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デジタル時代の子育てと読解力

こんにちは。はるママです。

初めての記事は、子育て世代の皆さんが日々悩み葛藤されているであろう、「デジタル機器との付き合い方」についてです。

スマホ育児は良くないとか、テレビのみせすぎは良くないとか、よく聞くお話です。

でも、実際何がどう良くないのか。
どの程度なら触れさせてもいいのか。

こういった疑問に対して、「読解力」という視点から科学的に説明してくれている本に出会いました。

『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』

という本です。

「読む脳」科学の世界的リーダーであるメアリアン・ウルフ氏の著書です。

今回の記事では、この本の内容をご紹介しながら、デジタル時代の子育てについて考えていきたいと思います。

少しでも、読んでくださった方の参考になりましたら幸いです。

「深く読む力」

最近、若者の読解力低下についての話題が多く見られますが、この本では「読解力」の先にある、「深く読む力」とデジタル機器との関係について述べられています。

「深く読む力」というのは、豊かな人生を送るために不可欠な力であり、社会全体として私達皆が持っているべき力です。

しかし、この「深く読む力」を、若者のみならず読むことに長けた大人でさえ、失いつつあるというのです。

では「深く読む力」とは具体的にどんな力なのか。

この本では、文章を読んで正確に意味をとるのはもちろんのこと、そこから共感、類推、批判的分析、そして洞察する力のことであると定義されています。

つまり、文章を読んで他人の視点に立ち、その気持ちになる力、
文章から読み取った内容と自分の背景知識とをかけ合わせて類推・分析し、著者の解釈や結論を評価する力、
そして、場合によっては自分の意見や信念の誤りに気づき、新しい思考を生み出す力なのです。

そして、この「深く読む力」は使わなければダメになります。
これは、子どもたちだけでなく、私達自身の問題でもあるのです。

この本で筆者は、デジタル時代において、この「深く読む力」がどう影響を受けているのか、また幼い頃からデジタル機器に触れながら育ってゆく子どもたちの「深く読む力」を育む方法について、科学的な見地から述べています。


デジタル機器に触れさせるべきではない?

この本で筆者は、子どものデジタル媒体の使用について、完全に否定しているわけではありません。

紙の本を読む時間とデジタル機器に触れる時間の双方をバランス良くとることで、
紙の媒体とデジタル媒体の両方を使いこなす

「バイリテラシー脳」

を獲得できるのではないか、と述べています。

そして、そのために親ができるサポートについて、この本の中では提案されています。

それを理解するために、まずはデジタル機器と読む脳の関係についてご紹介します。


デジタル文化は「読む脳」をどう変えるか①
- 注意散漫 -

「深く読む」ために注意力(集中力)が必要であることは、なんとなくご理解いただけるかと思います。
ところが、その注意力がデジタル機器により脅かされているのです。

”私達はほぼ一日中、さまざまなデジタル機器に注意を向けています。
タイム社が行った20代のメディア習慣の研究によると、
現代の若年成人は平均で1時間に27回、メディアソースを切り替えています。
平均で1日に150回から190回、携帯をチェックします。”
”デジタル機器のアラームで目覚めた瞬間から、1日中、15分以下の感覚で注意を切り替えて、いつもほかの機器をチェックし、眠る前の最後の瞬間まで、私達は注意散漫の世界に生きているのです。”

上記はこの本からの引用です。
私達の多くが、日々このような状況にあると思います。

いざ紙の本を読み始めても、以前のようには集中力が持続せず、ちらちら携帯をチェックしてしまったり、以前のように内容がすっと頭に入ってこない。。
このような経験をしたことがある方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

”私達はあまりに多くを見聞きし、それに慣れ、さらに多くを求めるので、見たり聞いたりするときの注意の質はいつも同じではありません。”
”デジタル刺激がひっきりなしに続くほど、幼い子どもでさえ、機器を取り上げられたときに退屈と倦怠感を訴えます。
さらに、機器を使えば使うほど、娯楽や情報や気晴らしのデジタルソースに長時間アクセスせずにはいられなくなるのです。”

紙の本で深く読む力をすでに身につけているはずの大人でさえ、
デジタル機器にふれる時間が長いほど、強くその影響を受けます。

そんなデジタル機器を、深く読む力をまだ身につけていない子どもに触れさせるとどうなるのか、想像に難くないと思います。

SNS等の短い文章にばかり慣れて、注意力も身についていないと、長い文章を読み込み、理解し、熟考することができません。
実際に、最近の学生は長く難解な文章を読む忍耐力がなくなってしまっているそうです。

