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【年越しナイトウォーク】山好き大学生5人が城ヶ島の初日の出を目指し三浦半島を踏破する話

■日程 2023/12/31→2024/1/1
■地域 三浦半島
■天気 晴れ〜曇り(通り雨あり)
■メンバー(5人) N、Y、R、K、私
■タイムスタンプ(概算)
15:30 鎌倉駅 - 16:30 衣張山 - 19:00 逗子 - 22:00 横須賀 - 24:00(0:00) 衣笠山公園展望台 - 0:50 衣笠神社 - 4:30 城ヶ島大橋 - 4:50 馬の背洞門 - 8:30 城ヶ島灯台 - 9:30 城ヶ島バス停
■ルート
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=10BHYnG5bbpbl0nJQFZyivf2F-k_SBUQ&usp=sharing

今回踏破した道のり

【CT10:21/43.7km/△628m▽644m】

■記録
〜鎌倉 - 逗子 - 横須賀〜
 12月31日ー大晦日。陽の傾き始めた頃に、今回のナイトウォークの参加者・Kと横須賀線の車内で合流した。鎌倉駅で下車。長い夜を前にしてワクワク感が止まらず私たちの足取りは軽い。歩行後にその足で帰省するというKは鎌倉駅のコインロッカーに荷物を預けていた。夜通し歩いた後にそのまま帰省する計画とはなかなかの強者だなと遠目に見守る。鎌倉駅を後にし観光客で賑わう小町通りを歩いていると、先に鎌倉入りして観光中だった先発隊から差入れ要請のLINEが入った。歩いてお腹が減ってしまったのだろう。商店街には和菓子や洋菓子など洒落た店が並んでいるが、あの男たちは単に腹を満たしたいだけだろうとわかっているのでパス。鶴岡八幡宮の鳥居を抜け(時間がなかったのでお参りはしていない)、通りかかった屋台で唐揚げを買った。初詣客を迎える準備だろうか、八幡宮周辺には結構な数の露店が軒を連ねていた。こういう風景を見るとどことなく大学の学祭を思い出す。

鎌倉小町通り
鶴岡八幡宮
屋台の列

 先発隊からは杉本寺の前まで来るよう指示を受けた。八幡宮から離れるにつれ静寂が増す鎌倉市内を15分ほど歩く。Kは初めての鎌倉だったそうで、道中はこの辺りについてなどをあれこれ話した。
 杉本寺の前で無事先発隊と集合。これで5人全員が揃った。全員、年越しにかけて40km以上歩こうという馬鹿げた大学生たちである。唐揚げを頬張ると、日没に間に合うようすぐに出発した。向かう先は衣張山。こういう機会でもないと訪れることは決してないような「ザ・地元の裏山」だ。登山道(?)の入り口からいきなり倒木の連続。「おいおい、今日はスニーカーで来てるんだぞ」という声も上がるが、結局全員山の人間なので怯まず進む。ただ、やはりスニーカーやランニングシューズではグリップ力が弱く、登山には少し手間取る。登山靴の良さを実感するばかりだ。
 衣張山の山頂は南側に展望が開けていた。初め先客が2組ほどいたが暗くなる前に下山を始めたようで、山頂付近は我々の独占スペースと化した。沿岸に浮かぶ雲のせいで日没という日没を見ることはできなかったが、それでも暗くなっていく空を皆で眺め、歌い騒ぎ、ふざけ合った。もう2023に思い残すものはないぞとばかりに奇声を発したり熱唱したり、そんなうちに日は暮れ、ついにその時が来た。「年越しナイトウォーク」の幕開けである。

2023最後の夕焼け
トワイライトタイム

 雑木林の中は真っ暗なので早速ヘッドライトを装着し下山。途中、メンバーがわざと私の気に触ることを言って私が突っ込むというくだりを繰り返し謎の盛り上がりを見せる。そう、こういうバカみたいなことで盛り上がるのが一番楽しいんだ。そうこうしているうちに街中に出る。曇天と暗闇で富士山など全く見えない「関東富士見百景」のスポットで「おお!富士山めっちゃ綺麗やん!」と盛り上がる。順調に深夜テンションである(※まだ午後5時台のはずだが......)。まだまだこの旅は長いが、きっとこのくらいのテンションがないと最後までやりきれないだろう。
 メンバーのうち一人のおめでたい話を皆で聞きながらしばらく住宅街を歩くと逗子に着いた。いや、着いたと言っても私たちはNの後を追っているだけであって、Googleマップを片手に先頭を行ってくれる彼に感謝である。ここで逗子駅周辺のご飯どころを探す。蕎麦かとんかつかという選択となったが、今後の旅路を考えるとエナジーを溜めるに越したことはないと判断しとんかつ屋へ。大晦日だが賑わいを見せており15分ほど待って入店。全員、ロースカツ定食を頬張る。うまい。2023年最後のご飯は仲間と食べる美味しさも相まって絶品だった。

