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初めて出会ったシスコさん

 家から10kmくらい車で30分くらいのところだけれど、普段めったに行かない場所に用事があるから、ついでにぶらりと寄った美術館。

 シスコ・パラダイス?塔本シスコって誰?前情報も全くなし。正直期待もせずにぶらっと観るだけ観ていくかと、かなり暇つぶし感覚で入った美術館。

 ふーんと1枚、2枚と絵を観ていくうちにグングンひきこまれましたよ。シスコさん。

 50歳をすぎて包丁で石を削って作品を作った?画家の息子さんの作品の絵の具を包丁で削って絵を描いた?すごい執念を感じる最初の説明からうけた印象とまるで違う。おどろおどろしいまでの絵への執念を感じるかと思ったら、違うのだ。

 なんて楽しいの!?観れば観るほどワクワクしてくる!色も構図も時空も超えてとても自由。フリーダムな世界。ここに字を書くの?これがモミジなの?段ボールにもしゃもじにもここにも絵を描くの? いろんな既成概念をとっぱらってくれる。明るくておおらかで楽しい世界。

 描くのが楽しい。大好きな世界を大好きな人を大好きな花を大好きな生き物を大好きな景色を描かずにはいられないというシスコさんのわきたつ心が伝わる。苦しいこともいっぱいあっただろうけど、そんなことは大好きな世界には必要ないとすっかりふりはらってしまったかのよう。生きるのは楽しくて美しくて愛おしいと感じさせてくれる。人も生き物も花も同列に描かれていて、まさに僕らはみんな生きている♪と歌が聴こえてくるような作品の数々。

 ちょっと滅入ってた私だったけど、大丈夫すべて大丈夫って思わせてくれるエネルギー全開のシスコパラダイスだった。

 シスコさんをいっぱい抱きしめたくなった。私の周りの世界のすべてを抱きしめたくなった。ありがとうありがとうありがとうって叫びたくなった。

 自分の作品を削られた息子さんがシスコさんの世界を大事にして応援されたのも素敵。親子としてでなく一人の人間として尊重して応援されているのが伝わる。

 母でも娘でもある私の子育て、小育ち、親育ちを考える中でもシスコさんファミリーは魅力的だった。

 画集思わず買ってしまった。これからゆっくりシスコさんについて知ろう。またちがった世界が見えるだろう。シスコパラダイス。

 サンフランシスコに憧れた養父が名づけたシスコさん。熊本弁のシスコさんの言葉、幼さも達観した部分も感じさせるシスコさん。すべてがあたたかく愛しい。

 常設展も観たけれどルドンや川合玉堂さんたちの絵は美しいけれど上手だけどシスコさんの世界が華々しくて入り込めずにいつかまたねと帰ってきた。

 なんだか生きているのが楽しくなった1日。大好きだーって叫びたくなった1日。元気出た。うふふ。


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