ある作家が某社でうまく行かず担当がつかなくなって、ウチに持ち込んで来た。素晴らしい熱量の原稿だったが、直すべきところがたくさんあった。それを伝えると、 「私は絶対に直さない。そのまま出す版元とだけ付き合う」 と言った。 私は、 「残念です」 と言って席を立った。
世代交代は難しい。編集者が60歳に近づくと、作家に次の担当を引き合わせてバトンをつなぐのだが、人見知りの作家などは、新しい若手編集者をなかなか受け入れられず、無理無体な理由で、「前の〇〇さんに戻してくれ」と怒ってしまうことがままある。社としては長く付き合いたいから変更するのに。
とある作家が言った。 「僕はいくら年下の編集者でもその編集者が35歳になったら、同格の人として対峙する。場合によっては尊敬さえする」