自由創作#15 umbrella
雨が降った。
雨が降ると傘を差す。
雪が降った。
雪が降ると傘を差さない。
これは別に雪にテンションが上がって傘が差さないわけじゃない。私はもう子供じゃない。
雨は濡れるから差すのは当たり前だけど、
雪は大丈夫でしょ。って気になる。
だから差さない。
時間が経ってコートが凄く濡れていることに気づく。
コートの表面で溶けて水になっている。
あんな高いところから落ちてきて、
その下を歩いていた私のコートに着地し、水になった。地面に落ちることなく。ウールのコートに吸収されたのだ。
高い上空の雲から落ちてきて、
羊の毛の中に吸い込まれている。
そんなはずじゃなかったのに。
雪では傘を差さない。
雨では傘を差す。
本当は、雨でも傘を差したくない時がある。
大雨の中で急ぐ素振りもなくゆっくりと歩きたい。
もっと言えば、
大雨の中、踊ったりもしてみたい。
ダンスなど習ったこともないけれど。
だが、それはしない。
周りからヤバい人間だと思われるからだ。
周りに誰もいない事を確認し、一度やってみた。
恥ずかしくて全力では出来なかった。
でも少し満足気な私であった。
斜め上に視線をやると、
真っ黒な防犯カメラがこちらを向いていた。
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