逗子駅前のとんかつ屋さん

 大晦日にこんな我々を暖かく出迎えてくれたお店の方々に「良いお年を〜」と言い残し店を後にする。店を出ると早速「ここからが本章の始まりだ〜」と大盛り上がり。テンションは常に深夜モードをキープしている。
 逗子駅から横須賀までは山がちで、主要道路はトンネルになることが多い。ここでNがトンネル迂回大作戦を提案、トンネルを避け丘を登り超えていこうという。初めは余裕があったので皆で迂回しアップダウンの激しい住宅街を回り道した。ところが、その次からは流石に面倒臭さが勝りトンネル内を通ることにした(というか、そうするようにNを他全員で説得した)。大晦日の夜のトンネルを歩く人などなかなかおらず、自分達しかいない時はハイになって騒いだ。この辺りでか、Rが相談を持ちかけ始め、Kがそれに真摯に答えていた。そのKの姿に惚れ込むもの数名(「いやぁ(Kは)いい男だなあ」)。
 何個めかのトンネルを抜けると自衛隊(?)の施設の前に出た。すでにそこは横須賀市内である。軍港に近づいているのを実感する。しばらく歩くと海の方に黄色い光が見えた。その正体がわからないまま歩みを進めると、それがライトアップされた自衛隊の船舶であったことがわかった。自衛隊の岸壁では3隻の船と潜水艇が鮮やかにライトアップされている。初めて横須賀に来た私にとってなかなかに印象的な風景だった。

歩くで!

 思えば、ここまですでに結構な道のりを歩いてきた。横須賀駅の前に広がるデッキで休憩をとる。大晦日だが、周辺はカップルやカメラマンで賑わっている。そう、今日はライトアップに加え、「カウントダウン花火」が開催されるのだ。実は我々がわざわざ横須賀に寄ったのもこれが理由。よし、花火を見るぞ.......。
 と意気込んでいたところ、スタッフらしき方がきて貼り紙を貼って帰った。「強風・波浪警報のため花火は中止」とのことだ。はい、終了。することもないので写真を撮りながら屋台ゾーンを抜け三笠公園の方へと向かう。横須賀の海沿いには結構な人が集まっており賑やかだ。この人出があるにも関わらずカウントダウンの花火が中止とはなんと残念な話だろうか。中止になった花火大会の花火はどうなるのだろうという取るにならぬようなことまでつい考えてしまう。

JR横須賀駅。目の前が海
左手に見えるのは自衛隊の船舶
デッキから夜景を楽しむ人々。月も美しい
この日は3隻確認できた

 さすがは横須賀で、三笠公園に至るまでも米軍基地周辺には多くのEnglish speakerがいた。横須賀の飲み屋「MIKASA」ではおそらく米軍関係(?)の人々が飲んだくれてBilly JoelのPiano Manを斉唱していた。そんな姿を横目に我々は早足で三笠公園へ。缶コーヒーを買って体を温める。と言っても年末にしては暖かい方で、早足で歩いていると汗ばむくらいだった。
 三笠公園前で休憩しているころ、年越しのカウントダウンを行う地を三浦半島のほぼど真ん中・衣笠山公園に決定した。軍港周辺から衣笠までは結構な距離があるが、年越しの瞬間に間に合わなかったら水の泡である。ここからペースアップして早足を維持する。口数も少なくなりがちだったが、こうやって目指すべきものがあって焦るくらいでないと長い夜はダレてしまうだろう。誰も文句も弱音も吐かずただただ歩みを進めた。

ライトアップされた三笠

 横須賀中央を過ぎたあたりからアップダウンが激しい。とにかく、早足で進む。途中、暴走族のバイクを見送りながら、とにかく進む。暴走族に慣れていない私からすると、バイクに二人乗りで赤いライトを振り回し続けるなんて結構お兄さん方も疲れるんじゃないのかと思う。大晦日の夜にまでぶぅんぶぅ〜んと飛ばしまくってほんと「お勤め」ご苦労様です。
 衣笠山公園の入り口を通過した。23:30頃だったろうか。もうここら辺の記憶はあまりない。とにかく息ゼェゼェで、舗装された衣笠山を(割としっかり)登る。一度展望台の場所を間違えたが23:50には無事展望台に到着。展望台からは遠くに横浜、手前に横須賀の夜景が望め、頭上は開放的な空に包まれている。近くには他の若者グループが1組いるくらいで特に混み合っているという感じはなかった。

