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『体験価値』が『期待価値』を上回るからこそ次もリピーターはやって来る

前回の記事では、日常のビールの選択肢として、クラフトビールがもっと日本へ浸透していくためにはどうすべきかという観点で日本でのクラフトビールの価格について考えてみました。

その記事の中で述べましたが、クラフトビールの価格は、その醸造規模ゆえ、様々なコストの関係からどうしても高くなりがちです。もちろん、ブランド戦略上、敢えて高めに設定しているところもあるでしょう。

そのため、クラフトビールの価格は簡単に下げられるものでもなく、また、例え下げる余力があったとしてもブランド価値の毀損につながる可能性もあるため、簡単に下げるべきものでもありません。
(クラフトビールの文化を浸透させる観点では、価格が安い方がいいですが、価格を下げることによって作り手であるブルワリーのビジネスそのものが破綻しては元も子もないです)

なお、ここでの『価格が高い』とは、いわゆる大手ビールを通常飲用する消費者が持っている感覚からして高いと感じる価格のことを意味しています。

そこで、今回の記事では、クラフトビールの価格が『高い』ものであったとしても、どうやってクラフトビールのユーザーを増やしていくのかについて考えてみます。キーワードは『体験価値』と『期待価値』です。なお、個人的主観満載な意見ですので、その点はご了承ください!

ちなみに、『体験価値』は皆さんも何となくどこかでお聞きしたことはあると思いますが、『期待価値』はあまり馴染みがない言葉かと思います。それもそのはず。私が勝手に名付けました。笑

はじめに

それでは、早速本題に・・・

とその前に、折角読んでいただけたとしても、もしかしたら「どこの馬の骨が何を偉そうに講釈たれてんねん」ってこともあるかもしれません。
(自意識過剰か?!笑)

また、単に私が大好きで、いつもnoteで素敵な記事を書いているライターさんが、毎回大体記事の冒頭で自己紹介をしているので、簡単な自己紹介をしちゃいます!

初めての方は、はじめまして。以前記事を読んでくださった方は、再度お目通しいただきありがとうございます。

橋元 達也と申します。

現在、子育てをしながら家族と共に自分の夢に向かうべく、一歩ずつ歩んでいくために色々トライしています。なお、自分の夢については、以前noteにまとめたので、もしご興味あれば読んでみてください!

牛丼チェーン松屋のカレー(並盛490円)とカレー専門店のカレー(1,000円)

カレーは皆さんスキですか?私は好きです。特に最近はグリーンカレーにはまっていて、家でも作ります。でも昔は、グリーンカレーは苦手でした。カレーにココナッツミルクみたいな甘いの入れるなんて「なんでや?!」とずっと思ってました。でも今はそれがいいと思っています。やっぱり、人間の感性・味覚って時間とともに変わるんですね。

はい、初っ端から脱線してすいません。

閑話休題。今から本当に本題に入っていきます。

現在の世の中には、いろんなカレー屋さんがあります。カレーの種類も色々、値段設定も色々です。ここで、2つのカレーを考えてみましょう。

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松屋

一つ目は、有名な牛丼チェーンの松屋が提供している創業カレー(並盛490円)です。ちなみに、「創業カレー」というからには、松屋は牛丼屋さんではなく元々はカレー屋さんだったのかと思い調べてみると、なんと創業は中華料理屋でした。知りませんでした。

もし皆さんが松屋に入店し、創業カレーの並盛をオーダーするとき、そのカレーにはどのような期待を持つでしょうか?

