長谷川 剛

社会福祉士|株式会社ベルアージュとホリスケアアカデミーの代表を務めています。事業内容は…

長谷川 剛

社会福祉士|株式会社ベルアージュとホリスケアアカデミーの代表を務めています。事業内容は、放課後等デイサービス、児童発達支援、保育所等訪問支援、就労継続支援B型、生活介護事業所、介護福祉と介護美容、エステティックの資格取得スクールなどです。

最近の記事

当事者と支援者の認識のズレ -不登校の要因に関する児童と保護者、教員の認識調査から-

2024年3月25日の日経新聞電子版の記事「不登校の要因、認識にずれ 子ども・教員など調査」によると、文部科学省の委託調査の結果、不登校の児童生徒、保護者、そして教員間で不登校の原因についての認識に大きなズレが存在していることが明らかになっています。この調査は、大阪府吹田市、広島県府中市、宮崎県延岡市、山梨県で行われ、22年度に小学3年生から高校1年生までの不登校の児童生徒239人を対象に実施されました。 調査結果の詳細 調査によると、児童生徒や保護者は「いじめ被害」や

    • 日本初のフリースクール支援制度 -不登校の子どもたちに新しい学びの場を-

      2024年4月1日の日経新聞電子版に、「フリースクールに認証制度 長野県、質の向上へ全国初」という記事が掲載されていました。この記事の内容をご紹介したいと思います。 不登校問題の現状と新たな動き 長野県では、不登校の子どもたちの数が増加している問題に対処するため、2023年度から全国で初めて「信州型フリースクール認証制度」を導入しました。この制度は、特定の基準を満たす民間の学習支援施設を公式に認証し、必要な支援を行うことを目的としています。 制度の理念と具体的な支援内

      • アートとケア -広がる社会的処方と課題-

        広がる社会的処方 社会的処方という言葉をお聞きになったことがありますか。内閣府の骨太方針2020では次のように説明されています。 本文に社会的処方という文言が登場しませんが、上記の文章の脚注に「いわゆる社会的処方の取組」とされています。 社会的処方は骨太方針2021以降も引き続き登場し、2023では次のように孤立・孤独対策として本文に明記されています。 社会的処方は孤立・孤独対策に留まるものではありません。最近では、医師や専門家たちが、薬の処方と同じようにアート体験

        • 介護人材不足への挑戦と創意工夫 -中四国地方自治体の取り組み-

          厚労省の推計では、2040年には280万人の介護人材が必要とされていますが、2021年の推計では約70万人が不足することが報告されていました。 最近では、2024年3月22日の厚労省の有識者検討会で、今まで認められいなかった在留資格「特定技能」の外国人材も訪問介護サービスに従事できるようになる方針が固まったり、他業種の賃金上昇に合わせて介護職員の処遇改善の方策が決定するなど介護人材の確保に向けてさまざまな取り組みがなされています。 今回は、2024年3月30日付日本経済

        当事者と支援者の認識のズレ -不登校の要因に関する児童と保護者、教員の認識調査から-

          人材マネジメント -放課後デイ運営会社の新たな取り組み-

          人材育成/人材開発方針人間力を基盤として、R1からR3等級までは基本的な支援力・連携力・運営力を総合的に備える人材を育成し、MSE等級では支援・連携・運営それぞれの専門性を高める人材を開発します。 人間力…感謝と尊重、謙虚さと誠実さ、優しさと熱意(経営理念より) 支援力…子どもたちの発達支援や利用者さんの就労生活を支援する力/事業管理部門は現場を支援する力 連携力…同僚、チーム、プロジェクト、地域と協働する力/事業管理部門は他部門、他社、社会資源と共創 運営力…現場

          人材マネジメント -放課後デイ運営会社の新たな取り組み-

          健康経営優良法人 -放課後デイ運営会社が健康経営を進める意味-

          健康経営優良法人の認定にトライ 当社は数年前から健康経営優良法人の認定を目指していましたが、定期検診受診率100%やストレスチェックの実施などの取り組みが整備できず、認定に至っていませんでした。 昨年度はようやく不足点を整備できたので申請したところ、「健康経営優良法人 2024(中小規模法人部門)」として認定を受けることができました。 健康経営優良法人とは? 健康経営優良法人認定制度は、経済産業省のサイトによれば、次のように説明されています。 健康経営優良法人の認

          健康経営優良法人 -放課後デイ運営会社が健康経営を進める意味-

          雑記

          スタッフは皆、とても頑張っている。 日々、ほんとうにいろいろな問題が起こるし、不安や葛藤や人間づきあいでうまくいかないこともあると思う。 目の前の子どもや利用者さんと接することに一所懸命だし、突然の行動に対応したり、そもそも何より幸せを願っている。 でも、どんなに目の前のことにうまく対応し切っても、どんなに素晴らしいリカバリーをしても、どんなに汗をかいて頑張っても、どんなに切れ味鋭い解決をしても、報酬が伴わなければ長続きしない。素晴らしいプロセスがきちんと国から算定され

          発達支援におけるチェックリストの役割 -支援者はチェックリストに縛られているのか-

          市民の人権擁護の会日本支部代表世話役の米田倫康という方が、雑誌「致知」に「子供たちの心と体をいかに守るか」と題して寄稿されています(致知2024年2月号)。 米田氏は、発達障害の過剰診断や、不適切な医療介入による子どもたちの生活への影響を問題視しています。また、教育現場でのチェックリストに基づく診断の広がりや、医療機関の乱立への懸念を通して、精神医療における人間の尊厳や、子供たちの個性を重んじる視点の大切さを強調されています。 記事を読んで、私たちがいかにチェックリストの

