スタートアップ情シスの立ち上げ
本日、ジョーシス株式会社様のセミナーでスタートアップ情シスの立ち上げについてお話する登壇機会を頂きました。折角なので、Noteでも色々残しておこうと思います。
情シス立ち上げの全体感や王道は既に神Noteがあるので、この記事では
スタートアップ情シスの立ち上げや1人目情シスにフォーカスしてお伝え出来ればと思います。
①スタートアップの定義
「そもそもスタートアップの定義って?」や「ベンチャーと何が違うの?」というお話があるので、先にこの記事内の定義を記しておきます。
スタートアップ:
「大体10人〜200人程度の急成長しているまたは急成長させようとしている企業」です。
②課題・大変だったこと
入社・立ち上げ時に特に課題・大変だったことは2点ありました。
情報と業務の点在化
ないない現象
情報と業務の点在化
情シス関連の業務はエンジニア、総務の方など色んな方が担ってくれている関係で社内に散らばっています。SaaS管理は総務のAさん、ネットワークはエンジニアのBさん、特定のITツールは事業部のCさんなど。
付随して、情報もかなり点在化しています。組織図はあるが、従業員マスタは別の名簿で管理していて、部門台帳はまた別にも存在していて、資産台帳とICカード台帳は別に存在していて、、、などなど。
ないない現象
加えて、他社様でも同様だと思うのですが「ないない現象」にぶつかりました。
XXX台帳が存在しない、手順書やドキュメントがない、この業務をどなたが担当してくださっているか分からない、、、などなどです。
③対策・工夫したこと
上記のような課題に対して、対策・工夫して特に効果的だったのは以下です。1人目情シスとして入社し、情シスを立ち上げるという汎用的な観点でも良かったと思います。
セルフオンボーディング
超可視化
セルフオンボーディング
ここでいうセルフオンボーディングとは「主体的なオンボーディング」を指します。オンボーディングというと人事やチームメンバーから行う受動的なものをイメージしますが、セルフオンボーディングは自ら主体的に行うイメージです。
※正式な定義は少し違うのでご注意を
点在化を解消するための「情報収集と集約」と、情シスは必然的に部署横断系の仕事が多くなるので「関係値作り」が目的でした。具体的には以下です。
雑談
これが正直1番重要で、雑談をする中で2つのインプットが実行出来ます。
1つ目のインプットは相手視点のインプットです。これは情シスが入社したこと、自分が情シスであること、情シスっぽい仕事は集約したり聞けるようになったことをインプット(周知)させるものです。
2つ目のインプットは自分視点のインプットです。雑談をする中で「この業務は◯◯部署」「この人はこういう仕事の進め方やコミュニケーションが好み」「情シスに何をして欲しいのか、何を期待しているのか」などをインプット(情報収集)するものです。
ニコニコする
これは情シスに集約するという大事な前提をクリアするために話かけ辛い、相談し辛いという事象を避けるためです。
機嫌が悪い、疲れているなどのネガティブな素振りも可能な限り控えていました。
チャットツールで積極的になる
これは個人timesチャンネル(社内Twitterのようなもの)を作成する、適切な頻度でスレッド等で発言する、スタンプを押す、情シスっぽい仕事の話をしてたら関わってしまうなどです。用法・用量を守るものが多いですが、非同期コミュニケーション(SlackやTeams等)全盛期の現代、ここは押さえるべきです。
先人への敬意
繰り返しになりますが、情シスの仕事は色んな方が兼務という形で担ってくれています。エンジニア、総務、人事などなど。自身のキャリアの方向性と合っていなくても、会社や周囲のことを考えて、主務の合間にやってくださっていることが多いです。また、専門の領域ではないので、クオリティも高くないかもしれません。
そういった状況でネガティブな立ち居振る舞いをすると、周囲の信頼を失い、一気に仕事がやり辛くなるリスクがあります。また、人としても大変失礼なので、仮に心の中で思ってしまったとしても絶対に表に出さないようにしました。
出社
これは個々の働き方や会社の方針もあるので無理をすべき部分ではありませんが、顔が見えてたりすぐに話しかけられる環境は大事です。常にSlackハドルやDiscordなどに入っているケースであれば良いかもしれませんが、全然知らない新入社員に対して「ちょっと通話 or ハドルいいですか?」と言うのは、他の方からすると、どうしても心理的ハードルがあると思います。
