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大人になりたくない子どもたちの話

「大人になるのやだなー。」
っていう子がいます。

僕は、自分のこと指さしながら、
「おーい、目の前に大人いるぞー
なりたくないとか言わなーい。」
って必死に笑いに変えます。

「うん、なりたくないー」と返されます。

お笑い的には満点の返しだと思いますけどね。

そこそこ凹みます。はい。

だって、
子どもが大人になりたがらない社会って、
なんか寂しいじゃん。ね。


だから僕は、
子どもたちの前に立つ数少ない大人の1人として、
「大人になるのって楽しいよ。」を
伝えたいのです。
伝えているつもりです。


そのために、

仕事を全力で楽しみます。
休日だって、もちろん楽しみまくります。

常に楽しいオーラを出している、つもりです。

その反動か、
無表情で遠くを見つめながら
ソフト麺を食べている顔が怖すぎると子どもたちに指摘されます。

まぁ人間なのでね、時には疲れます。
無表情でソフト麺も食べますよ、そりゃ。




担任をしているときは、よく

「夢、もとうぜ」って言ってます。

鬱陶しいと思ってる子もいると思うけど。



だって、

なりたい職業ががあれば、
将来の夢があれば、
未来のイメージが明るければ、
大人になりたくなるでしょ?

という、単純な思考回路です。

僕の学級経営に「夢」というキーワードが出てきたきっかけは、
先生になった年の卒業式。
の、一言スピーチ。

卒業式って、一人一人が夢とか、目標とか、感謝とかいうやつあるでしょ。アレです。

その年の、卒業式で、
多くの子が「ゲームクリエイター」になりたいって言ってたんです。
体感的には10人中8人くらいの男子が。

面白いゲームをつくります!
楽しいゲームをつくります!

いや、いいじゃないですか。
ゲームクリエイター。
素敵な夢。
日本が世界に誇る仕事。

でもなんか、ちょっとだけ違和感があって。
その時はうまく言葉にできなくって。

わけもわからず、
僕が担任した時には「こんなにたくさんのゲームクリエイターを産み出さないぞ!」
とかいう本当にわけのわからない思想になってました。若いって怖いね。

初めて6年生の担任をした4月に聞いてみたんです。

「1年後の卒業式で、1人ずつ夢をいう機会があるんだけど、
みんなは夢ある?」って。

ほとんどの子が
「うーん」と。

なんでだろう?
自分が子どものときって、

ワールドカップに出る!
とか

アイドルになる!
とか

なんでもかんでもとりあえず言ってた気がして。

だって、夢ですよ。
何言ったっていいじゃない。
できるだけ、大きいやつ。ドカーンと、さ。
夢ってワクワクするじゃない。


でもやっぱり言いたがらない。

僕の中の理想として、
クラスの子がいろんな夢を語って、
それいいね、って、
お互い応援しあって。
そんなクラスがいいなってのがあるんです。


はて、どうしよう。

そこで当時の僕が、まずやったこと。

とりあえず、先陣を切って、
僕自身が夢を語ろう。
できるだけ大きい夢、ドカーンと。
なにがいいかな。
うーん。




よし、

「世界中で活躍できるせんせーになる!」

半分、本気。半分、思いつき。

まぁ子どもの反応は、
「ふーん、頑張ってね」って感じてしたけど。
そりゃそうだ。

効果は微妙。
そりゃそうだ。

でも、口に出したらなんか燃え上がって来ちゃって。
突然、子どもの前で英語の勉強とかしてみたりして。
そしたら「お、せんせー本気じゃん」って。


そんなことがきっかけで、
何年かたち、
なぜか英語の免許も取得し、
なぜか専科をやらせてもらえることになりました。

とりあえず言ってみる、やってみるって大事。
仕事の幅が広がりました。
すみません、これは、余談。



そして次にやったこと。
子どもたちってそもそも両親の仕事と、先生と、スポーツ選手と、医者と警察と、それこそゲームクリエイターくらしいか知らないんじゃない?
という仮説から、

世の中にはたくさんの職業があることを知ろうのコーナー!
を始めることにしました。


結果的にはこれが効果あり。
今でも続けていることの1つです。

当時の僕は、特にアイデアもないので、
とりあえずブックオフに走る。走る。
両手に袋を抱えて学校に戻る。戻る。


買った本はこれ。

あとこれ。


これらを数冊ずつ教室に置く。
わざとらしく、これでもかと。
目立つところに。

だってポケットマネーなんだもの。

ちなみに、日本の給料職業図鑑の方には、
バッチリ小学校教員の給与も載ってますので
大体いくらもらってるかが子供にバレます。
まぁ、隠す必要もないけど。安いし。悲しいかな。

