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#23 夜が明ける

西加奈子さんの小説「夜が明ける」を読んだ。あらすじは、割愛するが、かなり心に刺さるものがあった。内省もしたし、もっと自分を許してあげてもいいんだとも思った。

テーマは、大きく分けると社会問題と自己責任論なのだと思う。ただ、それだけでなく、人との関わり合いを作る上で、「自分が選んだ」わけでもないどうしようもない環境で形成された人格を無視してはいけないというような実は、自分たちの日常生活に溢れてる現代の影の部分も書かれているように感じた。

僕たち”ゆとり世代”と括られてきた人は、特徴として「人に迷惑をかけるな」と教えられてきた世代でもある。(小中学校時代がちょうど就職氷河期やリーマンショックだったのでなんとなく社会が悲壮感に覆われていたと僕は推測している)とにかく人と違うことをすると人格を否定され、吊るし上げられ怒られてきた。そして幾度となく「人に迷惑をかけるな」と親にも先生にも言われてきた。

そんなことなので、もうデフォルトとして「人に頼る」ということが最初から選択肢になかったりする。まず、考えるのが、「どうやったら怒られないだろうか」「どうやったら迷惑をかけずに済むのだろうか」この二択になることが多い。とちょっと前に気づいた。

そしてそれを他人に押し付けてもいることにも気づいた時には、結構自分にがっかりした。「まず自分でどうにかしろよ」「自分で考えてみろよ」と思ってしまうことは多い。

そして大体のことは、自己責任だともかなり思い込んでいた。前の投稿でも書いたけど、本当にすべては自己責任だと思い込んでいた。そうではないと頭では分かっているが、今でも脊髄反射的に「自分のせい」と思い込んでいる。この「自己責任どこまでなの問題」はかれこれ1年くらいずっと悩んでいる。「本当の優しさってなんなの問題」も2~3年前に悩んでたけど、いまは、自己責任のほうがマイインサイドヘッドブームだ。

この「夜が明ける」を読んで、”自己責任と当然の権利”がいい感じに攻防しているから難しいんだなと思った。ストロングスタイルの人は、言う。 

「結局、自分が決めたんだろ?」

でもその意思決定までのプロセスにどうしようもない状況に陥ってしまっていなかったのか。選ぶのがこれしかできなかったのではないか。
そこの想像を忘れてないか。

人間関係は厄介だ。その想像もしてあげなきゃだし、かといってその想像を押し付けちゃだめだし、本人に話を聞いてみなきゃわからないし・・・
そうなってくると関わる人の人生を一緒に振り返ってあげないとか。いやそこまでは行き過ぎ??

文中にもあった「私たちは、いつまでかわいそうと思われる側なのか」という言葉にもグサッとさせられた。優しくする側がされる側を無意識に傷つけていることもある。それこそ優しさってなんだって話だ。

だからと言って、「当然の権利」を振りかざし、自分以外の人間を自己責任だと思わせる人もいるから余計にややこしい。「私は、弱い側の人間です。だから守ってください。」と最初から思っている人にどうしても優しくできない自分がいる。「守られる」は当然の権利なのか。
努力でどうにもならない部分をなんとかしようとしている人に助けの手を差し伸べるのは、理解できる。でもその努力もせずに、助けを求めてくる人にどう接すればいいのだろうか。

「努力しろよ」と「それはしょうがない」のせめぎ合い。
押しつけでもなく、無関心でもなく。

お互いを思い合う気持ちが大切なのは、わかる。助け合わないきゃいけないことも分かる。でもこの「~合う」のは、対等に近い立場や状況に成立することじゃないだろうか。いや、そうでもないのかな。わからないな。
一つの関係性だけで見てるからそう思ってしまうのか。

違う分人がでは、助けられ、他の分人で助ける。そうやって人との繋がりができてくるのかな。

「助けを求める権利」は誰にでもある。
「助ける義務」も誰にでもある。のか??

自己責任といえる人は、自分の責任を負える状況にあるから言えることであって、自分の責任を負える状況にそもそもない人は、生きるという当然の権利を使っていいのだ。

最初から戦闘態勢に入るのは、楽なのだ。目的がはっきりしているから。でもそんな盾は必要ない。助けを求めることは、恥ずかしくもみっとなくない。

自分の気持ちを出さずに、いい人を演じて、体の中に「影」をためていると不健康なのだ。悪いことは、ちゃんと悪いと声を上げる。戦うのではなく、抗い続ける。という文章を読んで、自分も声をあげることによってめんどくさいと思われてしまうかなと思い込んでいたと気づいた。

ああ・・・。
この「夜が明ける」を読んで、いま、思ったことをすぐ書き起こせば、このマイ悩みブームの答えがでるかなと思ったけど、全然出ないや。(笑)

でも一つだけ分かったことがある。西さんの本を読むといつも思う。

「傷ついても生き続けていく素晴らしさ」

若林さんの「ナナメの夕暮れ」は自分のバイブルだけど、
この西さんの「夜が明ける」と朝井リョウさんの「正欲」は
人生の課題図書になった。

夜明けどころかまだ夕暮れまでも終わってないんじゃねーか、俺は。

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