見出し画像

離床における循環状態のフィジカルアセスメント

離床をするときは、その人の状態をしっかり把握できていなければ、安全な離床を実現できません。

循環状態のフィジカルアセスメントはその要因の一つです。

循環状態を把握せずに離床をすると生命が危険な状態に陥る可能性もあります。

安全な離床を進めるために、循環状態のフィジカルアセスメントについて学習していきましょう!


循環機能とは?

循環機能は、血液を全身各臓器の要求に応じて循環させる機能です。

以下の3つに分けられます。

①心臓
血液を拍出するポンプ機能

②血管
抵抗と容量調節を行い、血液配分と心臓への還流量調節

③循環血液量
循環器系のシステム内に血液を重填させ、有効なシステム内圧を維持


循環状態が安定している状態

さまざまな心機能データが安定していれば、循環状態が安定しているといえます。

しかし、一般の病棟ですべての器材が揃っていることは少ないです。

臨床では以下の指標を確認して離床すべきか判断します。

・脈拍、血圧の日内変動が少ない
・脈拍、血圧が体位変換しても大きく変化しない
・不整脈がコントロールされている


循環機能が低下した状態

循環機能を正常に作動させるためには、心臓・血管・循環血液量の連携とバランスが非常に大切です。

連携とバランスが崩れると循環機能が低下し、生命が危険な状態になります。

以下は、循環機能が低下することによって生じる状態です。


心原性ショック

心筋収縮性の低下により、心臓が十分な血液を送り出すことができなくなり起こる病態です。

細胞が低酸素症を起こし、細胞代謝が障害されるため、適切な治療を早期に行わなければ、重篤な状態に陥ります。

ショック時に現れる特徴的な症状は、

顔面蒼白、虚脱、脈が触れない、冷汗、呼吸障害などです。

ショック時の診断で大切なことは、末梢循環不全の所見です。

心拍出量が減少するため、生命維持のためには重要性の低い末梢の血管が収縮します。

四肢末梢は冷たくなり、尿量が極端に減少して出なくなります。

重症の場合は大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入します。

IABPの挿入は非常に重篤な状態であり、離床とは無縁の状態です。

 

低心拍出量症候群

心拍出量は、血圧を規定する因子の1つで、1分間に心臓から全身に駆出される血液量を示します。

心拍出量(CO)=一回拍出量(SV)×心拍数(HR)の式で表されます。

左室機能が低下すると心拍出量は低下します。

それに伴い、血圧低下が起こり、各臓器への血流が減少した状態を「低心拍出量症候群」と呼びます。

心拍出量低下による臨床所見は、

血圧低下、不穏、脈圧減少、肝機能障害、尿量減少、末梢循環障害、中枢体温上昇、末梢温度の較差など

心拍出量は、①前負荷、②後負荷、③心筋収縮性、④心拍数の影響を受けます。

低心拍出量症候群に陥っているときには、臨床を見合わせます。


循環血液量異常

循環血液量異常は、循環血液量が低下した場合と、増加した場合に分けられます。

・循環血液量が低下した場合
出血量増加、尿量増加、浮腫、体腔内への体液の滲出、末梢血管の拡張が認められます。

各種モニターでは、SvO2の低下、心拍出量低下、血圧低下、頻脈となり、末梢血管抵抗の増大により動脈圧波形は狭く尖った形になります。

循環血液量が減少している場合は輸液を行い、血圧上昇・頻脈が改善でき次第、離床が可能になります。

・循環血液量増加の場合

血管抵抗が減少し血圧が若干下がる、心拍数減少、モニター上で動脈圧波形の幅が広くみえる、などの所見が現れます。


循環器領域における問診・視診・触診

問診

不穏・せん妄状態について、コミュニケーション可能か、質問に対して適切に回答できているかなど。

訴えが多い、落ち着きがない、何回も同じ事を言うなどの「せん妄状態」の根底には、心拍出量低下に基づく脳血流の不足も考えられます。
 

視診

心拍出量低下を示唆する各臓器への血流障害は、さまざまな箇所に出てきます。

・左心不全
唇、顔面チアノーゼ、呼吸苦、痰(血痰泡沫、水溶性、黄色粘性等の着色)

・右心不全
浮腫、頸静脈怒張

・その他
頚部周囲の筋緊張や胸郭の動き(胸部、腹部)
心臓外科領域では創部周囲(正中創、静脈グラフト部)
 

触診

「四肢を触ったとき、どんな感じがするか」が大切です。

状態の把握にはForrester分類の応用編を利用します。

末梢が冷たい時は、血圧を中枢部で維持しようとしている状態です。

代謝性アシドーシスに陥っている場合もあるので、離床は行わず、生命維持に努めます。

さいごに

臨床ではさまざまな症状が絡み合って出てきます。

ある程度、「こうなれば、こうなる」と予測を立てられることが必要です。

そのためにも、循環機能を各モニターから収集し、フィジカルアセスメントから得た情報と併せて解釈し、的確に現状を把握できるようにしましょう。

参考にした書籍はこちらです↓
実践!早期離床完全マニュアル: 新しい呼吸ケアの考え方 (Early Ambulation Mook 1)

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

今回の記事は以上になります。

面白かった、共感できたなどありましたら、ぜひスキボタン、 フォローボタンをポチっとお願いいたします!

X(旧Twitter)で情報発信しています。理学療法士HASEに興味を持っていただけた方、応援していただける方はフォロー、いいねをお願いいたします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?