一人暮らしの高齢者は住居が借りにくい -住宅セーフティネット制度について-
増える一人暮らしの高齢者
国立社会保障・人口問題研究所が発表した2024年推計の「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、「単独世帯」は、2050年には2,330万世帯、そのうち65歳以上が1,084万世帯になると推計されています。
一人暮らしの高齢者が今後も増え続けるという推計ですが、一人暮らしの高齢者は賃貸住宅を借りにくいという社会課題が注目されています。孤独死や家賃滞納などの懸念から賃貸住宅への入居を所有者から拒まれたり、家賃保証業者の審査に通りにくい現状があります。
今回は、高齢者の住居に関する国の施策について見ていきたいと思います。
住宅セーフティネット制度
高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方々は住宅確保要配慮者と位置付けられますが、国はこれらの方々に対し住宅セーフティネット制度として主に次の5つの支援を進めています。
セーフティネット登録住宅の登録制度
登録住宅の改修や入居者へ
経済的な支援
居住支援法人について
家賃債務保証業者について
セーフティネット登録住宅の登録制度
セーフティネット登録住宅は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅で、そのほとんどが共同住宅です。住宅確保要配慮者の数は増え続けることが予想されますが、そもそもセーフティネットの根幹とされる公営住宅の増加は見込めない上に登録住宅に対する需要に対して供給が追いついていない現状となっており、今後の支援拡充が望まれています。
一方で、空き家をセーフティネット住宅として登録することが推奨されており、空き家問題の解決策として期待されています。
登録住宅の改修
セーフティネット登録住宅について次のような改修が補助されます。
地方自治体を通じた補助では国1/3と地方自治体から1/3が補助されます。
入居者への経済的な支援
登録住宅の入居者への経済的支援としては、家賃と家賃債務保証料等の低廉化及びセーフティネット登録住宅への住替えに対する補助があります。補助率は次のようになっています。
居住支援法人について
居住支援法人はNPOなどが担い、住宅セーフティネット法に基づいて都道府県から指定され、次のような業務を行います。
①登録住宅の入居者への家賃債務保証
②住宅相談など賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談
③見守りなど要配慮者への生活支援
④①~③に附帯する業務
居住支援法人はその業務に対して国から補助を受けることができます。
2024年2月21日付け日経電子版の記事「単身高齢者、住宅借りやすく 家賃保証業者を国が認定」によれば、今回の法改正により居住支援法人の機能も高められ、債務保証や相談業務に加えて、入居者から委託を受ければ死亡後の不用品など残置物を処分できるようになるとのことです。
家賃債務保証業者について
2024年2月21日付け日経電子版の記事「単身高齢者、住宅借りやすく 家賃保証業者を国が認定」によれば、「家賃滞納が生じた場合などに、一定範囲で立て替える家賃保証業者を国が認定する制度を創設する」とあります。
新たな認定制度では、
・原則として要配慮者の保証を引き受ける
・緊急連絡先を親族など「個人」に限定しないことを認定条件にする
・国がお墨付きを与える
ことで、入居者が安心して使えるようになりそうです。
最後に
一人暮らしの高齢者は、今後も増え続ける見込みです。見てきたように国の施策にはさまざまなものがありますが、民間や地域の協力なくしてこれらの取り組みはうまくいかないと考えられます。
例えば、高齢者専用や高齢者も参加できるシェアハウスなど民間でも高齢者住宅の課題解決に向けて取り組みが進んでいます。今後はこれらの動きについても見ていきたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?