デジタル文化は「読む脳」をどう変えるか②
- 斜め読み、拾い読み -

意外に思われるかもしれませんが、最近の調査では、デジタル時代を生きる私達の「読む量」はかつてないほどに増えているそうです。

平均して一日に10万語を読んでいるという調査結果もあるといいます。

膨大な量を読んでいる私達は、無意識のうちに斜め読みや拾い読みをしています。
文章の中にある、目につく単語を拾って内容を理解した気になっているのです。


同じ文章を印刷した紙で読むのとデジタル画面で読むのとでは、理解度や記憶に差が出るという研究結果もあります。
紙で読んだグループに比較し、デジタル画面で読んだグループは、その内容の順序や細部を覚えていない人の割合が高いのだそうです。

脳には可塑性があります。

すでに「深く読む力」を身につけている大人でさえ、
デジタル機器に触れている時間が長ければ長いほど、斜め読みすることに脳が慣れていき、
紙の本で読む際にも、無意識のうちに斜め読みするようになってしまうのです。

子どもへの影響は、言うまでもないですね。


デジタル文化は「読む脳」をどう変えるか③
- 「情報」は「知識」ではない -


私達は、毎日毎日膨大な量の情報を浴び、知っておかなければいけない気がして、必死になってあらゆる情報を拾いにいきます。

私達がこうして拾っている「情報」とは、「知識」には相当しません。

あまりに多くの情報に触れると、入ってきた情報を反芻し、類推し、記憶するのに必要な時間をかけなくなるからです。

”情報を処理するための時間が減るということは、入ってくる情報を背景知識に結びつけるための時間が減り、したがって、分析や類推、洞察など深い読みのプロセスが展開される可能性が低くなるということです。”

そして、大量の情報を処理する私達の脳は下記のようになっているそうです。

”さまざまな機器が送り出す何十ギガバイトもの情報による認知的負荷を、私たちはどうするのでしょう?まず、簡略化します。次に、できる限りすばやく処理します。正確には、短時間で一気にたくさん読みます。そして、優先順位を決めます。知る必要性と、時間を節約する必要性とを、こっそり両てんびんにかけるのです。私たちは自分で考えたいと思わなくなった情報を、最も早く、最も簡単に、最も消化しやすい形で抽出してくれる情報コンセントから、外部調達することがあります。”

そして、自身の分析力を使わなくなり、複雑な考えをしなくなります。
複雑な考えをしなくなると、”縮小していく既知の範囲に当てはまるものに頼って”しまうのです。


外部の知識源への依存

また、デジタル機器を使えば外部の知識源に容易にアクセスできるため、自分の知識として知っておく必要性も感じにくくなります。

文章を読むときに、背景知識がどれだけ重要か、想像に難くないと思います。
背景知識があって初めて、真に文章の意味や意図を理解することができ、分析し、批判的に考えることができます。

外部の知識源に頼るようになると、この作業ができなくなるため、情報に影響されやすくなり、誤った情報を信じてしまうことにつながるのです。

これは、フェイクニュースが拡散されやすかったり、誤った情報をもとに誰かを叩いたりする人が多い一因ではないかと思います。

子どもたちには、正しい情報を見極め、自分の頭で考える力を身につけてほしいと思います。

デジタル時代の子育て
- バイリテラシー脳を育てる -

「深く読む力を身につける」という点において、子どもたちがデジタル機器に触れることのデメリットがいかに大きなものか、前項まででご説明しました。

一方で、現代に生きる私達にとって、デジタル機器はなくてはならない存在であり、非常に便利なツールです。

世界は目まぐるしく変化しており、現在の未就学児の65%が将来就く仕事は、まだ誰の頭にも浮かんでいないといいます。
おそらく子どもたちは、相当高度な能力を必要とされるでしょう。

それがどんな能力なのか、想像すらできませんが、脳の読字回路(「深く読む力」)の未来のためには、「読み書き能力ベースの回路」と「デジタルベースの回路」の両方をうまく統合する努力が必要なのです。

