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選ばれし2人になった日

平日の昼間に、買い物に行くのは少し怖い。

休職開始してから、もうすぐひと月になるが、
まだ、職場のことを考えると、心がキュッとなる。
身体って、正直だ。

夕飯の買い出しに、近所のスーパーへ向かう。
特に食べたいものはないから、無駄にウロウロしてしまう。
うーん今日は肉かな。
迷った挙句、今晩はホットプレートで焼くだけのプルコギにした。

レジで支払いを終えて、袋に詰めていると、
横に知らないおじさんが立っていた。
隣のおばちゃんに話しかけているのか、と思っていたが、
どうやら、わたしとおばちゃんに話しかけているらしい。
「卵はね、茶色じゃなくて白い卵でいいんだよ。」
おじさんは、目を輝かせて私たちに強く語り掛ける。
知らんがな。
私とおばちゃんは、「あ、へぇ。」苦笑いで相槌をうつ。
見た目北大路欣也のような、おじさんは私たちの様子にお構いなしで、
ワンマンショーを続ける。
「茶色い卵って、栄養価がありそうに思うだろう?
実際、値段も白い卵より高い。でもね、この色の違いっていうのは、
茶色い親から生まれたか、白い親から生まれたか、
その違いだけなんだ!」

欣也は、止まらない。
「僕はね、これをみんなに伝えたいと思っているんだ。
だから、毎日2人に伝えているんだよ。」
どうやらその2人に、私とおばちゃんは選ばれたらしい。
欣也は、無事にミッションをコンプリートすると、
嬉しそうに立ち去って行った。

平日の昼間に買い物に行くのは、やっぱり少し怖い。

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