。身体が全く動かなかった。それでも「何でそんなに怒ってるの?」と理解されなかったので、そんなに頑張って取材を受けたり交渉しなくても良かったのかもしれない、何もしなければ良かったのかもしれない、と空虚な気持ちになった。

今思えば、これが最初に仕事を辞めようと思ったきっかけの出来事だったように思う。というのも、決定打として次の出来事があったからだ。


イベントが終わって放心状態でスタッフ車に乗って事務所に戻り、誰にも挨拶もせずに帰宅した。誰からの声も無視した。疲労が半端なかった。


そして次の日起床すると、目の前の世界が変わっていた。起き上がろうとすると、視界がぐるぐると回って、立てずに倒れてしまった。何度か立ち上がろうとしても一緒だった。全く立ち上がれない。少し横になっても治る気配がない。横になっていても天井が回っている。軽い眩暈とかではなかった。

「これはさすがにまずい」と思い、事務所までの通勤途中の道にある耳鼻咽喉科に向かった。耳鼻咽喉科に向かう時点で、自分の症状を軽く見ている。着いた瞬間に、看護師さんが私をすぐにロビーに寝かせ、すぐに診察中のお医者さんを呼びに行った。お医者さんが飛んできて、目の前で光をくるくるされて何か確認した後、私に告げた。

「うん、ここじゃ無理!てか、よくここまで来たね。総合病院に電話するから。多分すぐ入院!」

「あ、あとこの子座っていられないから、ベッドに寝かせてあげてー!」と。診療所内の空気がざわつくのを感じた。

「えーーー」と思ったが、冷静に考えれば立ち上がれないくらいなのだから、そりゃそうだ。なぜ最初から総合病院に行かないんだ、自分。ごめんなさい、診療所のみなさん。

すぐにタクシーが来て、看護師さんに担がれて乗せられた。見知らぬ患者さんが、「忘れてるよー」とカバンを持ってきてくれて、タクシーの中にそっと入れてくれた。感謝の言葉も言えなかった。

近くの総合病院に着くと、看護師さんが車椅子で待機していた。なかなか速めに押される車椅子に乗せられて、大きい病院内を滑走した。目を開けているのも辛かったが、診察待ちの人達をぶっちぎって滑走する車椅子の私に、憐れみの視線が注がれているのは感じた。後で看護師さんに聞くと、顔が真っ白だったらしい。そりゃ視線も注がれる。

そしてまず頭のレントゲンを撮られ、その後レントゲンを見つつ、診察になった。幸いにも頭に異常はなかったが、お医者さんからの言葉にびっくりした。

「ハタノさん、めちゃめちゃ眼振しちゃってて、三半規管の玉がずれちゃってます」

??眼振??三半規管の玉がずれちゃってる??

朦朧とした意識で、お医者さんの言葉を理解しようと聞くと、どうやら”回転性の頭位めまい症”というらしく、三半規管の中のあるべき位置にないといけない玉のようなものがずれちゃっていて、めまいを起こしている状況との事だった。(調べると玉ではなく、耳石との事だった。)

「今までこういう事ありました?」と聞かれたので、「軽い立ちくらみとかはたまにありましたが、こういうのは初めてです」と言うと、「あー。何か強いストレスとかありました?最近」と言われた。思いつくものは一つしかなかったが、特に詳細を伝える事はなく「はい」と言った。

「とりあえず、ハタノさん今日は入院」と告げられた。「え!会社は?」とつい口を出てしまったが、こんな状態でまだ仕事の事を考えている時点で社畜だった。お医者さんも呆れて「あなた立てないんだよ、行けるわけないでしょ。明日も様子みつつですね」と言われた。

その後、目が開かないなりに、突然の入院宣言に呆然としつつ、周りでテキパキと看護師さんが入院準備を始めてくれて、気づくと病室で横になって点滴を打たれていた。

とりあえず会社に連絡、、と思い、社長にメールを入れた。起き上がって電話できる気力はなかった。すると、すぐに誰か行かせようか?と連絡が来たが、それでOKにしてもらいたくなかったし、誰にも来てもらいたくなかったから断った。

私は回診と食事の時間以外、寝続けた。食事も点滴から摂っているからあまり食べなかった。お医者さんからも「そんなに寝なくていいんだよ」と言われるくらい寝続けた。寝たらすぐ治る、というバカの一つ覚えを信じていた。

バカの一つ覚えが効いたのか、多分それよりも投薬と点滴が効いたのだろうと思うけど、2日目の夕方に眼振がなくなって眩暈もなくなった。

「明日退院していいですよ、ただし5日間は自宅で安静にしてください。あと毎日通院ね!」とお医者さんから言われた。歓喜だった、早く家に帰って家のベッドで寝たかった。

その旨も社長に伝えて、それでもまた誰か家に行かせようか?と言われたので、断った。それに、入院の間も家で待機の間も、PCも携帯も持って仕事は普通にして、業務については文句を言われないようにしていた。


そして退院する時に、請求書を見て驚愕した。6万・・・・・・!緊急入院だったので断る隙も断る事もできなかったし、何となく入院費は怖くて早く退院したかったけど、まさかの6万・・・。嘘だろ、と思ったが、致し方のない出費だった。

そして、最後は恐怖の一言で締めたいと思うが、労災は降りなかった。そもそも労災とかいう概念の前に、正社員というのは名前のみで、社会保障がないのだ。この事について詳細を書くと、各所震えると思うので、この辺にしておきたい。


途中も少し書いたが、進行に対して価値観が理解できないと思った事や、三半規管の玉がずれてまでする仕事って何だろう、勝手に対応した私が間違っているのだろうか、とはいえ価値観。。。と思った事が、事務所に対しての違和感が湧いた最初の出来事だった。


イベント編は一旦終わり。


ハタノ








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