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安静臥床による循環器への影響


安静臥床(寝たきり)は身体に悪影響を及ぼします。

安静臥床が身体に悪いことはなんとなく想像できますが、

実際に身体の中ではどのような生理的変化が起きているのでしょうか?

今回は、安静臥床による循環器系への影響をまとめました。

それでは、本日も学習していきましょう!


起立耐性低下

長期間の臥床は起立性低血圧を引き起こします。

実は、患者さんを寝かせた時から起立性低血圧が始まっているのです。

座位や立位から臥位になると、重力の影響から解放されて、下半身にあった血液が上半身へと移動します。

下半身から上半身に移動する体液量は2リットルともいわれています。

上半身に体液が多くなると、中心静脈や頸動脈・大動脈弓にある圧受容器が働き、生体は「体液が過剰」と判断します。

その結果、交感神経が抑制され利尿が促進されます。

実際は、体液が過剰ではないのに利尿が促進されます。

そのため、全体のバランスは、負の方向に傾いてしまいます。

長期間臥床している患者さんは、補液を行われない限り、常に軽い脱水状態にあるのです。

失神防止のメカニズム

軽度の脱水状態で体を起こすと、体液バランスが負の状態にもかかわらず、体液は下半身に急速に移動します。

この移動する体液量は、利尿が進んだ分を差し引いても、約700mLといわれています。

このままでは、血圧が急激に低下して失神してしまいます。

急激な血圧低下を防ぐ反応は以下の通りです。

心肺受容器反射

血液が下半身に移動し、上半身の血液量が減少すると、静脈還流量が減少します。

静脈還流量が減少すると、心房や肺血管に存在する圧受容器が反応し、交感神経を亢進させます。

動脈圧受容器反射

血圧低下によって動脈圧が低下すると、頸動脈洞や大動脈弓部に存在する受容器が働きます。

その結果、迷走神経を抑制した交感神経を亢進させ、血圧低下を防ぎます。

末梢血管・脳化学受容器反射

動脈圧受容器反射では血圧低下が止まらない場合、末梢血管や脳に存在する化学受容器が働いて、交感神経活動を亢進させ血圧低下を防ぎます。

Venoarterial reflex

皮膚や骨格筋における静脈の伸張刺激が同部位の動脈収縮を引き起こし血圧低下を防ぎます。

循環器パラメータの変化

循環血液量の減少は、起立耐性の低下だけでなく、他の循環器系パラメータにも影響を与えます。

心拍数・血圧 

初期は、上半身の血液が多いため血圧は上昇し、心拍数は低下します。

次第に利尿が進むと、循環血液量の減少とともに血液が低下し、心拍数は上昇します。

血圧・心拍数は他のパラメータに比べ、安静臥床の影響を受けにくいとの報告もあります。

個体差を考慮する必要があります。

中心静脈圧

利尿が進むまでの初期は、利尿促進ととも低下します。

一回拍出量

初期には「スターリングの法則」に基づき、流入する血液量の増大に伴って増加します。

利尿の促進とともに流入血液量は減少するため、一回拍出量も減少します。

総体液量

臥位なっても体に含まれる体液量は変わりませんが、利尿の促進とともに総体液量は減少します。

全身持久力の変化

全身持久力は最大酸素摂取量の変化で評価できます。

3週間の安静臥床で17%の最大酸素摂取量が減少したという報告があります。

安静臥床により全身持久力は低下します。

まとめ

・安静臥床は脱水状態を引き起こす。
・総体液量が減少したままの離床は急激な血圧低下を起こす。
・血圧低下を防ぐメカニズム
 ①心肺圧受容器反射
 ②動脈圧受容器反射
 ③末梢血管・脳化学受容器反射
 ④Venoarterial reflex
・血圧低下を防ぐことができないと失神する。
・血圧循環量の低下は循環器パラメータに影響する。


今回の記事で参考にした書籍はこちらです↓
実践!早期離床完全マニュアル: 新しい呼吸ケアの考え方 (Early Ambulation Mook 1)

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今回の記事は以上になります。

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