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クリエイティブリーダーシップ特論:2021年第12回 大山貴子氏

この記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコースの授業である、クリエイティブリーダシップ特論の内容をまとめたものです。
 第12回(2021年9月27日)では、大山 貴子さんから「共視デザイン」についてお話を伺いました。

大山貴子さんについて

 大山さんは1987年仙台生まれであり、ボストンのSuffolk大にてゲリラ農村留学やウガンダの人道支援&平和構築を経験し、その後、ニューヨークにて新聞社、EdTechでの海外戦略、編集&ライティング業を経て、帰国する。ニューヨークにいた際、いまの活動に通じるPark Slope Food CoopやCommunity Gardenを知る。日本における食の安全や環境面での取組みの必要性を感じ、100BANCH入居プロジェクトとしてフードロスを考える各種企画やワークショップ開発を実施後、株式会社fogを創設した。人間が自然の一部として暮らす循環型社会の実現を目指しており、プロセス設計、持続可能な食、行動分析、コミュニティ開発を実践している。主な活動としてfog社と拠点「élab」である。直近は、島根県雲南市にてローカルマニフェスト制作などの活動をしている。

fog社の活動とは…

 fog社は自然と社会とコミュニティの循環と再生を耕すデザインファームであり、循環型社会の実現に向けた変革コンサルティングを手がけている。

 fog社の活動の一つが、島根県雲南市にてローカルマニフェスト制作である。「うんなんローカルマニフェスト」は、環境省の地域循環共生圏プラットフォーム構築事業にて、雲南の住民の本音に基づき、雲南で暮らす全ての人達が大切にしたい価値観を行動指針として取りまとめたものである。

 大山さんによると、市民のための活動というものは数多くあるが、現実は、一部の人しか対象になっていない、参加したとしても前に出て話せない、など声の大きい人の声しか反映されていないという実態がある。そこで、fog社は、社員が現地に住み、現地の人との対話を通じて、それぞれの理解を深めてローカルマニフェストを制作したとのことである。その際、大切にしたのが、「共視」である。

共視デザインとは…

 大山さんが目指している循環型社会の創造では人を起点としている。サーキュラーエコノミーの実現のためには、全体を見渡す必要があり、ステークホルダー分析やパーパスの特定など多角的な変革が必要である。そしてそれを突き動かす人の意識改革が必要なのである。だからこそ、現場に溶け込み、ステークホルダーと目線を合わせ、共に目線をつくることが大切であり、そして、循環型社会を一緒に創るのである。これが「共視デザイン」である。

実践の場であるélabとは…

 fog社では循環する日常を選び実践する拠点「élab」に取り組んでいる。この拠点には、「レストラン」「ティー&フードスタンド」「マテリアルラボ」の3つのエリアがあり、日々の暮らしに取り入れることが可能な循環のアイデアや体験を提供することを目的としている。そして、社会課題を他人事と捉えるのではなく、日常を通して実感し、自分達の暮らしの中に取り入れいていくことで循環型社会を実現させることを目指している。

大切な4つのことは…

 大山さんは以下の4つの観点を大切にしているとのことである。

・多角的に対象をみる:目にする情報だけではなく真理、背景を意識する
・境界線を曖昧にする:自らの行動を制限せず、稼働範囲を広げる
・脱サステナブル:言葉先行ではなく、本当に目指すべきゴールを見据え実践する
・巻き込むために甘える・依存する:共感共視の輪をつくる

 大山さんによるとモノだけではなく、4つの観点にて人が加わり、息吹をモノに与えることで、様々な関係性が変化するとのことである。その話を伺い、私は、土台にあるのは、思考停止せずに自分のこととして関心を持つ、ということだろうと思いました。どんな些細なことでも良いので関心を持ち、行動してみることで周りが変わり、循環型社会へと繋がるのだろうと思った。

授業にて特に印象深いことは...

 大山さんの話を伺い、特に「巻き込むために甘える・依存し、共感共視の輪をつくる」というのが印象的であった。結局、人は一人では何もできず、だからこそ、目線を調整して、他の人のことを思いやり、持ちつ持たれつの関係を大切にする必要があるのだと思った。現場に溶け込む、ということはそう簡単ではないこともあり、大山さんがどのような工夫しているか伺ったところ、長めの時間軸で未来を考えてみるなど、意識の拡張や引き伸ばしを促し、そして、何よりも肩書きなどをとっぱらった対話を大事にしている、とのことであった。私も大山さんの活動を見習い、共感共視の輪を生み出し、広げていきたいと思う。

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