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旅のつれづれ(私的ガイドブック)

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昧爽どき

昧爽どき

今はもう走っていない、寝台列車にひとり乗ったことがあります。暮らしを営む明かりが少なくなると、狭いベッドに横たわり、ガタンゴトンという音に耳を傾けます。つまり、よく眠れませんでした。人気がない深夜の駅のホームは、メーテルと鉄郎が現れるのではと思いたくなる異空間でした。うとうとしていると、いくつかの県境を越えました。

そうこうしていると、車内での生活の営みが始まります。顔を洗う水の音、旅人同士の

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旅先の寸景

旅先の寸景

カチッとした予定を組まなかった旅の2日目。
春の日差しに誘われ、川辺に降りたわたしたちをカモが出迎えてくれた。

「暖かくていい天気だねえ」
「川向こうの桜が満開だよ」
「川の水がキラキラしているねえ」
「ほら、魚がいるよ」

「で、今日は何をして過ごすの?」

うん、ただゆっくりすることにしたよ。
ゆっくりした時の流れで過ごす旅をプロデュースしてくれた君たちに、ありがとう。

(佐賀県嬉野市、轟

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ココロあたたまる

ココロあたたまる

大雪が予想されたある日、わたしは新幹線を乗り継いで青森に向かった。

冷えたカラダをあたため、空腹を満たすために、新青森駅で入ったラーメン屋さん。

注文したしじみラーメンを食べ終わる頃、器に現れたメッセージに目を奪われた。

そう、小説津軽の最後のフレーズだ。ここは青森県、太宰のふるさと。

さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬。

「読者」を「旅人」に置き換

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