見出し画像

普通で変われない日常

僕は、ある1日を抜け出せない。
今日は9月6日。きっと明日も9月6日。昨日も9月6日だった。

残暑が残る中、2学期が始まって数日。高校生活は半年でもう慣れた。
半袖の白シャツと黒い長ズボンを履いて登校する。学校まではそれほど遠くはなく徒歩15分程度。よく見かける友達の集団や幼馴染のパーティーと距離を計りながら学校へ向かう。

教室の中では、ネクラと呼ばれるほど落ちぶれてはいないが、基本1人で生活をする。音楽を聴いていたいが、チャイムに気づかずに怒られることを防ぐため、仕方なくうるさい奴たちのくだらないラジオを聴きながら過ごす。

授業が始まれば一気にシーンとなる。真剣に受ける人。ノートに絵を描いている人。寝ている奴。統一感はないが、授業は普通に進んでゆく。
幸いなことに、前の席がラグビー部員でガタイが良く、後ろでノートを書く動作をしていれば、死角で何をしていても教師は授業を進めていく。
今日は、癖っ毛のあるクラスメイトを描いてみた。跳ねた髪がどうしても描けない。人を観察する習慣がないので、顔がどうなっているかも分からないが、オリジナルを出しつつ、たぶん描き切ることができた。

同じ日付でも、教科が毎回同じわけではない。周りが移動していたら理科。女子たちが退出して、残った男子が着替え始めたら体育。きっと、僕と同じような境遇の人がいるのだろう。教科を変える程度の力、もしくは、知らないところで出来事を変え、飽きが来ないようにしているのか。
…という空想に浸りながら周りに従ってゆく。可能である限り、勉強道具は全て置いているので、忘れる心配がない。

昼食は、同じ中学の友達が教室まで訪ねてくるので、それについて行く。食べる場所は、理科準備室がほとんど。先生から許可はもらっている。友達曰く、「静かで校庭が一望できる場所として選んだ。」とのこと。理科室に比べて広くはないが、それでいいとか。
たわいのない話をしながら、野球部の練習を見学する。僕は詳しくないのだが、監督のようにガヤをしている友達は見ていて面白い。そして、時間が過ぎていき、解散した後、午後の授業を受けに教室へ戻る。

普段通りに過ごして、何事もなく帰路に就く。人はまちまちで、途中から駅の方向や別の家路の人たちが消えていく。今日も1日が終わるんだな、としみじみと思う。本来なら、今日は金曜日。明日と明後日が休日だ。たとえ、今がループしていても休日は休むことにしている。だって、その日の記憶はみんなにとってその日しかないから。

家の中では、いつも通り食事をして、いつも通り過ごして寝る。これが1番だ。変わり映えのしない日常。平和であればそれでいい。ループしているならなおさら。1日を過ごせば、その日が安全だということも分かる。

ほかの干渉者に事を任せて僕は、また空想にふけるとしますかね。




お母さんとの散歩の途中で、毎日見かけている学生を見て問いかける。
「なんで、あのお兄さんはずっと寒そうな服を着ているの?」




アイディアが生まれた参考動画
https://youtu.be/KxCdInkG2ug

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,580件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?