ストーリーテラーたちが接客する店
こんにちは、コーイチです。
以前紹介した「Showfields」*世界一面白いお店参照 や日本で昨年上陸した「B8ta(ベータ)」、渋谷パルコの実験型のショールームストア店舗「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」などD2Cブランドのリアル店舗が増加している中、今回は、それらとは少し違うアプローチの店舗「Neighborhoods Goods」を見ていき、今後日本では、どんな形態のD2Cブランドの店舗が求められているのか考えていきたいと思います。
1.リアル店舗の再定義
EC市場が成長し、小売業のデジタルトランスフォーメーション化が進んでいます。リアル店舗でも店舗の効率化や省人化またはECなどの販売チャネルのインターネット化などを進めており、ECサイトの売上は今後も拡大傾向に進むと予想されています。
しかし、それとともに重要になってくるのが、リアル店舗との付加価値の再定義と言われています。
食品などの最寄り品については商品をその場で購入することが必要ですが、衣料品などの買回り品については店舗で見て、ECサイトで購入するという消費行動が一般化してきている中で、ECサイトを中心に考えた場合にはリアル店舗を異なる付加価値提供の場として捉える動きがあります。
「モノ売りの場から、顧客体験を売る場」への変化です。
2.Neighborhoods Goodsとは
(出典:HERO youtubeより)
2017年にアメリカのテキサスで創業したスタートアップ企業で、「D2Cブランドのデパートメントストア」と呼ばれています。
D2Cブランドとは、自社のECサイトから直販事業を中心にブランド運営をしている“Direct to Consumer ”という新しいビジネスのモデルを指します。
同社のCEOであるマット・アレキサンダー氏が、2014年にテキサスで開催した「Unbranded」という地元の企業やアーティストに対するフリー出店スペースを始めており、このアイデアをD2Cブランド向けに転用したのが、「Neighborhoods Goods」の始まりです。
2018年11月にテキサス州ダラスに約1300平方メートルの1号店を開いたのを皮切りに、2019年12月にはニューヨークで2号店をオープン、2020年3月にテキサス州オースティンで3号店をオープンしています。
D2Cブランドにとって、リアル店舗を持つための初期費用や法的手続きは、高いハードルとなっています。
そこで、D2Cブランドがコストを抑えて持続的かつ効率的なマーケティング活動を行えるリアルのプラットフォームを実現したいと考えたのが始まりということです。
同社のビジネスモデルは、D2Cブランドにリアル店舗の場を提供し、そのブランドからの展示費用と販売手数料をもらうことで成立しています。
同社はリアル店舗を「売る場所」ではなく、「ブランディング」「マーケティング」「地域コミュニケーション」の場といった新しい価値を提供することで、消費者・D2Cブランド双方にとって魅力ある場にすることに成功しました。
「Neighborhoods Goods」の最大の特徴は、「売上」ではなく「顧客体験」の最大化を重視していることで、店舗スタッフは商品を売ることよりも、そのブランドのよさを伝え消費者に喜んでもらう「ストーリーテリング」の接客方法に特化していることです。
また、デジタル活用も進んでおり、セルフレジ・AIカメラ・チャット接客を活用した付加価値の提供も行っています。
3.Neighborhoods Goodsの魅力
(出典:Neighborhood Goods youtubeより)
〇顧客にとっての魅力
最大の魅力は、ECサイトで見ている商品単体ではなく、ライフスタイルのどのようなシーンで商品を活用できるのかなどの、価値を提供してくれる点となります。
店内にはアパレル雑貨などのD2Cブランドが展示されており、消費者がイメージしやすい「新しいライフスタイル」を提案する展示方法や、「ストーリーテラー」として位置づけられたフレンドリーな店舗スタッフによる、同じユーザー目線で商品の良さを語ってくれる接客をしてくれます。
また、商品発表イベントやコミュニティーイベントなどのイベントが開催されていることなど、顧客が店舗に頻繁に来店するモチベーションを提供しています。
更に、店舗に併設されたレストランカフェもおしゃれで快適、思わず立ち寄って食事をしたり、時間をつぶしながら新しいブランドをアプリで検索、店員とチャットしたりと、消費者のライフスタイルに合わせてさまざまな使い方ができるようになっています。
〇出店ブランドにとっての魅力
出店ブランドにとってのメリットは、販売だけでなくマーケティングやブランディングまで支援してくれるビジネスパートナーになるということです。