雑談にも密接に関わってくるので、何かしらの事情等がない限り推奨です。「どうしても出社が苦手・・・;」という方も、少なくとも最初の一定期間は出社したほうが仕事がしやすくなる可能性が高いと思います。
超可視化
セルフオンボーディングなどを通して集約した情報等を「整理、作成、可視化」することです。リストや台帳等をどんどん作成し可視化していくことが重要で、コスパやROI(投資対効果)も非常に高かったです。
具体例をいくつか挙げると以下です。
数が多いので、既に社内にあるものがあれば積極的に利用しましょう。
組織マスタ
これは従業員や部署部門データなどを指しています。組織マスタは全ての台帳やリストの土台となるものなので、可能な限り早めに整備することをオススメします。
IT資産台帳
これはデジタルな情報資産が入ったハードウェアなどです。PC、スマホ、SSD・HDDなどです。それ以外のものは他部署の方が管理していることがあるので、調整して決めていきましょう。正直、明確に定義したり区分けし始めると面倒なので「電気が通るものは情シス」とかにすると意外と良い感じになるので、個人的にはオススメです。
ITツール台帳
こちらは主にSaaSなどです。買い切りのソフトウェアライセンスなども含めると良い会社もあるかもしれません。ただし、SaaSが30以上にも及ぶ会社が増えてきており、工数もかかり、抜け漏れも発生するリスクがあるため、ジョーシスやマネーフォワード様のAdminaなどのSaaS統合管理サービス等を利用するのがオススメです。
情シスタスク一覧
プロジェクト、スポット、定常作業、Issue(今じゃなくても良いが将来対応すべきもの)などの情シスがやるべきタスク一覧です。
個人の好み(特にタスク管理方法)や社内で既に導入されているツールなどに合わせるのが良いと思います。
あくまでも例ですが、下に自分がGoogle スプレッドシートとJiraで管理しているものを載せておきます。
プロジェクトはJiraのガントチャートで管理しています。
④情シス立ち上げ、1人目情シスのメリット・デメリット
「ひとり情シス」という言葉があります。あくまでも自分の観測範囲の話になりますが、大変なのでネガティブに捉えられることがどうしても多いように見受けられます。
ただ、実際に情シス立ち上げをしてひとり情シスをやった自分の感想は「なんだこの莫大なリターンは・・・」です。
メリット
まず、意思決定や責任を負う立場になるので、必然的に情報収集能力や判断能力が向上します。特に自分が責任をとるしかないので、全ての事柄に対して自分ごと化します。
また、業務範囲が多岐に渡り、かつ自分がやるしかないので強制的に多方面のスキルが伸びます。
そして、意思決定と責任を負うポジションx業務範囲の広さxスタートアップのスピード感が掛け合わさせって異常なスピードで成長します。
実態的なスキルや履歴書に書ける事柄などで例えると、自分の場合は2倍〜3倍になったように感じます。
デメリット
デメリットもキチンとお伝えしておくと、大変に尽きます。リターンが大きい分、ほぼ全ての社内の情シス関連事項を常に自分で考えて実行するのはかなりタフさが求められます。脳に汗をかきながら走る状態です。
どっちが良い悪いという話ではなく「ゆっくりとした成長で構わないから、忙しかったり大変なのは避けたい」という方にはオススメ出来ません。
最後に
スタートアップ情シスの立ち上げと1人目情シスは非常に大変です。ただ、成長やキャリアアップに繋がる可能性は高いと考えており、ゼロトラストアーキテクチャなどを採用したITインフラ環境を自分で作っていく感覚は唯一無二のやりがいと楽しさがあると思います。
あくまでも自分の場合ですが、仕事への夢中度合いと楽しさが倍増しました。以前までは「努力は夢中に勝てないを素で実践出来てる人たちって本当に凄いなー」と思っていましたが、情シス立ち上げと1人目情シスになったことでその状態になり「ああ、あの人達はこういう気持ちだったのか」と納得しました。
本記事がこれから情シス立ち上げや1人目情シスにチャレンジする方に対して、少しでも参考になれば幸いです!🙏
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