衣笠山公園展望台。ここまで眼下の海から登ってきたのだ(!)
ヘッドライトの明かりは偉大

 到着後一息ついているうちに小雨が降ってくるなど落ち着かなかったが、ついに年越しという頃に雨は止んでいた。遠くに除夜の鐘の音も聞こえる。ついに2023年も終わるぞ......。皆で息を合わせてカウントダウン。

10, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, Happy New Year!!

2024年を祝う我ら

 2024年〜〜〜〜〜〜〜! 新年の幕開けである。おめでたいおめでたい。その時、横浜方面で花火があがった。遠くではあるがなかなかに美しい。「横浜であげられるなら横須賀でもあげろよ〜」と思わなくもなかったが、なんとめでたいことだろうか、年越しをこんな場所でこんな形でやるとは思ってもいなかった。
 そこでしばらく感傷に浸っているとおじおば3人組グループが来たので「新年あけましておめでとうございます」と挨拶。お互い初対面だが「今年もよろしく」なんて言われて笑い合う。「僕ら鎌倉から歩いて来たんです」「これから城ヶ島まで歩きます」など伝えるとたいそう驚かれた。当然だろう。「普通の人」からすればこんな計画、正気の沙汰ではない。そこにいたおじさん(=通称「きぬ爺」)には「この天気じゃ日の出はどうだろうねぇ」と言われてしまった。えい、ままよ。我々の崇高な計画にはきっと神も感嘆して初日の出を見させてくださるはずだ。そんな期待を胸に「んじゃ、城ヶ島まで行ってきます」と告げて展望台を後にした。おばさんには「来年もここで会おう(笑)」的なことを言われたのでまた行かねばならぬのだろうか()。

見上げると星空が

 展望台から降りてきたのちは、公園内の衣笠神社に参拝した。よく手入れされた素敵な神社で、地元の家族づれなどが初詣に来ていた。地域の住民が集い新年を祝い合う様子を見て、地元でとても愛されている神社なのだなと実感する。参拝後、ティッシュとみかんまでもらってしまった。東京には失われてしまった地縁のようなものを感じ心が温まる。ありがとうございます。

衣笠神社
いただいたみかんとティッシュ

 衣笠山から降り、セブンイレブンで補給をする。私以外はカップ麺を食べていた。私はなんとなく気分でなかったので代わりにじゃがりこを一箱平らげる。休憩を終えると最終目的地・城ヶ島へ向け歩みを進めた。もうここからは目を見張るような景色もない。とにかく三浦半島の田舎道を歩く。田舎の住宅街〜畑という風景の繰り返しだが、三崎口の近くになってくると丘陵地帯に一面の大根畑が広がっており、開放的だった。だんだん口数も少なくなってきたので適当な雑談で気を紛らわす。天気が少し回復したくらいで一喜一憂していた気がする。こういう時、ZARDの「負けないで」って本当に良い歌詞だよなと思ってその良さを熱弁したのだが、あまり共感してもらえなかった。残念。

大根の畑が一面に。遠くは闇。
自販機で補給

 三崎町に入ると、城ヶ島に向かうであろう車に抜かされ続ける羽目になった。こんなにも城ヶ島で初日の出を見ようとする人がいるのだなと驚く。背後からビュンビュンと抜かされるうちにだんだんとテンションも低くなってきて、自分たちを鼓舞するためにも、走り去る車に「城ヶ島まで自分の足で歩けよ小心者め!」などと一方的なクレームを吐きかけた。
 割と最後はへとへとになりつつ城ヶ島大橋へ到着。この辺りで声を出して話していたのはもう私とNくらいだった気もしなくもないが、誰も弱音を吐かないあたりは、さすが、立派な山岳会メンバーだ。単に喋るのに疲れただけだろう。こんだけ喋って歩いていれば足だけでなく喉も疲れるはずだ。やっとここまで来たぞという気分で城ヶ島大橋を渡る。また車に追い越され少し腹が立つが、どうやら島から引き返す車もある。駐車場が満車なのだろうか。すごい盛況ぶりである。
 城ヶ島へ入るとやはり島の駐車場は満車だった。4時台の時点でこれとは驚きである。我々はそのまま南進し馬の背洞門へ向かう。先客がちらほら。人はそこそこいるが車の量を考えると特別混んでいるわけでもない。暗闇の磯に鳴り響く波の音はなかなかに迫力があった。ここまで来て、この音を聞いて、ついに計画達成、城ヶ島までの道のりを無事に踏破したのを実感した。喜びを噛み締めて星空を見上げる。空がだいぶ晴れてきた。このまま行くと綺麗な初日の出が見られそうだ。