          発達支援におけるチェックリストの役割 -支援者はチェックリストに縛られているのか-

          ワーク・エンゲージメントを高める

          日本経済新聞の「やさしい経済学」というコーナーに、慶応義塾大学教授 島津明人先生がエンゲージメントについて寄稿されていました(日経電子版2024年2月19日〜2024年2月29日)。 エンゲージメントの向上は当社でも取り組んでいる課題ですが、その目的や課題が従業員の皆さんに浸透しているかは疑問の残るところです。新聞などで頻繁に登場する「エンゲージメント」「健康経営」「ウェルビーイング」「心理的安全性」「働き方改革」などはすべて根っこでつながっている感じがしますが、それらが

          ワーク・エンゲージメントを高める

          センサリールームから広がる可能性 -サッカー観戦だけじゃない、美容院にも?-

          エディオンピースウィング広島にセンサリールームが常設 今年から広島のプロサッカーチーム・サンフレッチェ広島のホームグランドとなったエディオンピースウィング広島の会議室でミーティングがあったので、フィールドなどを見学することができました(残念ながら試合当日ではありませんでしたが)。 センサリールームとは エディオンピースウィング広島には、聴覚や視覚などの感覚過敏の子どもたちのためのセンサリールームが常設されています。 今回は残念ながら、実際にセンサリールームを見ること

          センサリールームから広がる可能性 -サッカー観戦だけじゃない、美容院にも?-

          一人ひとりが就労し、納税し、社会参画する -社会課題の解決に-

          生産年齢人口を増加させることは社会課題 日本経済の没落、失われた30年などと言われてもう何年も経ちます。そのような中、日本経済の復興には、生産年齢人口=「労働力」の増加が欠かせず、その鍵は女性や高齢者、外国人や障害者の就労だと言われています。 発達支援・就労生活支援を行う私たちは特に、障害者の就労には重点をおいて取り組んでいきたいと思います。それが社会課題の解決につながります。 個を共にみる未来支援 私たちは、「個を共にみる未来支援」という理念を掲げ、「個をみる発達

          一人ひとりが就労し、納税し、社会参画する -社会課題の解決に-

          2024年報酬改定について -放課後デイ-

          2024年4月からの報酬改定の内容が固まりました。放課後等デイサービスを取り巻く加算などについて改定内容を書き留めておこうと思います。 児童指導員等加配加算の変更 児童指導員等加配加算について、配置形態(常勤・非常勤等)や経験年数に応じて報酬単価が変動する建て付けになりました。現行では理学療法士等を配置することで187単位/日でしたが、常勤専従・経験5年以上の児童指導員を配置することで187単位/日となっています。 専門的支援加算・特別支援加算の変更 専門的支援加算

          2024年報酬改定について -放課後デイ-

          52歳の死生観 -緩和ケアに携わる医師の言葉をもとに-

          死生観に関して感銘を受けた記事を二つご紹介します。帯津三敬病院名誉院長の帯津良一先生がめぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊先生と対談したときの記事と、社会医療法人石川記念会HITO病院緩和ケア内科部長の大坂巌先生の記事です。 私は現在、52歳ですが、現時点での死生観を書き留めておこうと思います。 死は命の終わりではなく命のプロセスの一つ? 帯津先生は、免疫学の多田富雄先生が「自然界は場の階層から成る。素粒子から虚空(こくう)までの階層を成している」と述べていることを引用

          52歳の死生観 -緩和ケアに携わる医師の言葉をもとに-

          介護クライシスを回避するために -介護福祉経営者は何をすべきか-

          2023年11 月28 日の日本経済新聞にて、「介護保険開始以来増え続けてきた介護職員数が減少に転じたと見られる」との報道がありました。2022 年に介護業界からの離職者が入職者を63,000 人上回ったようです。 高齢化が進む日本では介護サービスの需要は増す一方で、2040 年には約280 万人が必要と言われます。減少が続くとなると、いわゆるケアを受けることのできない人が続出し、親の介護のために離職しなければならない現役世代が増えるという、いわゆる「介護クライシス」が訪れ

          介護クライシスを回避するために -介護福祉経営者は何をすべきか-

          発達支援の研究教育センター開設に向けて

          私たちは、中期経営計画の中で、将来「社内に発達支援の研究所」をつくることを目指しています。命名するとすれば「研究教育センター」といえるでしょうか。そこでの活動として、次のようなことを想定しています。 大学や研究機関と発達支援について共同研究する。 支援の体験や記録、科学的な検証を行なって書籍や論文で発表する。 研究論文や書籍を通じて支援アプローチを世の中に提案する。 社内や地域の支援者、保護者を教育する。 有識者を集めてフォーラムや勉強会を行い知見をシェアする。

          発達支援の研究教育センター開設に向けて

          生活困窮者の支援制度について -子どもの学習機会にも活用できる-

          生活困窮者の支援制度 私たちの放課後等デイサービスに来てくださる子どもたちのご家庭には、生活に困っている方々が少なくありません。また、障害を抱えている、または、生活することに障害を感じている人の生活保護率が高いという調査結果もあります。 生活に窮している人や家庭に対して国が支援する制度といえば、まず思い浮かぶのが生活保護です。しかし、生活保護を受ける前の段階の支援があります。2015年に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度です。仕事を失った人に対する家賃に相当

          生活困窮者の支援制度について -子どもの学習機会にも活用できる-