◆例えば、松本清張「西郷札」(『松本清張短編全集01』光文社文庫,2008)を素材に、不定性・不定量な互酬関係がどこに張り巡らされていたのかを見ていくこと、さらには互酬関係や法律関係(本作ではそれほど表面化しないが)を切り裂くように走る情念の在り処と動きを読みとるのは興味深い。
◆ある集団の長のモットーが「GNP(義理、人情、プレゼント)」だと報道1930で知ったときには文字通り吹き出してしまった。部族社会原理を豊かに湛えた互酬関係に浸りきっていて、「第一級の民族誌的資料」を提供してくれている。集団の病理への無自覚が、クリティカルな証拠を堂々と晒す。
◆日曜劇場「アトムの童」(2022.11.13放送回)に、低質な信用が生む支配従属関係への暗転の典型をみる(差押・執行の点、デット・エクイティ・スワップの効力発生やその要件該当性など株式関係については??もあったが)。銀行支店長が「恩義」を言うあたりが互酬関係を象徴していた。