見出し画像

アニマルセラピーの広がりとその効果

近年、介護施設や医療機関で動物と触れ合う「アニマルセラピー」が注目を集めています。このセラピーは認知症予防や治療意欲の向上に寄与すると期待され、生活に変化をもたらすことが報告されています。

今回は、2024年7月27日日経新聞電子版に掲載されていた記事「アニマルセラピーに光明 認知機能・治療意欲の改善期待(三宅亮、結城立浩)」から、千葉県佐倉市の特別養護老人ホーム「ときわの杜」の事例を中心に、アニマルセラピーの現状とその効果についてご紹介します。

「ときわの杜」でのアニマルセラピー

「ときわの杜」では、毎月1回、日本動物病院協会(東京・中央)の協力のもと、トイプードルやチワワなど6頭のセラピー犬が訪問します。入居者は犬と触れ合い、心の安らぎとリフレッシュを感じる時間を過ごしています。97歳の入居者は「ワンちゃんのかわいい姿を見ると頭が活発になる」と笑顔を見せ、アニマルセラピーが日常生活に良い影響を与えていることが伺えます。

全国的な広がりと課題

日本動物病院協会は1986年からアニマルセラピーを実施しており、2019年度には全国の高齢者施設を1000回近く訪問しました。しかし、新型コロナウイルスの影響で2023年度の訪問件数は最盛期の3割に減少。需要に対して供給が追いつかない状況が続いています。

動物との触れ合いがもたらす効果

東京農業大学の内山秀彦教授は、猫との触れ合いが人間の脳に与える影響を調査し、猫が前頭前野を刺激する結果を得ました。猫の行動が予測できないため、人間はどう対応するかを考えることで脳が活性化し、認知症予防につながる可能性が示唆されています。

医療現場での活用事例

静岡県立こども病院は、日本で初めて医療スタッフとして働く「ファシリティドッグ」を導入。ハンドラーと呼ばれる看護師が訓練を担当し、入院患者の病室を一緒に回り、手術や処置中に子どもの不安やストレスを軽減しています。関西大学などの調査では、終末期の緩和ケアに関わった職員の7割がアニマルセラピーの効果を感じ、患者が治療に前向きになったと報告しています。

犯罪被害者支援や教育分野での活用

愛媛県警は、犯罪被害者を支援するためにセラピー犬を導入。カウンセリングを負担に感じる人々が、犬と触れ合うことで安らぎを得ています。また、発語に課題を抱える子どもの読み聞かせ相手として「読書介助犬」が導入されており、子どもたちが気兼ねなく本を読むことで自己肯定感を高めています。

おわりに

アニマルセラピーの効果をさらに広めるためには、専用犬やハンドラーの育成費用の確保が課題のようです。また、患者のストレスに関するホルモンの計測など、医学的な検証を進めることが重要です。今後もアニマルセラピーの普及と効果の実証が進むことを期待しています。

アニマルセラピーは、認知症予防や治療意欲の向上に寄与するだけでなく、人々の心に安らぎとリフレッシュをもたらす素晴らしい取り組みです。その効果をさらに広め、多くの人々に笑顔を届けるための努力が続けられています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?