エモとロジのバランス

セールスやフロントマンをやっていると、どうしても考えてしまうのが、営業の場面におけるパーソナリティとロジックのバランスというやつです。「○○さんがそう言うなら検討するよ」とお客さまに言っていただいたとして。それは営業冥利には尽きるものの、お客さまがきちんとした思考プロセスを経てその結論に至ったのかどうか。少なくともハセガワはとても不安になります。

これを、自分の中では「エモとロジの配分」と呼んでいます。商品やサービスに自信がない場合、得てして【エモ(営業の人間性やキャラ)】過多の営業活動になりがちです。

対して商品・サービスが時勢やお客さまのニーズに適っている場合、自ずと【ロジ(客観性の高い商材説明)】の割合が高くなります。


要は意識できるかどうか

(個人的な)結論から申し上げると、この配分が絶妙な人は結果を出している。20年近くフロントセールスに携わってきて、断言できる数少ない法則の一つかもしれません。

エモの配分が多くなり過ぎると、商材やサービスに対するカスタマーの理解度が総じて低くなります。したがって「使いこなせない」「よくわからない」という状態に陥りやすくなります。当時の営業担当者が在籍しているうちは【エモ≒マンパワー】で解約を塞き止めることもできます。ただ、その担当者がいなくなれば、あっという間にお客さまはその企業から離脱していきます。

良くも悪くも【営業担当者を買っている】訳ですから、無理もありません。

対してロジの配分が多い場合。お客さまのリテラシーは非常に高いので、恐らく色々と勉強して使いこなしてくれるはずです。満足いただいてるうちは問題ありません。

ただ、エモーショナルな繋がりはないため、安価で同内容の商材・サービスが現れたときには、ほぼ為す術がありません。

要は購入や導入を勧める時点で「エモとロジの割合を意識して話しているかどうか」が、後になってじわじわと効いてくるということです。


ロジ型が多くなってきた…?

仕事で色々な商材やサービスの営業を受けることも多いのですが、最近感じるのは【ロジ過多型】が増えたな、ということです。

機能やパフォーマンスに自信があるのはすごくロジカルに伝わってきます。ただ、サブスク型のサービス、SaaSなど、継続的に使用してもらってなんぼの商材が増えた現在。余り【ロジ型】に寄りすぎると、機能差を理由とした途中解約の際に、本当に為す術がなくなるよな…なんてことを考えたりします。

訪問して対面営業をする場面が減ってきていることで、よりその傾向が強まっていくと予想されますが…。営業からエモを感じることがずいぶんと減りました。

決してプッシュやクロージングの強さをエモーショナルと呼んでいる訳ではなく、相手(クライアント)を突き動かすようなストーリー、コンテクストを持っているかどうか、がエモの核心部分だと思っています。

もちろん相手によって、5:5が良い場合もあれば、3:7がハマる場合もある。大切なのは、この配分を客観視してスキルとして使えるようになっているか、に尽きます。

商材の別なく、若手のセールスの方とお話をしていて思うのは、パーソナリティを配合する手法そのものを指導、訓練される場がないんだろうな、と感じます。ロジックで話を進めていくためのスクリプトがあり、話し方のトレーニングをたくさんされていることはとても伝わってきます。リモートが進むことで『これからの営業はその方がいい』という流れも十分理解しています。

でも【エモ】がゼロではやっぱりフロントセールスって成り立たないと思うんですね。いつかセールスそのものがAIに置き換わる時代が来たとしても、唯一置換できないのはパーソナリティの部分です。【ロジ型】が時流となり、クライアント側がそれを求めている。ということは【ロジ型】を強化するためのツールやMAの技術開発はどんどん進んでいくでしょう。ゆえに、代替のきかない“人間”に求められているのは【エモ型】のブラッシュアップなんだと個人的には思っています。


コンテクストこそ武器

自分のパーソナリティを含有したセールスを【エモ型】と(勝手に)称していますが、別に好きな食べ物を言うとか、「私こういう人間じゃないですかー」といった謎の自己プッシュをしましょうということではありません。

前述の通り【エモ型】とは、具体的にはコンテクスト(=文脈)やストーリーの強さだと考えています。セールス担当者はそこにこそ最大集中して感情や意思を込めていくべきです。そのサービスや商品はどのような意図で開発され、なぜそれをあなたに勧めようと思ったか、そしてその担当がなぜ自分であったか。それを使うことであなたにどうなって欲しいのか。

このあたりのコンテクストにキモチを乗せられることが【エモ】の可視化だとハセガワは考えています。口先だけではそれは透けて見えますし、嘘臭さが混じれば途端に相手のキモチは離れていきます。だからこそ、普段から意識して、失敗をして、訓練を重ねて使いこなせるようになっておく必要があるんです。もし、これから先営業職を志す方(もしくは、現在営業職に就いている方)に読んでいただけているとして。ぜひ覚えておいていただきたいこと。【ロジ型】営業は後からいくらでも構築することができます。ただし、【エモ型】は一朝一夕ではできません(時折天性でできる人もいますが、それはセンスの部類です)。したがって、セールス担当として他者との差別化を図り、固有の武器を持ちたいのなら【エモ型】営業を訓練しておくべきです。この訓練が必ず1年後には「ツールとスクリプト」のみに頼っている営業担当者との差を生み出すことになるはずです。

今回はだいぶニッチな話題となってしまいましたが、リモートでの営業を受けることが急増しまして、最近すごく感じていたことをまとめてみました。


追記

ハセガワ偉そうに書いておりますが、全く営業センスには恵まれておりません。ゆえに、思考して悩んでやってきた結果「書く」ことができます。たぶん、センスでやってのけられる方は、それを第三者に言語化できないと思うんですね。そんな視点からnoteに書いておこうと思いました。

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