おお、ついにここまで来たか…
城ヶ島ついた!
馬の背洞門周辺
これが馬の背洞門

 Nが事前に用意して来てくれていたお雑煮で夜明け前の冷えた体を温める。日の出まではあと1時間。だんだんと人も多くなって来たので、ここで初日の出を「階段の上から見るグループ」と「馬の背洞門の穴から見るグループ」とに分隊した。私は「階段の上から見るグループ」で磯を見下ろしつつ、岩場に打ち付ける波と初日の出という構図を待ち望みその時を待った。

お雑煮
意外と晴れてる!日の出見れそうな気が

 私とRで階段の踊り場ゾーンの人手の2列目に陣取り初日の出を待つ。だんだんと明るく、赤くなってくる空。南東まっすぐに上がる位置を計算しカメラを構える。人もますます増えてきて2列目でさえ抑えられてよかったと思うようになった。馬の背洞門方面を見下ろすと岩に何人も乗り上げている。危険な立入禁止区域にこの人だかりである。おいおい、落ちるなよと心配になる。我がメンバーの隊は大人しく地上の岩場に座っていたようだ。

おいおい、落ちるなよ(そもそもそこに登ってはいけません)
ふぅ〜
ざばぁ〜
ばっしゃ〜ん

6:51、ついにその時が来た。初日の出である。美しい、美しい、初日の出である。

よかった。晴れたー。

初日の出


水面がキラリ
海が輝いて見える

 こうしてきぬ爺の天気予報は外れ、神は我々に初日の出を見させてくださったのである。なんとめでたい。あたりの人も必死にシャッターを切っていた。私も、思い通りの写真を撮ることができた。これにて、本当に本歩行の目標を達成である。無事、全ての目標を果たし素晴らしい初日の出を迎えることができた。

朝が来た.

 初日の出後、全員で集合し写真など撮ったのち、西進し、私のわがままでひたすら地層を見させてもらった。火炎構造も級化構造もよく観察できた(より具体的には、6年ぶりに再会できた)ので非常に嬉しかった。せっかく城ヶ島に来たので本当にこの子(有名な火炎構造と断層の地層)に会いたかったのだ。会えてよかった。

地層
火炎構造!
火炎構造と逆断層!
地層を観察する私

 西側に目をやると、朝日に照らされる雄大な富士山を望むことができた。見渡す限りの晴天。結果論的に考えると年越し山行も中止にしなくてよかった気もしたが、これはこれで非常に楽しかったので十分満足だった。全員、初日の出が無事に見られて緊張が解け、ぐんと疲れが出てきた。

雄大なる富嶽

 朝ごはんには城ヶ島灯台近くのお店で海鮮丼をいただいた。気づいた時にはもう私はその海鮮丼を全て食べ終わっていて、頭を垂れ眠りについていた。やっと疲れが出て来た。今までは、疲れを出すことが許されないような雰囲気があったからだろうか。
 その後、バスで三崎口・京急で都心方面へと流れ解散した。全員疲れていたが、全てをやり切ったいい疲れ顔をしていた。

マグロ丼
城ヶ島大橋を通過するバス車内より
今日は良い天気だ。 2024がいい年になりますように.


 今回の歩行は、山岳会での年越しハイクが中止になった(雨風を警戒したため)のを受けて企画されたプライベートの代替アクティビティであった。「三浦半島縦断」という分かりやすいコンテンツ性と「城ヶ島から初日の出を拝む」という力強い目標を掲げた本企画。私個人としても、この企画があったからこそ、今回の年越しは存分に楽しむことができた。素敵な時間をくれた仲間たちに感謝したい。



Happy New Year!!











【地震災害のお見舞い】
1月1日(月)に発生した令和6年能登半島地震により被災された方々にこの場を借りてお見舞いを申し上げます。
読者の皆様におかれましては、ご自身、ご家族、お知り合いの皆様がご無事でおられることを心よりお祈り申し上げます。


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