子どもに混ざって、
「へェ〜そんな仕事あるんだ。面白そうだな。」
「せんせーもやってみたいなァ」

なんて言ってみちゃったりもして。



そしたら、なんか僕も楽しくなってきちゃったりして。
実際にいろんな職業の方と触れ合わせたい!と。

たとえば、

歴史の授業への食いつきが良かったので
思いつきで市役所に電話したら
考古学者の方が来てくれたり、

いつも綺麗にされている
近くの公園の管理人さんに、話を聞きに行ったり、


近くで給食の野菜を育ててくださっている農家さんに野菜の育て方聞いてみたり、
そして実際に育ててみたり。

学校のお祭りで「おばけ屋敷やりたい!」って
なったときには、お化け屋敷プロデューサーについて調べたり。
(本当は直接話聞きたかったけど、断念)

これらは準備も必要なので今ではあまりできていないけど、
やっぱり本物は、違う。
響き方が、違う。


というか、普段、担任の話なんか聞きゃしないやんちゃ男子がゲスト講師が来るとめっちゃやる気のある良い子になる現象なんなん。

ごめんなさいなんでもないです。
戻ります。

大事にしたのは、

話聞かせてもらって勉強になったね。
ありがたいね。

ってことだけじゃなくて、

その人たちが数多ある仕事からその仕事を選んだということ。

だから、その仕事を選んだきっかけなどの話もできるときにはしてもらいました。


僕だってそう。先生という仕事を選んだ1人。



実際に会いにいくのはなかなか大変なので、
様々な教科の学習をしていく中でも職業にちょっとだけフォーカスします。
事前の準備はいりません。
意識の片隅に置いといて、気づいたら子どもに言うだけです。
興味を持ったら調べさせてみたり。

あの、教室の照度検査にくる方とかもいますよね。
不思議な武器みたいな道具持って。
ああいう方がいらっしゃる時にも話題にできますよね。

身の回りにはいろんな職業があって、
そういう方たちに助けられてることも実感できます。


実は、出会ったり授業中に出てきたりした職業を教室内に掲示していこう!
って思ったこともあったんですけど、やめました。
僕みたいなガサツせんせーには手間すぎました。
これ読んでくださってるスーパーせんせーはぜひやってみてください。


とにかく、

周りにはいろんな職業が溢れてるってこと。

そして、

みんなは頑張ればその中からほぼ自由に選ぶことができるってこと。

それが僕が伝えたかったこと。
今も子どもたちに伝えていること。


そんなことを続けていくうちに、

ちょっとずつ、ちょとずつ
子どもの意識が「夢」に向かい始める感覚がありました。

「いつも行く病院で薬をくれる薬剤師さんになりたい」って
話してくれる子もいました。
その子、算数苦手だったけど、すごく頑張るようになりました。
薬剤師さんになるには、算数が大事だ。とお母さんに言われたって。

やっぱりさ、教員がいくら授業頑張るより、
そうやって子どもが夢を持つ方が何倍も頑張れるんだよなァ。
そう感じた瞬間でもありました。

夢を持つと子どもは変わります。これは絶対にそう。

だから、担任をする時には、

「子どもたちが夢をもつお手伝い」

をするのも僕の大事な仕事です。



テレビをつければ暗いニュースばかり。

日本の未来に、自分の将来に、希望を持ちづらくなってるのは仕方ないよなぁと思ったりもします。

でも、せめて自分が担任したクラスの子たちには、
なんかちっちゃくてもいいから夢を見つけてほしい。
そして、大人になるってなんか楽しそうだなって思ってほしい。

世界には死ぬほどいろんな職業があることを知って、
そこからなんとなくでもやりたいものを見つけて、
自分らしく人生を進んでいってほしいのです。


だから僕も、

たくさんの仕事の中から教師を選んだ大人の1人として、
これからも笑顔で子どもたちの前に立ちたいと思っています。




余談。

実はちょっと前に、その時の卒業生からハガキが届いて。
せんせーの夢、どうですか?って。
まだまだ。でも前よりはちょっと夢に近づけたかな。
って返事を書きながら、当時のこと思い出したので書いてみました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

では、また。






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