クリエイティブリーダーシップ特論:第12回 上町達也氏

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第12回(2020年8月3日)では、上町 達也さんから「ものづくり(Kogei×Design)」についてお話を伺いました。

上町達也氏について

 上町達也さんは金沢美術工芸大学卒業後、「ニコン」のデザイン部を経て、上町達也さん・柳井友一さん・宮田人司さんの3名が中心となり活動するアーティスト集団、「secca inc.(株式会社雪花)」を設立した。また、2016年より、楽器職人の北出斎太郎も参画している。金沢を拠点に活動している。先端3Dデジタル技術を基盤に、漆塗り等の伝統技術を掛け合わせた独自のものづくりを展開している。

seccaとは...

 seccaは2013年に金沢に設立され、食と工芸の街である金沢を拠点に、さまざまな視点からそれぞれの長所を活かし、ものづくりをするクリエイター集団である。そして、「新しいカタチを創造し、体験を進化させ、手にした人の心を動かす。」ことを目指している。主なメンバーは、代表兼デザイナーを務める上町達也さん、陶芸家兼デザイナーの柳井友一さん、そして全体のマネジメントを担当する宮田人司さんである。メンバーに共通することの一つとして、全員、県外からの移住者をあげられる。
http://secca.co.jp/story

 seccaの主な活動は3つあり、一つ目が作品づくり(メーカーのR&Dの位置づけ)、二つ目が料理人との食器づくり、そして、三つ目が楽器づくりである。

KOGEIとは...

 上町さんによると、「Skill(技能)」とは「Experience(それを扱う人の経験)」と「Sensitivity(センス)」で構成されている、Skill = Experience × Sesitivity、とのことである。
 そして、「Skill(技能)」をそのまま引き継ぎ、「Contemporary thought(いまの視点)」「Newest technology(いまの技術)」を掛け合わせて、いまもとめられる「New SKill(技能)」にアップデートする。それを繰り返すことで、私達日本人のアイデンティティーを引き継いでいける、とのことである。この思考が「Design」である。
 さらに、「Kogei(工芸)」とは、「Skill(技能)」と「Material(素材)」の組み合わせであり、Kogei= Skill × Material、とのことである。
 seccaでは、「Kogei(工芸)」を「Design」という視点で造形することで何かできることがあるのではないか、ということに取り組んでいる。

「と、」とは...

 seccaでは、「と、」という考え方を大切にしている、とのことである。ヒト、文化、素材など、と掛け合わせることで、本当に価値のあるものを生み出していくことを目指しているのである。

授業にて特に印象深いことは...

 上町さんの言葉で特に印象的であったのが、「得意なこと得意でないことを認めて、アイデンティティーを研ぎ澄ます。そして、自分の得意なこと以外を削ぎ落し、得意なこと(価値を生めるところ)に注力すると、自然と他の人から喜んでもらえるようになる。そうするとビジネスとして成り立つようになる。ビジネスに固執せず(上町さんは考えていないくらいであった)、諦めずに続けることが大事なのではないか。」、というものである。上町さんは、食の価値・大事さを器づくりを通じて伝えたいと、農業、レストラン、など様々なことに取り組み、結果、資金をショートさせた、とのことである。その時も含め、数多くの人に助けられ、そして、自分が価値を生めることに注力することで、現在にたどり着いたのである。授業では、seccaの数多くの作品紹介があり、私として、惹きつけられる作品ばかりであった。日頃、頭でっかちな世界に浸る私にとり、つくり手が価値を追求する姿勢はとても刺激的であり、その価値に共鳴することにおいて、固定観念に凝り固まる先入観を手放す大事さを学んだ。



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