息もつかせない探偵に次ぐ探偵【帝都探偵対戦】(芦辺拓)

探偵はお好きですか?

好きではなくとも「名探偵コナン」は有名だし、世界的に見れば「シャーロック・ホームズ」「名探偵ポワロ」なんて言う偉大な名探偵たちがフィクションの世界で大活躍している。

現実の世界で「探偵」と呼ばれる存在が殺人事件や誘拐事件などに介入することはないとしても、フィクションの世界では役立たずな警察よりも探偵の方が事件の解決率は良いかもしれない。

本書はそんな名探偵たちが、50名も入り乱れるまさに「探偵大戦」である。

では、あらすじから。

三河町半七、銭形平次らが江戸で起こった奇怪な事件を追う「黎明期」。法水麟太郎、帆村荘六らがナチスが狙う宝物の謎を解く「戦前期」。そして、神津恭介、小林少年らが「あべこべ死体」の正体を暴く「戦後期」。総勢50名(相棒、ワトスン役を含めると60数名!)たちが、探偵という存在そのものの意味を問いながら事件を解き明かす!

本書の特徴としては、カメラのシャッターのように場面と人が入れ替わる。

ガシャン!と次の探偵にバトンが渡され、バトンを渡された探偵には新たな謎が降りかかる。

謎自体も異様であるけれど、何よりも50名もの探偵の特徴を(きっと)壊すことなく、そして、きちんと(きっと)キャラ立ちをして書かれていることが特に読みどころかもしれない(なぜ「きっと」と付けているかというと、本書を読んだ私自身が50名の探偵のうち6名しか知らなかったからである)。

各々が持ち寄った謎を、最後に大団円のように華やかに解き明かし、納得させてくれるところまでの演出がとても憎く、個別の謎だけでは恐らく解決できないようになっているので、探偵同士の協力が読めるのもかなり楽しい。

交わることのなかった探偵同士が言葉を交わしているのを読むと、作者さえ生きていればこんな風なアンソロジーも有りだったのかもしれないな、と夢想してしまう。

もちろん、芦辺さんのオリジナルキャラクター・森江春策もちょこっとだけど、登場します。

森江春策が登場するとなんだか安心するし、「あ、これ芦辺拓さんの本だったじゃん!」と思い出し、「ふふふ」と笑みがこぼれてしまった。

最後の最後に森江春策を登場させるなんて、それも往年の探偵とのコラボなんて、演出が本当に最後の最後まで憎い。

「探偵」という存在がお好きな方には特におすすめ。

はるう


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