同社のビジネスモデルは、出展ブランドからの展示費用と販売委託手数料(販売マージン)からなっています。
この月額固定の展示費用には、ブランド側へのコンサルティングフィーが含まれており、店舗スタッフは、出店者の「ブランドアンバサダー」として、ブランドの魅力・ストーリーを消費者に伝えることを徹底しています。
そして、顧客がスタッフと交わしたコミュニケーションを基に、ブランドに対して顧客のインサイト*をフィードバックしていく仕組みとなっています。
*インサイト:人を動かす隠れた心理のこと
そもそも、店舗を自社オープンする為には時間もコストも固定費として発生しますので、機動的に活用できるリアル店舗の場があることは出店ブランドにとってプラスとなります。
また、「Neighborhoods Goods」の場を通して、テストマーケティング活動が可能となり、店内には、AIカメラによる動線分析が行われているため、消費者がどの商品に興味をもったのか、店舗内の行動パターンなどの回遊データをフィードバックすることにより、その後の製品開発に役立つようになっています。
4. 一般的なデパートとの違い
(出典:Neighborhood Goods youtubeより)
一つ目は、顧客との長期的な関係を構築すべく、「売上げ」ではなく「顧客体験」の最大化を重視していることとなります。
店舗で週2~3回のイベント開催やレストランカフェの併設で、”特段買う予定は無いけど、居心地が良いからお店に行ってみよう”と気持ちを変化させ、気軽に潜在的なお客さんをお店に集めることが可能となっています。 エクササイズ教室、クッキング教室といったレッスンから、カンファレンスやブランドの製品発表会の開催まで多岐にわたっており、「多様なコミュニティー」が形成されやすい環境を提供しています。
また、スタッフは顧客に押し売りすることなく、ホスピタリティを持ってブランドや商品に関する「ストーリーテリング」に徹しています。
スタッフの賃金は歩合制ではなく比較的高待遇の固定給制を採用しているため、スタッフは「売ること」を追求する必要がなく、純粋に人々にブランドのよさを伝え喜んでもらうことにフォーカスしているということです。
二つ目は、個々のブランドのストーリーを重視する姿勢です。
従来のセレクトショップは、お店の雰囲気や理念に沿う商品を色んなブランドから集め、お店のインテリアなどに合わせて商品を陳列する事が多く、個々のブランド < お店の雰囲気 という構図が成り立っていました。
しかし「Neighborhoods Goods」は、棚やラックを各ブランドごとに配分し、各ブランドが一定のスペースを占有する事で、各ブランドがお店の雰囲気に埋もれないような配置をしています。
またスタッフは各ブランドのストーリーを顧客に伝達できるよう教育されており、商品個別の特徴だけではなく、その裏のブランドの思いや理念を徹底的に理解して接客に当たっています。
三つ目は、専用アプリでセルフ決済ができ、チャット機能を通じてスタッフに質問できるのが特徴となっています。
その他、店内のレストランにいながら商品を持ってきてもらうこともできたり、アプリを通じて他店舗から興味のある商品の取り寄せもできるようになるようです。
5.最後に
いつでもどこでもネットでモノが買える時代となって、リアル店舗にとっては、いかにモノを売る以外の「価値」を提供するかが大事となってきていると思います。
そして、その価値は1つではなく「複数の価値」を組み合わさり、消費者のさまざまなライフシーンをサポートすることが重要になってきています。
日本では、現在期間限定や実験的にD2Cブランドがリアル店舗として出店していますが、全てがD2Cブランドの大型施設はまだありません。
2021年5月、東京・銀座の遊休不動産を活用し、期間限定で「The Crafted GINZA」としてオープンしました。
アパレルやインテリア、ライフスタイルなど7つのD2Cブランドが集積した店舗となり、こちらが現在最大規模ではないかと思います。
(間違っていたらすみません)
今後のリアル店舗は、販売だけでなく、文化や習い事、飲食など、トータルなライフスタイル提案が出来る大型店舗が誕生していくのではないかと思っています。
日本では、以前紹介した同じD2Cを扱う「SHOWFIELDS」よりも、今回の「Neighborhoods Goods」の店舗の方が、合っているように思います。
今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。 よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。
よろしければ、サポートお願いします。サポートされたものは、今後の活動費として活用させていただきます。