まあ、「そんなに意識したことねーよ!」というお声が大半だと思います。普通、「自分はこのカレーに何を期待しているのか?」なんてことは意識しないですよね。

おそらくですが、ファーストフード的な牛丼屋というブランドイメージがある松屋なので、「オーダーしたらすぐにカレーが食べられる」ってことを無意識的に期待していると思います。

そして、実際、券売機でオーダーをしてから席に着き、ものの数十秒でカレーが提供されます。それを黙々と食し、十分に満足してお店を出ます。

カレー

では、次はカレー専門店のカレーを考えてみましょう。

カレー専門店にも色々ありますが、ここでは素材にこだわりを持ち、じっくり丁寧にカレーを作って提供しているお店を想像してください。もし想像しづらい方は、下にあるようなお店をイメージしてください。なお、ここは私が住む蒲田にあるカレー屋さんでとても気に入っています。

このようなお店に初めて入った場合、美味しい本格的なカレーを食べられると期待していると思います。まあ、そりゃそうですよね。だって美味しいカレーを食べるために専門店に来ているのですから。

メニューをみてカレーをオーダーし、どんなカレーだろうかとワクワクしながら少し待った後、カレーが提供されます。そして、食します。うむ、確かにうまい。やはり専門店は違うな。

完食し、お会計として1,000円支払いお店を後にします。

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以上、2つの異なる価格帯のカレーを考えてみました。それぞれのケースについて、期待価値体験価値の観点から考えてみます。

松屋の場合、490円のカレーなので、味そのものに対しては高い期待をかけている人は少ないと思います。どちらかというと、提供スピードへの期待が高いはずです。ので、上記のケースの中でも触れましたが、松屋の490円のカレーへの期待価値としては、「オーダーしたらすぐに出てきて、感動するようなうまさはないけど、そこそこ美味しいカレーが食べられる」になります。

これに対し、松屋では、どのお店も大体オペレーションが確立されているので、実際にお店では素早くカレーが提供され味も十分美味しいという体験をします。これがいわゆる体験価値です。

その結果、体験価値期待価値を満たすか、または、十分上回り(体験価値期待価値)、次にまた「手っ取り早くカレーを食べたい」と思ったときにいつかリピートするでしょう。

逆に、もしオペレーションミスとかで、カレーの提供を受けるのが遅くなった体験をした場合、体験価値が期待価値を下回り(体験価値期待価値)、しばらくリピートすることはなくなるでしょう。

一方、カレー専門店の1,000円のカレーに対して期待するのは、そのカレーの美味しさそのものです。したがって、実際に味わうカレーの美味しさが、期待している美味しさを超えるかどうかがリピートするかどうかにつながります。みなさんにも、カレー専門店で食べたカレーで「確かに美味しいカレーだけど、1,000円出してこの味なら次はもういいかな」って思ったことはないでしょうか?

さらにもう少し考えて、上記のカレーのケースではないですが、3,000円のカレーがあったとします。その場合、カレーの美味しさそのものに加え、お店で受けるサービスに対しても期待をするかもしれません。そして、カレーは確かにめちゃくちゃ美味しかったけど、サービスの体験が良くなかった場合、次はもう行かないかもしれません。

さて、ここまでカレーの例え話を交えてごちゃごちゃ言いましたが、ここで私が言いたかったのは、意識的にせよ無意識的にせよ、人は、これから受けようとするモノ・サービスに対し「これくらいの価値を体験できるはずだ」と半ば勝手に期待する期待価値を設定し、実際モノ・サービスを体験したときには「この体験は期待を超えている/超えていない」と体験価値と期待価値とを比較しているということです。

そして、それらの大小が次のリピートにつながるかどうかのキーになっているはずだというのが私の考えになります。

考える


で、結局『期待価値』と『体験価値』って何なのよ?