筆者は、これから脳の読字回路を構築していく子どもたちは、紙の本とデジタル機器をうまく組み合わせることにより、私達大人とは違った回路を構築していけるのではないか、

つまり、文章が紙面にあろうと画面にあろうと、「深く読む力」を身につけることができるのではないか、と述べています。

これが「バイリテラシー脳」です。

バイリテラシー脳を育てるために、筆者が各年齢ごとに推奨しているデジタル機器との付き合い方についてご紹介します。


0歳から2歳まで

子どもが生まれてから最初の2年間については、特に「親による紙の本での読み聞かせ」の重要性について強調されています。

子どもが本を聞いたり、見たり、触ったり、嗅いだりするたびに、脳のあらゆる回路が刺激されているからです。

”このような初期の経験---何よりもまず、人との交流とそれが触覚および感情とつながっていること、第二に、視線共有と優しい指さしによる注意共有の発達、第三に、魔法のように毎日同じページの同じ場所に再登場する、新しい言葉と新しい概念に日々触れること---すべてが読む生活の理想的な始まりになります。”

しかし最近は、デジタル機器で読み聞かせができたりします。

親が読み聞かせをしなくても、そういった方法で同様の効果が得られるのではないか。

そんな疑問が浮かぶと思いますが、やはり紙の本が良いのだそうです。

というのも、小さい頃の読み聞かせにおいて大切なのは、「物性」と「回帰性」だからだそうです。

つまり、本の物理的で実質的な「そこにある状態」を経験することが大切なのです。

繰り返し前に戻って認知し、言語に触れることで、ページ上のイメージと概念に何度でも必要なだけ接することができる。
それが子どもの背景知識の形成において大変重要なことなのです。

子どもは本を見て、聞いて、口に入れて、触ることで、多感覚と言語を最高の形でつなげることができるのです。


また、親の読み聞かせ量によって2歳ごろの言語の発達に差があるとの調査結果もあります。
言語入力のほとんどを人間から受け取る子どもの方が、言語能力の指数が高いのです。

したがって、2歳までは、デジタル機器との接触は限定的にするべきだと筆者は主張しています。
ただし、禁止することもご褒美として使うことも控えたほうがよいそうです。

禁止すると、そのことで頭がいっぱいになり、欲望の対象となってしまうからです。
デジタル機器がけっしてお気に入りにならないように、バランスよくみせることが大切なのです。

2歳から5歳まで

2歳から5歳までの子どもにも、空き時間をすべてデジタル機器に触れさせるようなことは避け、少しずつ、意図的に導入することが大切です。

最近は教育系のアプリもたくさんありますが、「教育アプリ」を謳っているものの多くは、専門家の監修がなく、真に「教育的」ではないのだとか。

アプリを使う際には、子どもと一緒に遊んでみて、使う価値のあるものかどうか親が見極めるべきであり、
”子どもにこの媒体を、庭や公園と同じように、ただし同じ時間はかけずに、探検させるべき”なのだそうです。

具体的な時間としては、2,3歳までは1日数分から30分程度まで、
もう少し年長の子どもでも、2時間以内にとどめるべきだと述べられています。

小さな子どもたちにとって何より大切なのは、遊びとスキンシップの時間や、お話と物理的な本の時間を優先することであり、その時間を削ってしまうほどの長時間は、デジタル機器に触れさせるべきではないということです。

5歳から10歳まで

バイリテラシー脳を育てるにあたって、5歳から10歳までの5年間が真の難題なのだそうです。

印刷というゆっくりとした媒体で考えたり読んだりすることを学ぶと同時に、すばやく動く画面上で異なる考え方をすることも覚える必要があるからです。

デジタル機器はコーディングとプログラミングの媒体として導入します。
コーディングを学ぶ過程で、子どもたちは順序立てて考え、因果関係を探り、設計と問題解決のスキルを伸ばすことができます。
こういったデジタルベースの知識は、印刷媒体で身につけた「深く読む力」を底上げしてくれるのです。

このように上手くいけば、10歳から12歳くらいになる頃までに、「バイリテラシー脳」を手に入れることができ、さまざまな課題のために、難なく両者を切り替えることができるようになると筆者は主張しています。

おわりに

これから息子が大きくなるにつれて、デジタル媒体のメリット・デメリットを理解した上で導入するのと、何も考えずに導入するのとでは、大きな差がうまれてくるような気がしました。

読字脳やデジタル媒体の影響等についてはまだまだ研究の余地があるようなので、今後の研究結果や世の中の変化などにアンテナを張りながら、息子にデジタル機器との付き合い方を伝えていきたいと思います。

かなり長くなってしまいましたが、なんとなく内容は伝わりましたでしょうか。

大変興味深い内容でしたので、たくさんの方に知っていただけたらと思いnoteにまとめさせていただきました。

ご紹介したのはほんの一部ですので、ご興味のある方は是非本をお読みいただければと思います。
(翻訳本なので、少々、、いや結構読みにくさはありますが。)

皆様のご意見やご感想もいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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