枷屋の主人は、病弱で放浪癖のある息子に 身代を任せるつもりはさらさらなかった だが、世間体を気にする男でもあった ハナブサは鼻が利く 枷屋の主人が息子の奇病に悩まされ、そのせいで、 意に沿わない女に入れ込んでいることを嗅ぎつけた 追い出しを掛けてる長屋にはその女「紗雪」がいた
枷(かせ)屋は呉服問屋の傍ら、地主でもあり 裏長屋をいくつか所有していた この時代、家主が直接住人を管理することはなく 差配人を介し、直接出向くことはなかった ゆえに住人を知る由もない だが、息子の異変には気づいており、 病の副産物として長屋に住み着いた女に難色を示していた