ここで期待価値と体験価値についてもう少し深く考えたいと思います。
なお、それぞれの定義について、上記でも少し述べていますが、改めて言語化しておきます。

期待価値・・・サービスや商品を通して得られる体験について、顧客が期待して設定する価値。広告や価格など、そのサービス・商品に関する情報やブランドイメージから主観的に想像されることが多い。
体験価値・・・顧客がサービスや商品を実際に体験し、それに対して主観的に感じた価値。サービスや商品の品質の他に、顧客の嗜好性や金銭感覚、興味の度合いなど顧客起点の様々な要因に左右される。

期待価値にしても体験価値にしても、両者の価値は、顧客の主観で判断されます。つまり、サービス・商品の提供者側が、どんな想いや技術を注ぎ込んで「これならば顧客に最高の価値を体験してもらえるに違いない!」と意気込んだとしても、その価値を判断する主体(主語)はあくまでも顧客になります。したがって、顧客が「良い」と思えば「良い」サービス・商品ですし、どんなに努力していても顧客が「良くない」と思えば「良くない」サービス・商品になります。

上記は体験価値からの視点ですが、期待価値においても、あのサービス・商品は「●●なはずだ」とあくまでも顧客が持つ主観的な認識が期待価値になります。そのため、場合によっては、提供者側が意図していないかたちで顧客からやたらと高い価値を期待される(その結果、勝手に失望される)ということもあったりします。怖いですよね。

失望


顧客が持つ期待価値を形成する要素は大きく2つあります。それは『価格』と『イメージ』です。

価格』は、この商品・サービスがこの値段ならこれくらいは求めたいということで設定される期待価値です。一方、『イメージ』は、いわゆるブランディングなどによって顧客の頭に形成されるイメージからもたらされる期待価値です。この『イメージ』は、ブランドイメージって呼ばれたりもします。そして、これら『価格』と『イメージ』は独立事象ではなく、お互いに作用しあいます。だからややこしいです。

それではまず『価格』について考えます。

人は基本的に得をするよりも損をすることを過大に評価しがちで損をかなり嫌います。いわゆる、プロスペクト理論損失回避バイアスってやつですね。そのため、「この価格の商品・サービスなのに、全然体感した価値は低かった!損した気分!」となれば、発狂するほど悔しくなります。
(もちろん個人差はあります)

これは、裏を返せば、人はそれぞれ「この価格の商品・サービスならば、これくらいの価値は体験できないと嫌だ!」という基準(≒期待価値)を持っているわけです。その基準は、その人の収入や価値観などによって変わります。

したがって、自分たちが商品やサービスで実際提供できる価値(≒体験価値)を見極め、適切な価格設定をすることが大事になります。また、『価格』設定は、その商品やサービスの『イメージ』を形成する一つの要素にもなるため、自分たちが目指すブランドの『イメージ』も考慮する必要があります。

よく、ビジネスでもプライシングが大事なのはわかっているけど、一番難しいと言われますが、上記のようなことがその理由の一つだと私は思います。

お金


次に、『イメージ』について考えます。

イメージ』は、商品やサービスの世界観を表現したフォトグラフやイラストなどではなく、あくまでも顧客の頭の中に(ある意味無意識的に)形成されます。つまり、顧客が、商品やサービスのPR広告やSNS記事、インスタでの映像、お店でのディスプレイなど、日々の生活の中で商品やサービスに接したときに、顧客の記憶の中に『イメージ』が蓄積されていきます。

上述した松屋の例でいうと、松屋のCMや実際のお店での体験を通し、松屋ならば「オーダーしたらすぐに出てきて、感動するようなうまさはないけど、そこそこ美味しいカレーが食べられる」という『イメージ』を持つようになるわけです。

そのため、顧客に持ってもらいたい『イメージ』を形成してもらうためには、あらゆる接点で一貫・継続した『イメージ』を顧客に感じてもらう必要があります。ブランディングやマーケティングにおいては、自分たちの商品・サービスの軸(『ブランドコンセプト』などともいわれたりする)を明確にすることが推奨されます。なぜならば、まさしくそれが一貫・継続したイメージ訴求において最も大事だからです。

想像

なお、全くの余談でこれを深堀すると長くなるので簡単にだけ書きますが、佐藤直之氏が提唱しているファンベースの考え方に立つと、ファン度が高い人には期待価値とか体験価値とかは最早関係ないと考えています。だって、その商品やサービス、ひいてはブランドが好きなんだから。大体のことは受け入れてくれます。親の無償の愛に近いかもですね。私がこれまで上述した考え方は、ファン度が低い顧客がいたときに、どういう心理的な側面が働きそうかということを考えたものになります。

クラフトビール

じゃあクラフトビールではどうすればいいの?

ここまではやや抽象的な話ばかりでしたが、クラフトビールの場合について考えます。前置きが長すぎ。笑

まず一つの課題は、いわゆる大手ビールより高い価格のクラフトビールをどうやって飲み続けてもらうか、になります。上述した私の考えで言い換えると、価格から想定されるユーザーの期待価値をどうやって体験価値で超えていくか、です。

それには、まずは何より、ビールそのものが美味いというのは大前提になります。そして、この『美味い』は、大手ビールなみではなく大手ビールのそれより超えなくてはいけません。

そうなってくると、やはり大手が出していないスタイルのビールや香味耐久性を度外視するからこそできるフレーバー(※)などで違いを出しつつ、しっかり品質にもこだわる必要が出てくると思います。

※大手ビールは、賞味期限が約1年であったり、常温で流通できるようにしたりとで香味の劣化を抑制する必要があります。その結果、奇抜なことがしにくいのです。

消費者もわざわざ高いお金を払ってビールを飲むわけですから、当然美味しいものが飲みたいですよね。しかしながら、最近のクラフトビールブームのおかげでブルワリーは増えていますが、たまにオフフレーバーが強すぎて品質に問題があるものがあります。クラフトビールだから多少の品質のゆらぎがあるのは仕方ないし、ある意味それがクラフトビールの面白さの一つにもなっていますが、品質へのこだわりは徹底したいところです。『クラフト』ビールなわけですから。

そして、『美味しい』の次に大事なのは、『想い』になります。クラフトビールのブルワリーの場合、大手ビールメーカーに比べるとユーザーとの距離がかなり近いです。そのため、ブルワリーの『想い』は伝わりやすいはずです。ビールに込めた『想い』ブルワリー設立の『想い』がユーザーに伝われば、その美味しさに『想い』へのリスペクトも相まって高い価格でも支払いたいとユーザーは思ってくれるはずです。

なお、最近は、大手ビールメーカーも同様に『想い』を伝えようとしています。しかし、体感としては、中々難儀している印象です。個人的には、商品やサービスの向こう側にいる作り手が見えづらいことが大きな要因ではないかと思っています。

あとはその他にも、ビールを飲むときの体験(これはビアバーなどサービングするお店などの協力も必要)の設計や購入体験の演出など色々あると思います。

しかしながら、小手先で色々できたとしても、結局一番大事なのは、

★自分たちはビールの提供を通じてどんな世界を目指しているのか?

★その世界を目指すために提供できる最高のビールとは何なのか?

★その最高のビールはどのようなシーンで飲んでもらいたいのか?

★ビールを通して提供している価値はプライシングとしていくらなのか?

徹底的に考え抜き言語化していくことではないでしょうか。

これが難しいのだと思いますが…笑

さいごに

長々と私が考えて書いたことについて、お付き合いいただきありがとうございました。おそらく、というか絶対に私の論理にはほころびが多々あると思います(←おい!)。しかしながら、正しい正しくないという白か黒かということではなく、「こういう視点で考えるとこんなことも言えそうだ」というように建設的な方向で色々考えていただけると嬉しいです。その上での批判的なご意見やコメントは本当に大歓迎です!

是非、よろしくお願いします。あと、もしよろしければ、ハートもポチっとしていただけると嬉しいです!

それでは今回はこれで終わります!乾杯!🍻

この記事が参加している募集

インプットしたものを何かでアウトプットしたいと思い登録。いずれブルワリーを自分で立ち上げ、それを中心にビアバーやゲストハウスなどシナジーがありそうなことを始めることを妄想中。ビールを囲んだコミュニケーションでみんなを笑顔にしていきたい。